第4話「彼との出会い」

 弓道場。

まるで、屋根のない小さい体育館だ。弓道着を着た同級生や先輩たちが弓を引いていて、とても静かな空間にしゅぱんっと勢いのいい音が鳴り響いている。

矢を打ち終わったある男の子がこちらを見て、(おそらく龍平さんの方に)やっほーと言った。



私はいつの間にか彼に釘付けになっていた。透き通るようなきれいな瞳、無駄のない動き、堂々とした体つき。


「絢香!!あの男の子なんて名前?」

「岩村翔人。顔立ちが良くて、昔ジャニーズ事務所にスカウトされたことがあるとか。」



”岩村翔人”。なんてかっこいい名前なんだ。もう一度彼を見ると、彼は再び矢を打つ準備をしていた。


「あ、ごめん恋果。私用事あるから帰らなくちゃ。恋果ももう帰る?」


絢香が帰るなら龍平さんも帰るであろう。だったら、私も帰らないと少しおかしい。


「うん。帰る」


そして私達は弓道場を抜け、学校の門をくぐった。


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「ただいまー・・・。」


まあ誰もいないんだけどね。そう思っていた。


「誕生日おめでとうーー!!!」

「え、絢香、?」


テーブルにはチキンとサラダがあった。そういえば、私今日誕生日なんだ。16歳になったんだ。私はいつの間にか涙を流していた。


「れ、恋果?!どうして泣いてるの?嫌だった?」


いや、違うんだ。両親にあまり祝われたことがなくて、嬉しかっただけだ。


「ううん。なんでもない。ありがとう。」


絢香はそっか、という顔をして私達は最高に楽しい時間を過ごした。


_________________________



 翌日。朝。

昨日は楽しすぎてお風呂に入らなかったらしい。今日は遅刻覚悟で登校準備をするしかない。


「ピロンっ」


携帯の通知が鳴った。携帯を見るとメッセージが来ていた。開くと、相手は岩村翔人だった。


『中野恋果さんの連絡先で間違ってないかな、?岩村翔人です。この間、部活見に来てくれたよね。俺めっちゃ嬉しかったんだ。もしよければ、今後もまた来てくれたりしないかな?お返事待ってます。』


え?!嬉しかったの?!ドクンドクン。私の心臓の音がうるさい。少し意識をしてしまったばかりに気になってしまう。

 

これは、チャンスなのではないか?私は何度も何度も考えた文をやっとの思いで岩村くんに送った。

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