第2章 変革イベント『ハヴァー平原掃討作戦』

第8話 嵐の後の非常識

大改革イベント開放から2時間後

『国境なき騎士団』クランホール2階


そこにクランメンバーが勢ぞろいしていた。


少しばかりの沈黙の後、Natizenが口を開く。

「オーウェン、今のところ確認できているダンジョンは1箇所ってことでいいよな?」


「そうなるな」


「そしてその場所が日之里ヒノサトと、、、」


「そう、俺のホームタウンだからすぐわかった」


続けてバロックが口を開く。

「それと、現時点で確認はできませんが確実にダンジョンがある場所が2箇所あります」


ポカーンとした顔でリリー・Pが口を開く。

「え、どうゆうことですか?その二箇所ってどこですか?」


その質問にバロックが真面目に答える。

「プレイヤーが未到達な場所以外で考えると、ガダハトダオとハヴァーキャニオンがほぼ確実にダンジョンが発生しているということです」


「なんでその二箇所ってわかったんですか?」


先程から黙っていたウカノミタマが神妙な顔つきで、リリー・Pの質問に答えた。

「カダハトダオはイベント解放後、急に雷雲が発生して島に近づけなくなった。そして、もともと島にいたプレイヤーは雷により強制退去になった」


「すごい!この短時間でそこまで情報集めたんですね!」


「いや、集めたわけじゃない」


「ん?なんて言いました?」


「集めたわけじゃない。実体験だ」


「・・・ご愁傷様です。だから先程から深刻な顔していたんですね」


「⤵」


「リンネさんは、ドローンで絵文字を表示させるのやめてください。直接仰ってください」


「残念無念また来年」


・・・


「それで、ハヴァキャニオンはなんで確実なんですか?今まで通行止めでしたよね?」

沈黙をものともしないMikeがここで質問をした。


「北西方面は1次イベント失敗後、通行止めの影響で誰も行けていません。そして、その場所の討伐作戦がイベント開放と同時にアナウンスされた。その事実からして可能性は高いと思われます」


「なるほど、私このゲーム始めたの遅かったので、その場所行ったことなかったんですよね」


「だとすれば、ハヴァキャニオンは『ハヴァー平原掃討作戦』の通行止め解除次第か」


「それで、誰も触れていないけど渦中の人物はどこにいるの?」

ブラックウェルが切り込む


「連絡が取れない」


「ん?なんて?」


「連絡が取れない」


「・・・」


「こんな重要な時に?」


「本人に聞いてくれ。しかも、ちゃんと敬語をオーウェンに教えてもらってメールを送った。8通も」


「それ、俺だったら逆に怖くてスルーするわ。まあでも、たまたまタイミングが被っただけで確実じゃないんだろ?」


「まあな」


「ですが、トラブルに巻き込まれてる可能性はありませんか?情報屋に絡まれているとか」


「否定はできない」


「・・・」


「なんか嫌な予感がする」


一方その頃


ペラ


・・・


・・・


・・・


ペラ


・・・


・・・


・・・


・・・


ペラ


・・・


・・・


・・・


・・・


・・・


私は本を読んでいた。


イベント開放通知の後、頭がフリーズし、心臓がドクンドクンと鳴っていた私は、自分を落ち着かせる必要があると考えた。


落ち着く場所といえば、、、


1位トイレ


「便意はないし、近くにトイレもない。よって却下」


2位ベット


「自室まで戻るのめんどくさい。よって却下」


3位、、、


そして見事、私の中で銅メダルを勝ち取った場所、すなわち中央塔の地下図書館に来て本を読んでいた。


そして嬉しいことにこの図書館、AIキャラもプレイヤーも誰もいなかった。


ラッキー。そう思いつつ図書館で過ごしていたのだが、、、


「読めない」


そう、ここの本の文字は日本語で書かれていなかった。というより、現実世界の文字ではなかった。


色々と考えた結果、私は先程手に入れたエクストラ魔法『天之左眼アマノサガン』を使って本を読んでいた。


まあ、単純に魔晶操作と同じ容量で魔力を左眼に集中させてみたら「なんだ字、読めるじゃん」となっただけではあるが、、、


そんなこんなで、あれから3時間近くが経過していた。


そろそろ、心臓のバクバクもなくなったし、部屋に戻るか〜と思いつつオフにしていたドローン内アプリの通知をオンにする。


ピピピピピピピピコン!


!?


通知が8件。Natizenさんから来ていた。


1通ずつメールを開く。


「MaRiKuさん。聞きたいことがあるんでここに来て欲しいっす」


「MaRiKuさん。今どこにいるっすか?返信が欲しいっす」


「今どこにいるんですか。教えてください」


・・・


「MaRiKu様、現在どこにいらっしゃいますでしょうか。本メールをご覧いただけましたら、返信いただけますと幸いです」


「今すぐ連絡ください。もう一度言います。今すぐ連絡ください」


「このメール見たらここに来い、もう一度言う。ここに来い」


重要なことでもあるんだろうか。2度同じことを言っている。そんなことを思いながら、指示された場所をマップに表示しつつその場所に向かう。


そこは、北東エリアの最前列。冒険者ギルドの目と鼻の先にあった。


自分の家とは違い、3〜4倍ほどの広さがある、西洋風のレンガ建築。


ドアを3回叩き、しばらくすると、人の気配がし、扉が開いた。


「無事だったんすね。何してたんすか?」


「無事?あ、はい。図書館で本を読んでいました」


「へ、図書館?、、、それよりもなんでメール無視してたんすか?」


「図書館は、通知切る所ですよね?だから切っていました」


「・・・」


「あの場所誰もいないのにっすか?まぁもう良いっす。話を戻すっすけど、何で図書館にいたんですか?」


「気持ちを落ち着かせようとしてました」


「はぁ、あなたが非常識ってことはわかったっす。それで3時間も図書館にいて本読んでいたって言ったっすけど、図書館の本読めないっすよね?」


「それが、読めるんですよ。魔法で。」


「・・・」


「手に負えない」

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