先生
IORI
煙草
煙草の匂いは嫌い
あの人を除いては
ねぇ、先生
忘れ方教えてよ
夕暮れ色の屋上は、私と先生を染めていた。横並びに遠くを見つめては、時折貴女の横顔を盗み見る。
少し憂いを帯びた目と泣きぼくろ、綺麗な黒髪はサラサラと靡く。ほんの少しの甘い香りは香水だろうか、それとも柔軟剤か。煙草を薄い唇に咥えると、つまらなそうに吸い込んだ。仕草1つでさえ絵になる貴女は、怖いくらい綺麗だった。
1本どうだい?
いつもの調子で貴女は呟く。いっそ貰ってしまおうか、ー否、言えない。俯く私の頭をぽんっと撫でる。そうやって距離を詰めては離すのだ。悪い人、そう言って突き放してしまえたら楽だろうに。
少し視線を上げると、貴女の横顔を独占出来る。今この時間だけ、特別な時間。何も聞かないでくれる、必要以上に干渉しないでくれる、それが心地よかった。
容易く貴方に触れてる煙草に嫉妬して、貴女を包む煙に憎んだ。拳1つ分の距離を詰めることが出来たら、貴女の心に焼きつけることが出来たら、この関係は変わるんだろうか。
嗚呼、変わらない。
知ってるんだよ。セーラ服を脱いだとしても。
先生、私、もう大人になったんだ。卒業式の時も変わらなかったね。今もきっと綺麗なんだろうね。まだ煙草吸ってる?やめなよねって最後に言ったの覚えてるかな。
私さ結婚したの。煙草吸わない男と。
先生 IORI @IORI1203
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