第40話 未来

未来


生物はどんなものも未来に向かって生きていくものだ。

未来に向けて子孫を、巣を、居場所を、人を、町を、社会を、文明を、技術を、記憶を残していく。

未来・・・・・・あいつにふさわしすぎる名前だ。アイツは俺達を助けてくれた。救ってくれた。

俺たちにいろんなものを遺してくれた。命やその他にも。未来に繋げてくれたんだ。

俺はそのおかげで・・・・・・

ありがとう、飛月。俺たちを守ってくれて・・・・・・ありがとう。

だけど・・・・・・死んじまうだなんてさ。わかってたよ。わかってたけど辛すぎるよ。

戻ってきてくれよ・・・・・・兄弟



2月5日

今日はいつにもまして寒い日である。

それは果たして冬のせいなのか。

それとも心にぽっかりと開いてしまった穴のせいなのだろうか。

眼前にあるものは眠りについた戦友。二度と再び目を開けることはない兄弟。

飛月未来がこの世を去って二日が経過した。本日は飛月未来の葬式である。様々な事情があるため大っぴらにおこなうことができないため基本的に組織内のみで行われている。

あいつは俺のために、咲ちゃんのためにその命を使い果たした。

たった半年程度の付き合い。だが、飛月にとってはきっと長い時を地獄のような光景と共に過ごしてきたのだろう。俺が思い測るのさえおこがましいほどのことをアイツは乗り越えて俺たちを生かしてくれた。

でも、それでよかったのか飛月?

お前さんはいくらでも俺たちを裏切って自由になれたかもしれないのに。例え俺が死んで抑止力が暴走したとしてもまた戻って、好きなように生きられたはずなのに。

これらを口にしたらきっとみんなに怒られてしまうかもしれない。

わかっている。飛月が俺たちのことを大切にしてくれていたってことぐらい。


だからこそ、重い。


心が、身体が重たくて仕方ない。一緒に遊んで、共に戦地に赴き生きてきたやつがもういないのだ。辛い、辛すぎる・・・・・・

痛かっただろうな・・・・・・翅をもがれ、腕をもがれながら、顎を砕きながら戦って。それでも飛月は戦い抜いて守り抜いたんだよな、本当にすごい奴だよお前さんは・・・・・・

一人ひとり飛月に向けて献花していく。

添えられている花はすべて山茶花(サザンカ)の花。『困難に打ち勝つ』という花言葉の意味を持つ強い花である。

若干時季外れではあるかもしれないが、添えられている山茶花はきれいに咲き誇っている。その言葉はあまりにも飛月に似合い過ぎていて、俺がそのことを提案すると皆が賛同し、探し回ってくれたのだ。

皆が献花を終えて各々の席に戻っていく。とうとう俺の番が来たようだ。

俺は体を静かに椅子から離し、立ち上がる。眠る飛月の方へ向かう一歩一歩がかつてないほど重たいものでちゃんと違和感なく歩けているかどうか心配になってしまった。

花を手に持ち、俺は棺の中を見つめる。


身体全体を覆うように並べられた山茶花。鮮やかな赤と桃色とは対照的で目立つほどに白い死装束。左腕は切り落とされ、原形をとどめていなかったせいで遺体に縫い付けるのが困難であった。そのため左の裾の中には何もなかったが、胴体の上に包帯で巻かれた左腕が被せられていた。形の崩れた右手。そして壊れきった顎。

でも、とてもきれいな表情をしていた。もう何も背負うことなく身軽になった飛月はそんな顔をするのか・・・・・・

始めてあったときから中坊のくせに険しい顔をしているとは思っていたが、ずっと何もかもを抱きかかえていたのだ。人類の存亡も、俺たちの命もすべてひっくるめて・・・・・・

その顔を見て俺は感極まり泣きそうになるが懸命にこらえる。ここで涙を流してしまったら未来へ進めなくなってしまいそうだから。


「私も一緒にいいか、アルト?」

俺と同じように山茶花を手に持ちながら飛月を見つめていたのは、五代であった。

今日の葬式に限り、五代組隊長の任務を蓮沼さんに任せて八咫烏の戦闘員として参加しに来てくれたのだ。


「ああ、もちろんだ」

俺は五代ができる限り真ん中に来れるように左にずれる。五代は俺の隣に立ち棺の中を見つめる。

・・・・・・そして俺たちは、飛月の胸元に花を添えた。


葬式が終わり、俺と五代はかつて飛月と共に過ごした休憩室に来ていた。

かつてこの部屋で三人揃っていろんなことを話してきた。作戦の事、趣味の事、俺が下ネタを言えば飛月がツッコミ、五代が殴りかかってくる。そんな日常がここにはあった。

だがそんな日々は戻ってこない。互いに何も語ることなく、ただ茫然とベンチに腰を掛ける。思い出に浸っている俺であったが、そんな静寂は五代の一言で消えるのだった。


「飛月は・・・・・・私たちを守ってくれたのだな」


「ああ、何回も何回も繰り返される地獄の中でアイツは俺達に未来を残してくれたんだ」


「何回もか・・・・・・一体飛月は何を見てきたのだろうか」


「きっと俺達には見当もつかないような光景を見てきたんだろうな・・・・・・」

『引き寄せの法則』で飛月が何度も俺や咲ちゃんが死ぬのを避けるためにやり直しをしていたのは俺と旦那しか知らない。二人で話し合って多くの人に言わないことにしたのだ。


きっと飛月は自分のことを凄いとか褒めてほしくてやってきたのではなく、俺たちを守るためにただただ必死に命がけで繰り返しの日々を送ってくれたんじゃないかって。

だが五代はなんとなく察したかのように発言をする。俺たちの短い間だが固い結束の中にはどんな真実も必要ない。

そこにあるのは友人に『守られた』という事実のみである。


「なあ、五代。あれから咲ちゃんの調子はどうだ?」

五代の遺体を回収する際に現場で何があったのかを聞かせてもらった。そして俺は驚愕した。今まで飛月が語らなかった心のうちに秘めた恋があったことを。

五代はすでに咲ちゃんに想い人がいることは知っていたらしいがそれが飛月だとは知らなかったようだ。

それゆえに気がかりであった。残された咲ちゃんは、戦いの最中で結ばれ直後に好きな人を失った喪失感はきっと思い測れない。


「咲はあれからずっと部屋に籠ってしまった。優香がよく部屋を訪れようとするが『もう少し待って』の一点張りらしい」


「そうか・・・・・・」

だが、思い返してみれば五代が別隊へ派遣される時に飛月はメンバーの名前を聞いている場面があった。

それはきっと繰り返しの中で園田咲が五代組に所属することを知っていたから。そして確認を取ったのは、所属していないというかすかな希望を抱いていたからではないだろうか。

五代組に政府から選ばれなければ、咲ちゃんは今まで通り中学生活を送り飛月の守る対象から外れることになったから。

自分にかかる負担を減らそうとした?いや、そんなものではない。彼女が平凡で幸福な日常を送れるように飛月は守ったのだ。五代組に所属していなければ戦うことはなく、それに越したことはないからである。


「私は・・・・・・」

五代が天井を仰ぎ、嘆いた声を出しながらつぶやく。


「私はあの場において何もできなかった。想定外のことが起きてただ見ているだけであった・・・・・・愚か者だ、私は・・・・・・!世界を守るどころかまたしても仲間の一人の命さえも散らせてしまった・・・・・・!」

手の平で顔を覆い、五代は声を殺しながら泣く。あの場でそれも目の前で姿だけは人間でも化物でもないやつが急に出てきて暴れていたらそうなっても仕方がない。彼女は何も悪くないのだ。


「五代は・・・・・・」

慰めの言葉を掛けようと思ったがそんなもの、今の状況では何もなくなってしまった砂漠に水を一滴さすぐらい無駄な事だろうと思い、俺は口を閉ざした。

ただ俺は何もせず、何も言わず喪失と悲しみに暮れる五代のそばにいるのだった。

時間が経ち、五代と共に地上へ行き互いの健闘を祈りながら再び別れを口にする。以前まで頼りがいのある五代の背中が今日は一人では倒れてしまいそうなほどに脆く歪に見えてしまった。


・・・・・・俺がもし飛月の後をつけて行っていたら飛月は助かったのだろうか?

いや、きっと腹に風穴があいたままの俺では足を引っ張ってしまっただろう。

じゃあ、俺がもし飛月を行かせていなかったら飛月は助かったのだろうか?

いや、それでは運命は変えられなかった。でもそれで飛月が助かるのなら別に・・・・・・


「あ・・・・・・」

俺、今すごく無粋で最低な事を考えてしまった。人としてすごく最悪で最低な事。

自分の心の中で行った無意味が過ぎる自問自答の中で、自分の人間としての闇を垣間見てしまった俺は自分に少し嫌気がさした。


五代を見送り再び本部へと戻ってくる。皆、葬式の後片付けに追われていてとても忙しそうであった。いつもなら積極的に手伝いに行くところだが、今日はどうしても身体が思うように動かない。

俺は近くの椅子に座り先ほどの五代のように天井をただ意味もなく仰いだ。


・・・・・・本当に最初はいけ好かない野郎だと思っていた。常に人のことを睨んでくるし、すごく他人行儀だったから。

だけど、話していくうちにアイツの人の良さや今までの苦労もわかってきた。ゲームしている最中だってよく親切なプレイをしてくれるような優しい奴だった。

でもいつだったかアイツに友達の話を振ったときに初めて飛月の中の闇を感じ取れた。友人関係とか大人とかきっと外部の環境に影響を受けすぎたのだ。

飛月は昔の俺と同じ。違いといえば俺には繋一さんがいてくれたから今のような人間になることができたことだ。俺もあの人みたいになれるかなって思ってた。

人を助けて、人のために全力で生きていけるような人に。親というよりも憧れの存在に近いあの人の温かさに触れて俺はあんな人間になりたいと思った。

しかし、俺はなれないのかもしれない。事実、俺は何も救えていない。五代が自分に嘆いてた言葉は俺にも言えることなのだ。

俺は仲間の命一つでさえ守ることができなかったのだから。


「ミスター・アルト、少しよろしいですか?」

天井を仰ぎ見る俺の正面から声を掛けられた。その独特の人の呼び方は確認するまでもなかった。


「どうかしましたか、長倉さん」


「これをお渡ししたくてお呼びさせていただきました。お邪魔でしたか?」


「いえ、大丈夫です・・・・・・」

俺は長倉さんから数枚のレジュメを受け取った。そこに書かれていたのは『紫の力の昇華について』というタイトルがつけられていた。


「紫の力の・・・・・・昇華?」


「ええ。私やキャプテン、科学技術班が飛月君の遺体を回収した後、彼の身体の調査を行ったのです。獣の身体を移植された人間が、いや紫の力に影響された人間は一体なぜ身体が変化してしまうのかを。ですが、結果はわかりませんでした。しかし、あることが判明したのです」


「あることって、何ですか?」

俺はレジュメから目を放して長倉さんの目を見つめる。どうしても伝えたい、そんな強い意志がこもっているかのように思える目である。


「人間が、人類が紫の力に打ち勝てるかもしれないという事実です」


「なっ!紫の力に勝てるって、一体・・・・・・?」


「そう結論付けた理由としては2月2日のミスター・アルトと飛月君の戦い。そして彼の遺体です。2日の戦い。ミスター・アルトの話だとすでに強化人間となりアナタに襲い掛かった。その戦闘の最中、彼はわずかながら血を流していたのですよ」


「血・・・・・・血ですか?」


「ええ。それが現場に付着していたのです。そしてその血の色は紫色・・・・・・ミスター・アルトや飛月君、ミス・五代や五代組の皆さんが倒してくれていた化物と同じ体液の色です。ですが3日の戦い、その現場に残されていた血の色は赤色。人間のそれと同じだったのです。間違いがないかどうか検査をしたところ、両方とも飛月君の物で間違いありませんでした」


「それで・・・・・・一体何がわかったのですか?」

今日はダメだな。自分が思っている以上に人の発言が頭の中に入ってこないし全く頭の中で思考が正確にならないようだ。


「彼は証明してくれたんですよ。人は紫の力に勝てると!今まではミスター・アルトが浄化しなければ完全に消すことができなかった紫の力を人間が自力でかき消すことに彼は成功したんですよ!」


「え・・・・・・?じゃあ、飛月は」


「はい。ミスター・アルト。アナタが言っていた通り未来君は人間です。強化人間なんかではなく、獣の身体を移植された被害者でもなく人間として最期まで戦ったんです。そしてそのうえで我々に残していってくれたのです、人類は紫の力に勝てるという証明を!我々に可能性を・・・・・・未来を託してくれたんです!」

可能性・・・・・・そうか今思えば俺の金の力の浄化がなければ今まで紫の力を完全に消すことはできなかった。五代組の化物退治の後であっても浄化は俺が行ってきていた。


「それを、飛月が証明してくれた・・・・・・」


「そうです。紫の力・・・・・・負の感情にのみ込まれても尚、人間に戻れるそれを我々は『昇華』と呼ぶことにしました。まだ詳細な事や方法は不明ですが、そのレジュメが我々八咫烏がアナタに渡せる、彼が生きてきた唯一の証拠です。どうか受け取ってください」


「・・・・・・!」

アイツが生きてきたことの証・・・・・・大人たちから渡されたそれはとても重たく、希望と可能性に満ちたものであった。


「ありがとうございます。読ませて・・・・・・いただきます」

・・・・・・喪失感に溺れていく。

生きた証。きっと俺は心のどこかで飛月の死を否定したいのだろう。

大人たちは前を向いて次へ行こうとしている。だけど俺は踏み込めない。

これ以上先に足を運んでしまうともう俺が俺でなくなってしまいそうで・・・・・・


「ミスター・アルト」

いつも以上に優しい声で長倉さんが俺の名を呼ぶ。


「今日はもう部屋にお帰りになってお休みになられてください。片付けや手続きは我々が行いますので」

本当にこの組織大人たちは、優しすぎる。


「そう・・・・・・させてもらいます。なんだろう、俺、なんか今日すごく不安定で・・・・・・ごめんなさい」


「・・・・・・人間で在る限り、出会いもあれば別れもつきものです。そのような事に一喜一憂するなと言う人もいますが、それでは我慢しすぎてさらに不安定になってしまいます。安心というものは常に必要なものです。自分が気づかないうちに心は傷ついてしまうので。恥ずかしながら、私もキャプテンに何度もそう言われてようやくその意味が最近になってわかってきたんですよ」


心の休息か・・・・・・確かにこの情緒では獣が来たときに対処が全くできそうにない。それで敗北して俺が死んで、人類がティリヤ人の想い通りになってしまったらそれこそ飛月に会う顔がない。


「そうでしたか・・・・・・そういえば旦那は?」

先ほどから旦那の姿がない。葬式中にはいたのだがこの片付けには参加していないようだ。


「キャプテンは科学技術班を連れてある場所に向かいました。どうやら、葬式中に声が聞こえてきたようです」


「声?もしかして以前旦那が言っていた、龍宮の乙姫、旦那に力を与えて龍神の遣いにしたっていう・・・・・・」


「はい、内容は『危険だ。すぐに向かえ』というものらしく、この場を私に預けて行ってしまいました」

危険?すぐに向かえ?何が起こるというのだろうか?


「それで、旦那が向かった場所って?」


「・・・・・・キャプテンが向かった場所は・・・・・・」

長倉さんが口にした場所。それを聞いて俺は絶句した。

何故あの場所が危険なのか、その危険が何を意味していたのか今の俺にはわからなかった。




俺はいつも行っているスーパーで夜ご飯の買い物をしてから寮の部屋に戻った。

いつもならば特訓後にでもご飯を作れるぐらい余裕があるのだが、今日はどうにも作れそうにない。なのでお惣菜だけ帰ってくることにした。


「ただいま、チヨ」


「お帰りなさい、アルトさん。今日もお疲れさまでした」

チヨにはまだ飛月が亡くなったことを伝えていない。それに加えて、2月2日に何があったのかも本人には伝えていないのだ。

あの日の出来事はチヨが聞いてきてもすべて受験が終わってから話そうと思っている。

ただでさえ精神的にキツイ受験生に近くにいた人間が亡くなったなんて言ったらどんな影響を受けるかわからないと判断したからである。


「あ、お惣菜買ってきてくれたんですか?一応メールで今日は作りますよって送ったんですけど・・・・・・」


「そ、そうだったんだ!アハハ、ごめんごめん!でもせっかくチヨが作ってくれたんだから今日はそっちを食べよう!」


「・・・・・・アルトさん、今日はいつにもまして調子悪そうですよ?いつもなら本部から帰ってくる前に『帰るよ』の一言でも送ってくれるのに・・・・・・大丈夫ですか?体調がすぐれないなら無理に食べなくても大丈夫ですよ?」


・・・・・・あー。やらかした。いつもやっていることが今日はできていない。余計な心配を掛けさせまいと思ってたんだけど、迂闊だったなあ。


「ううん、大丈夫、大丈夫!大丈夫、だから・・・・・・」

寮に帰ってきてみんながいないから気が緩んだのだろうか、それともチヨという帰る場所にたどり着いたからだろうか、俺は今日中ずっと我慢していたものが溢れかえってしまった。


「だから・・・・・・」


「アルト・・・・・・さん?」

チヨが近くに来る。俺の大事な人。ずっとそばにいてくれるはずの人。


「チヨッ・・・・・・!」

我慢できなかった。俺は近づいてきたチヨを抱きしめた。


「ええ!アルトさん!?どうしたんですか!?」

急に抱き着かれたことにびっくりしてしまったようだ。

今すぐにでも離れないと、と思ってしまったが体が言うことを聞かない。


「チヨ・・・・・・チヨ・・・・・・」

生きている。生きていてくれている・・・・・・!


「・・・・・・アルトさん」

先ほどまで動揺していたチヨが俺を抱きしめ返してくれた。心の中にあるものが零れ落ちていく。


「チヨ!ごめん・・・・・・!もう俺、怖くて、いろんなことが怖くて、失うのが怖くて・・・・・・最低な事を考えた自分に嫌気がさして、守れてない自分が嫌になって。いなくならないでくれチヨ・・・・・・!俺は!俺は・・・・・・嫌だ・・・・・・怖い・・・・・・お願いだからいなくならないで・・・・・・」

チヨは強く抱きしめてくれた。俺は泣き叫ぶ。無くし物をした子どもが親に自分の悲しみを訴えるように。


「アルトさん。私はアナタがどんなことを見て、どんなことを経験してきたのかはわかりません。だけど、一つだけ確かなものはあります」


「それは、私が生きているということです。あの日、アルトさんが私を助けてくれなかったら、私はアナタに会うことができなかった。こんな幸せな日々を送ることはできなかった。だからアルトさん、自分を嫌になってならないでください。何も守れてないなんて言わないでください。私はずっと、アルトさんのそばにいますよ」


「ああ・・・・・・ああ、アアアアアアアア!!!!!!!!」

俺は泣き叫ぶ。ただひたすらに、我慢してきたものをぶちまけるように。チヨはただ黙って俺のことを抱きしめていてくれた。

感情のままに泣き叫ぶ中、俺はさっき長倉さんが言っていたことを思い出し、さらにチヨのことを強く抱きしめた。


「キャプテンが向かった場所、それは・・・・・・桜田神社跡地です」

一体そこで何があったんだよ、何が起ころうとしているんだよ!?

不安だよ・・・・・・

怖いよ・・・・・・

頼むからいなくならないでくれ、チヨ・・・・・・



解読が終了し、内容の公開が可能と審査された神託


1,人、あまりにも勝手すぎる行いで、星、泣いているぞ。悲しんでいるぞ。星、人々を敵として定めたくないぞ。行いを振り返れ。さもないと、この世は楽園から地獄と化するぞ。


2,悪神、攻めてくるぞ。大きなラッパの音と共に攻めてくるぞ。悪神と共に蛇も来るぞ。色を持つ者よ、抑止の力を持つ者よ。どうか対応してくれ。食われてくれるな。


3,星、太古の時代から狙われているぞ。よう周りを見ておけ。食われる人多いぞ。恐怖に駆られすぎるなよ。食われるものは身体とは限らないぞ。心も食われるぞ。


4,人は星にとって資源だぞ。資源は資源らしくしておけよ。あまり自分第一になるなよ。痛い目見るぞ。


5,目を澄ましてものを見ろ。疑問に思ったことは素直に受け止めておけよ。批判怖いぞ。迫害怖いぞ。けれど自分の素直な気持ちは、光を生きていく上で重要だぞ。


6,蛇やってくるぞ。三度(みたび)星、食われるぞ。星、抑止を解放するも苦戦するぞ。人、互いに争い合っている場合ではないぞ。防いでくれよ。


7,あまり物事に振りまわされるなよ。嘘は災いを呼ぶぞ。


8,疑問は食われないためには確かに重要だぞ。しかし、疑い過ぎるな。疑いが過ぎる者は心の暗きところに邪が来るぞ。邪、自分も周りも苦しめるぞ。身も心も周りも見えなくなるぞ。


9,烏の動きに注目せよ。


10,赤、人々に力を与えるぞ。赤は命の源ぞ。血であるぞ。穢してくれるなよ。


11,橙、人々に暖かさをくれるぞ。いろんなものを創り出すぞ。大事にしろよ。寒いと人、身も心も参ってしまうぞ。物がないと人、生きにくいぞ。


12,黄、人々に光を与えるぞ、土台であるぞ。目を大事にしろよ。足を大事にしろよ。暗き道は蛇の道だぞ。気を付けろよ。


13,緑、人々に癒しを与えるぞ。自然は物質だぞ。癒され、癒してくれよ。


14,青、この星にいないぞ。悲しいぞ。青は心だぞ。精神だぞ。身体と心を繋いでくれるぞ。帰ってきたら丁寧にしてくれよ。


15,紫、人々に   を与えるぞ。人、これを呪いと言わないでくれ。乗り越えてくれ。物事の負の側面を見がちなのは人間、みな同じだぞ。意識、目覚めるときが来たぞ。  

を切り替えるときが来たぞ。

獣に堕ちた人、悪いがやり直しだぞ。負の心が表すものがその自分の身体だぞ。紫に侵されなかった光よ、どうか彼らを導いてくれ。

(空白箇所、解読不可能)


16,閲覧不可 八咫烏閲覧済み


17,閲覧不可 八咫烏閲覧済み


18,金、信仰せよ。しかし宗教にはするな。信仰と宗教は異なるものだぞ。金、星の抑止だぞ。支えてやってくれ。(ここから下の文章、解読不可)


19、銀、決して金に劣らないぞ。素晴らしいぞ。(ここから先、解読不可)本編だと解読不可扱いにする。


20,色、人を構成するものだぞ。人を構成するのは骨や肉だけではないぞ。魂もだぞ。魂の本質、見抜いてくれ。


21,急いでくれ。色の特徴を見抜かないと、後に辛くなるぞ。


22,道、誤るなよ。人の道を外れれば、そこは獣の道ぞ。踏ん張れよ。


23,獣、食らうぞ。心を食らうぞ。肉も食らうぞ。その獣、最後は滅びの食い物になるぞ。改心してくれ。昇華して人に戻れよ。


24,我らは星の子、人間で在るぞ。驕るなよ。人も神も同じだぞ。(ここから先解読不可)


25,星は学び舎だぞ。       学校であるぞ。ここが最終地点ではないぞ。学べよ。学べよ。(空白箇所解読不可)


26,龍は星の抑止だぞ。水だぞ。血だぞ。光だぞ。自然だぞ。恐れないでくれよ。蛇は龍ではないぞ。姿が似ているだけだぞ。

27,龍は人間を信じ、色を与えたぞ。己に課された役割、果たしてくれよ。


28,世界、始まりに攻めてくるぞ。終わりが近いぞ。


29,解読不可


30,傲慢、一番思い罪だぞ。根元だぞ。自らの行いを顧みよ。改心してくれ。


31,強欲、身を亡(ほろ)ぼすぞ。だが、進化には欲が必要だぞ。常に考えよ。抑えてくれ。


32,嫉妬、恐ろしいぞ。そのエネルギーは小さな幸せや気づきをも悉く壊すぞ。周囲をよく見よ。人の話に耳を傾けよ。自分を知り、信用にたる人に知ってもらえ。


33,怠惰、後悔するぞ。『何を思おうとも後の祭り』にならないように心がけよ。しかし、時には休めよ。極端になるなよ。この世は100か0では成立しないぞ。1も2も50もあっていいのだ。


34,暴食、キリがなくなるぞ。臓物を汚すのは肉体や精神を穢すのに等しいぞ。獣や畜生になるぞ。野菜食えよ。肉もある程度食えよ。感謝して食えよ。されば満たされるぞ。


35,憤怒、悲しいぞ。怒りは悲しみが根底にあるのだぞ。何が悲しいのだろうか。

なんで怒るのだろうか。原因を探り、解消してくれよ。


36,色欲、愛憎にならないようにせよ。人は愛を知るために生きているぞ。憎しみは道を外す理由だぞ。愛し、愛されてくれ。


37,人は廻るものだぞ。肉体は魂の器だぞ。器が壊れたら、魂は靈界に還り、行いを多種多様な視点から見ることになるぞ。道、外れたら獣になるぞ。畜生になるぞ。また人になるぞ。やり直しだぞ。己の在り方、振り返れよ。気づけば改められるぞ。改心し、楽になれよ。


38、資源、無限だぞ。足りない、足りないと嘆いていると本当に何もなくなってしまうぞ。満ちていると感じよ。満たされるぞ。宇宙(そら)は無限に与えるぞ。


39,星は蛇以外にもいろんな者から狙われるぞ。愛と幸福の星故かな。


40,狐に気を付けろ。狐、人の情をついて気力奪うぞ。人、枯れるぞ。憑かれた者、振り回されるぞ。守ってやってくれよ。追い出してやってくれよ。


41,人、死を必要以上に恐れてはならない。人は廻る者だぞ。血が循環がよくない身体は調子が悪くなるのと同じように、世界の循環を逸脱するとバランスが崩れるぞ。星、怒るぞ。


42,人、道の基準をある程度定めよ。どの程度のことまでして良いのかを予め把握しておけ。しかし強制はするな。強制は支配だぞ。蛇の策略通りだぞ。


43,病気、早く治せよ。変に気を落とすなよ。病は気からだぞ。薬も良いが頼りすぎるなよ。良薬は口に苦いが、過ぎれば毒となることも覚えておけ。


44,命がけを尊ぶ者よ、反省せよ。皆、生きているだけで命がけなのだ。それ以上を要求するのは強欲だぞ。食われるぞ。


45,新たな命、大事にしてくれよ。命も愛も廻るもの。抱きしめてくれよ。


46,命、人間が意図的に生み出してはならないぞ。それは神が行うものだぞ。廻りを守れよ。都合勝手に生み出してくれるな。悲惨だぞ。大罪だぞ。


47,政治をよく見よ。国を良くする集団が己が欲に振り回される始末。皆、振り回されるぞ。振り下ろされるぞ。欲に振り回される者よ、改心せよ。大罪だぞ。


48,太陽の力、凄まじいぞ。我らに恩恵を与えるぞ。しかし人の太陽、使い方を誤ると星が持たないぞ。人、辛い辛いになるぞ。星も辛くなってしまうぞ。苦い思いをしたくなければ、依存は禁物だぞ。


49,お金の使い方に気を付けろよ。欲を満たすためだけに使えば、畜生だぞ。自身の工場の為に使ってくれよ。自身の向上の方法は、人によって過程が違うぞ。


50,愛の星。文明の向上を図る。しかし一度失敗した。罪の影響は大きいのだ。皆、己の欲するままに動き、滅びたぞ。                      外の者たち、自分たちが越されないように抑え込んでくるぞ。星々の協定を破ってくるぞ。追い返してくれ。(空白箇所解読不可)



新たに解読された神託


51、閲覧不可(八咫烏閲覧済み)

52,向上せよ。向上せよ。向上せよ。


53,我々は、星との契約によりこの星への移住を許された。星を向上させるために我々の知恵と力を使うということだ。


54,過程を大切にしろよ。結果ばかり見ているとしんどいぞ。結果は生きていく上での武器を与える。過程は経験や結果、知恵を与えるぞ。


55,文明は知的有機生命体が存在するどの星にも自然に発生するものだ。しかし、社会は必ず介入があるぞ。この星は蛇が来たぞ。


56,この星の社会、蛇のシステムだぞ。数千年前のシステムだぞ。いろんなものが暈(ぼか)されているぞ。目を澄まして、耳を澄ましてよく判断しろよ。


57,死後に天国も地獄もないぞ。あるのは靈界。(ここから先解読不可)


58,解読不可


59,悪を悪と思うな。それこそ悪の仕掛けだぞ。悪があるから善が成立するのだ。だからと言って対立するなよ。誰もが神であるぞ。悪神の性質を、浄化して神に戻してくれ。我らも力を貸そう。


60,偽善を笑うなよ。偽物も本物と差異のないものへと昇華することもあるぞ。やらない善や偽善を嘲笑う方がもっと酷い目に遭うぞ。見ているだけでは何も変わらないし、段階は上がらないぞ。行動する者よ、どうか勇気を持ってくれ。勇気を捨てないでくれ。


61,岩戸は強引に開いてくれるな。龍神の姫、怒ってこの世に災厄が降り注ぐぞ。開けるべき時期が来たら開けてやってくれ。その時はきっとこの世は楽園だぞ。姫に見せてやってくれ。


62,地獄を信じてはならないぞ。地獄に魅了されるぞ。地獄を信じていると肉体を得た後に行くことになるぞ。信じるのなら、天国を信じよ。


63,神を信じる心忘れるなよ。


64,祈りを忘れることなかれ。しかし、頼りすぎるな。救いを求めすぎるな。祈れば与えるが、依存は悪だぞ。


65,今、人々は都合の良い食糧にされているぞ。畜生と同じ扱いになっているぞ。それに気づかずに生活しているだなんてなんて嘆かわしいか。早く気付いて、改心してくれ。


66,蛇はこの数千年間で食べ飽きた頃かもしれない。ラッパの音が響き渡るころには人々は食いつくされているかもしれないなあ。しかし、約束は約束。星は人を守るぞ。信じてくれよ。


67,閲覧不可(八咫烏閲覧済み)


68,楽園を待つ者よ。楽園に至るまでは災難や災厄が降り注ぐぞ。悪神が抵抗するぞ。食い物無くなると暴れるぞ。しかし。楽園を期待するのは災厄を期待するのと同じ。期待はするな。人の不幸を期待するのと同じだぞ。悪の仕掛けと同じだぞ。心と魂を洗濯して、改心しながら、待って居てくれ。


69,この世界は人の物ではないぞ。万物すべてがこの星の物であり、宇宙(そら)は『さらに次元の高い者』のものだぞ。あまり所有を主張してくれるなよ。靈界には持って帰れないぞ。それでもいいのなら好きにすればいいが、次はきっと獣だろうなあ。悲しいかな。


70,楽園は(閲覧不可八咫烏閲覧済み)


71,氣は大事にしてくれよ。魂と同じだぞ。質を上げるために規則正しい生活をしてくれ。


72,解読不可


73,人の学には限界があるぞ。それなのに神を否定するその在り方は如何なものか。信じろとは言わないが、視野を狭くすると改心に時間がかかるぞ。


74,御上よ。あまり隠し事をなさってくれるなよ。ちゃんと伝えよ。みんなで協力するのだ。そうすればもっと早く楽園に辿り着けるぞ。


75,龍之国に獣来るときはもう時間がないぞ。他は多分食われたぞ。神の力を以てしても間に合わなくて申し訳ない。どうか守り抜いてくれ。


76,解読不可

77,この神託を読むときは信用できる人にだけ教えてくれよ。だけど、下手に教えてくれるなよ。捻った解釈がわんさかこの世に溢れて、洗濯がしにくく、改心が遅くなるぞ。考えてくれるな。そのままの意味で伝えるぞ。


78,この世は8の法則だぞ。本当は10にしたいぞ。しかし強引に10にすると誰もついてくれぬから、まだ岩戸は開いてはならんぞ。


79,言葉の使い方に注意せよ。言葉には力があるぞ。心の洗濯に使えることもあれば、汚染に使うこともできてしまうぞ


80,人は神になりたがるが、神は人になりたいぞ。物質世界でできることをたくさん楽しむといいぞ。だが、他人の人生を壊して楽しむシステムを享受する者は話が別だぞ。悪の信仰だぞ。








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