遅刻魔と最硬の将軍
瓦礫の山を崩しながら、ゴビ将軍は立ち上がる。先程のオリバとドルの銃弾と火弾の同時攻撃により、硬い筋肉に少々の傷が付いているが問題ない。これくらい受けて立ち上がれない程、このゴビ将軍という人物は弱くないのだ。
「今お前らサルだの、ド変態だの、勝ってると妄想しているだの言ってくれたけどな...」
「なぁお前らさ、何でスケルトンスーツ脱いでんだ?」
「いやな、別に脱ぐ必要はなかったんだが、4階で矢の雨に気づかず通ってしまっただがために被弾しちゃってよ」
「俺はお前らよりも超強いぞッ!!」
『それでスーツの効果が切れて、着る必要が無くなったから脱いだわけだ』
「あーな、あの矢の仕掛け、結構鬱陶しいからな。そうだ、あのトラップをスワームに取り込んでロンリーの奴らにやり返そうぜ」
「『異議なし』」
「大ありだボケッ!!人の話しを聞けアホッ!!」
「んだよまだいたんか。俺らは今忙しいんだ。そうゆーの後にしてくんね?」
「んだとぉ...?」
かなり馬鹿にされているゴビ将軍。だが、そうこうツッコミをしている内に自慢の拳の射程圏内まで詰め寄れた。後は今後軍や国に爪痕を残すであろう、千布浩介の割れかけの頭にとどめを刺すだけだ。
「そうイキられるのも今この一瞬だけだっ!!今度こそその頭かち割ってやるわっ!!」
「っとマジか、これ一応煽りじゃなかったつもりなんだがな...」
「十分煽りだッ!!くらえ!!」
浩介のヒビ入り頭にゴツい拳が迫る。だが、先程のように浩介とゴビ将軍のタイマンではない。今の浩介にはオリバとドルという、最強の仲間がいるのだ。
ガキンッ!!と耳の奥が痛くなりそうな甲高い音が鳴り響き、拳が浩介の目の前で止まる。
「...ダメだ。コイツは俺の部下だ。そう安易と殺されたら、折角期待した王のメンツが立たないんでな」
「何ッ!?俺の鉄拳を剣で止めた、だと!?」
咄嗟に一応の上司である、オリバが拳の挙動を剣で封じる。それも片手で。
「いいか...。強くて厄介なのは何もコイツだけじゃない。俺もろくに軍で大佐の称号背負ってんだ。舐め腐ってんじゃねーぞ」
「何言ってんだぁ!?舐め腐ってんのは、そっちの方だクソったれ!!」
「...マジで猿公だなお前。すこーし煽っただけでこの有様だよホントに」
猪突猛進の猿公もとい、ゴビ将軍の猛攻を意図をも容易く躱すオリバ。やはり裏口入学の成金ではなく、実力は本物。いや、大佐の枠組み以上の実力を持った人物だ。
とはいえ、ゴビ将軍は「将軍」という地位なだけあってか、先程のオリバとドルの強烈な同時攻撃をまともに食らっなお、立ち上がれる鋼の肉体を有している。一筋縄では倒せないのは確かなのだ。
「ハァ...ハァ...鬱陶しいわうざったらしいわしつこいわクソッタレ!!何でこう攻撃が当たらない!!」
しかし、ゴビ将軍は俗に言う脳筋なために防御力は随一だとしても、攻撃に一切の工夫をしない、いやできないので、
冷静なオリバに毎回毎回躱されてしまっているのだ。
「...ハァ、つまらんな。お前ホントに将軍なんか?大佐の俺が将軍であるお前と同等っておかしな話だよまったく...」
「お、お前こそ、さっきから俺に攻撃してねぇじゃねぇか。ビビってんのかぁ?この俺になぁ?」
「ビビってないし、攻撃の機会を伺っているだけだし、むしろビビってんのはお前の方だろ」
「い、いいや、ビビってんのはお前だ大佐」
「ほぅ...?大佐って言われるのはあんまりないからちと嬉しいんだが、将軍様が言うとなるとバカにしてるように...いやバカにしてるだろクソッタレが」
「お前の方がバカにしてるだろうがボケ」
「んだとテメェのデカい身体すり潰して魚の餌にするぞアホ」
「「あ"?」」
暴言と煽り(比較的低レベル)と、大佐と将軍の空気を裂くような鋭い視線が交差し、今まで以上に張り詰めた空気が指令部に立ち込める。それも片方は、恐竜が獲物を定めているかのごとく、鋭い視線で。
「立場弁えろよ小童ぁ...。こちとら将軍だ。大佐のお前が太刀打ちできる領域じゃねぇんだよアホんだら...。退くなら今のうちだぞ」
「バカかお前。ここで退くなんて選択肢はないんだよ。俺らスワーム大共和国にそんな退く余裕なんかあったら、今頃お前らの武力"だけ"が取り柄の国は滅んでるわ」
「ふん...武力だけが取り柄、か。それは違うな」
「...?」
「武力だけが取り柄、じゃねぇんだ!!武力に特化した国って言えこの青二才ガァ!!!!」
「な、なんだ、お前ッ!?急に叫ぶし、てかなんだその身体!?何で黒いんだよ!?」
突如として恐竜のような咆哮をあげた将軍。その荒々しい咆哮と共に将軍の身体は謎に黒くなっていく。
「ハハはハはッ!!俺にも出来タぞッ!!スゲェなコの硬さ!!モウこれで敵無シだ、あぁ絶対そウダ、俺ハさラにサラニツヨクナッタンダッ!!!」
『硬さ...硬...さ?』
「硬いだの、強くなっただの、いきなりなんだコラ。身体黒くなっただけでそうも頭がおかしくなるのか?」
『...カタコトな言葉........ハッ!?まさかあの時私たちが出会った巨人の!?よ、よせオリバッ!!』
「馬鹿野郎!!オリバ、アイツはもうさっきの"アイツ"とは違うッ!!!」
「その首ぶった斬ってお前らの国をのトップに献上して
『将軍は既に今まで以上の硬さを手にしているのだ!!いくら貴様に斬る技術があっても、絶対斬れないッ!!だからやめッ
「サッキまデよくも俺タチの国をバカニシテクレタナぁ...だが、コレデしマイダッ!!」
「ッ!?」
「
ッドンッ!!だろうか。全身が黒く硬直化した将軍から放ったごく普通の正拳突きは、
「んぐッ!?」
『「ッ!?オリバァッ!!」』
「...ハッ、バカナのハ、テメェノほウダゼ、タイサ」
一瞬でオリバの意識を掻っ攫った。
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