企画1

@miyahannna2

第?話

 ゲームやアニメでよくあるんだけど、気を失って目覚めたら知らない場所にいたって怖くない?普通、冷静になんていられなくない?

私は耐えられない。

 「・・・・・・ぇ・・」

苦しい。心臓の音が響く。耳鳴りがする。上手く息が、吐けない。暗い。

でも不思議と視界ははっきりとしている。

目の前に鉄の扉がある。開けなきゃ。

手を伸ばして扉に近づきノブを掴むが、回らない。引いても押しても【ガン、ガン】という音が響くだけ。

 「っ・・ぐ・・」

空気がどんどん私の中に入ってくる。口が・・・涎が止まらない。

首を何かに絞められているみたい。取って、誰か、取って。

「  っと・・・ぇ  」



「んーパニックってやつですかね。」

「でしょうね。」

「俺たちのこと見えてたんすかね?」

「さあ?」

「・・・さっきから何してんすか?」

パーカーを着た青年が隣に座っている女性を見る。

「脱出。」

女性は青年を見ずに答える。右手に持った小さいスプーンでひたすら床を掘っていた。

「何年かかると思ってんすか。てゆうか、ここ地下すよ。」

「・・・なんで地下だって分かるの?」

手を止め、訝しげに青年を見た。

「見てわかんないすか?」

「?」

そう言われ周りを見渡す。

石造の窓のない部屋。床には何も置かれていない。あるのは鉄の扉と、その前に倒れている女性だけだ。

「ああ、これじゃ見えないか。」と青年は立ち上がり、倒れている女性の背中を押す。微かに息をしている様だったが青年は気にせず扉の前から退かした。

「ここですよ。開くでしょ。ここ。」

鉄の扉の下に小さな扉があった。青年が指で押すとキィキィと鉄の音を鳴らして揺れている。

「多分、ここから食事を入れんでしょうね。普通、鍵とかすると思うんだけど何故だか開いてるんすよね。で、こっから覗くと。」

「・・・階段。」

青年の隣に来た女性が覗き呟く。

「上に行く階段す。その奥、階段の上にもう一枚、扉があって窓から明かりが見える。だからここは地下なんすよ。」

「よく見えるわね。でも、本当にそうなのかしら?」

「そうすよ、きっと。それに牢屋といえば地下って決まってるんす。」

女性は腕を組み何かを考える素振りをする。

「まあ、いいわ。ここが地下だとして、どうやって出るのか何か案はあるの?」

「いやーそれは、ないっすねー」

「・・・」

ヘラヘラと笑う青年。ちっと舌打ちすると女性は元の場所で再び床を掘り出した。

「えー何すか、その態度ぉ。俺がせっかく教えたのに。」

「あのね、それは言っただけで何も解決はしていないの。もっと役に立つ情報と提案をしてくれないと困るのよ。」

「困るって、俺だってどうしたらいいか・・・あ、そうだ。」

「何?」

青年は倒れている女性の傍に座り込む。

「この人、なんか持ってるかもしれないすよ。」

はあ、と女性はため息をつく。

「そんなはずないでしょ。私たちと同じなら私物なんて取り上げられているでしょうに。」

「わっかんないすよ。意外なキーパーソンとか犯人だったりして。昔の映画に

あったすよねー死体に偽装するってやつ。」

倒れている女性の衣服をめくりあげる青年。

「その映画は知ってるけど。でも混乱してパニック起こしてるようなのが犯人な訳ないでしょう。犯人だったら、ただの馬鹿じゃない。って何やってるの?!」

「え?何か持ってないか見てるんすよ?」

と倒れている女性のズボンの片足を脱がした所で青年は顔を上げた。

「やめなさい!不謹慎よ!」

「だいじょぶですって。気絶してるみたいだし。それにこの子、俺の好みじゃないんで。」

「そうゆう問題じゃないでしょ!」

「じゃあ、どうするんすか?脱出の手掛かりがない以上、この人調べるしかないっしょ?」

「そう、かもしれないけど!」

「平気っすよ。俺たちを助けるって事で見逃してくれるっすよ。」

「・・・で、でも・・」

青年はもう片方を脱がし、手でスボンをくしゃくしゃに丸めるように触っていく。何もないと分かると今度はシャツのボタンを外していく。

「も、もういいじゃない。やめましょう?」

「ぷ。さっきの勢い無くなってんじゃないっすか。びびんなくてもヘーキすよ。お、意外に胸があるな。」

「・・・・っ」

女性は顔を背け壁に向かって座り込む。

そうしている間に青年は上着を脱がし終わると「んー」と唸りながら衣服を振り回していた。

「何もないすね。」

「・・・最低。」

「しょーがないじゃないすか。緊急事態ですって。てゆうか、そんな言うんだったら着せてやってくださいよ。」

「いやよ!アンタがやった事でしょ!アンタがやんなさいよ!」

「うわあ、逆ギレ。もういいっすよ。」

持っていた衣服を裸の女性の上に放り投げると、青年は部屋の隅に寝転がる。

「・・・何してんの?」

「疲れたんで、寝るっす。」

「ちょっと!そんな状況じゃないでしょ!早く何とか此処から出ないと!」

「うっセーな!あんた何もしてないんだから一々、言ってくんじゃねーよ!」

「あ、あたしは、だから、穴を掘って・・・」

「何年かかんだよ!無駄なんだよ、あんたがしてんのは!」

「無駄って・・・で、でも」

「はあー、どうでもいいんで、寝るんで静かにしてくれます?」

「・・・・。」

女性は青年と裸の女性とを見やると首を振り、頭を抱えこむ。

私は悪くない私は悪くない。と小さな声で呟き続けた。

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