第67話 荒れてる

 家に帰った俺は説明書と格闘しつつ、眼鏡の初期設定を終える。試しに眼鏡をかけてみるが、少し鼻がむずむずするくらいでそこまで違和感はなかった。結構丈夫そうだし、プライベートで使うならこっちでもいいかもしれない。


「よし」


 これで使えるようになったので、俺は一旦その眼鏡をケースに入れて、夕飯の準備をする。今日はネギたっぷりの納豆チャーハンである。たまには自炊をしないと健康に悪い……って親に文句を言われるからな。


 換気扇を回しておいしそうな醤油が焦げる臭いを外にまき散らしつつ、フライパンで作ったチャーハンを皿に盛り付けて部屋に持っていく。スプーンを片手に座ると、誰に言う訳でもなく「いただきます」と両手を合わせる。


「んー……」


 食事中のBGMは相変わらずクソゲーRTAだが、ここ最近は愛理とか柴口さんとか、一緒に食べる人が居たのでちょっと寂しかった。


「キューイッ」


 少し考えた後、俺は識別票を操作してモビを召喚する。まあなんだ、寂しさをごまかせたらな、的な意味だ。


「おーよしよし、ちなみにお前って飯とか食べるの?」


 なんかテイムモンスター講習で言ってたような気がするが、よく聞いていなかったので忘れてしまった。


「ほら―飯だぞー」


 とりあえず納豆チャーハンを鼻先にちらつかせてみるが、見向きもしない。どうやら食べ物を食べる必要はないらしい。


 ……いや、むしろ納豆臭くて食べ物だと認識してないとか?


 ちょっとだけそんな事を考えたが、まあ今まで食べさせていなかったし、そのままでも問題ないだろう。


 もぐもぐと食べ進めながら、クソゲーRTAが終わってしまったので次の動画を漁る。しかし、どれも見たことのある物ばかりで少々飽きが着ている物ばかりだった。


 うーん仕方ない。ちょっと気が進まないが、ダンジョンストリーマーのファンコミュニティサーバーに顔を出す事にする。


 まあ顔を出すと言っても、書き込みをするわけではない。いわゆるROMってやつだ。


『モブさんはそんなんじゃないって言ってるだろ! お前ふざけんなよ!』


 開いた瞬間胃がキリキリと痛む書き込みが目に入った。


『落ち着けって、俺はただモブの人気はテイムモンスターとちくわが居る前提だよなって言っただけだよ』

『そうそう、だれもモブ本人はすごくないなんて言ってないって』

「……」


 ど、どうしよう。


 なんか物凄いアレな状況に出くわしてしまった気がする。こういう時は……変にかかわるよりも見なかったことにするのが一番だな!


「キュ?」


 俺が固まっているのを不思議に思ったモビが首をかしげるが、まあどうせこいつには分からないので適当に頭を撫でてお茶を濁す事にした。

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