第1章
第1話「プロローグ」
5月。
高校生活にもだんだん慣れてきて、部活も本格始動してくるこの季節。
高校によっては、そろそろテストが始まるところもある。そんな社会が忙しい中、
私恋果は夕方、誰もいないクラスに一人、ぽつんと椅子に座り、夕日を眺めている。今日は快晴で、春のような気持ちのよい風が吹いていた。
授業で汚れた黒板。掃除がなかったから黒板がいつになく白い。もう一度外を眺めると、サッカー部が砂埃を上げながら試合をしている。コート外の周りには、サッカー部の部員のファンであろう女子たちがキャーキャー言っている。
午後4時50分。
学校が閉まるまであと1時間ちょっとある。このまま帰ってもいいのだが、今日は絢香と帰りたい気分だ。今日は確か、絢香は部活だったかな。今日はどっちの部活に行ったんだろう。P検?それともAI研究?どちらも二階にあるから行ってみようかな。私は、必要なものをリュックに入れ、部室へ向かった。
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「失礼します。有城さんっていますか?」
私がそう言うと、先輩と思わしき女性がこちらを振り向き、
「いたけど、用事があるからって30分前くらいに帰ったよ。まあ、その用事がサッカー部にだったら外にいるかも。」
と言われた。
「わかりました。ありがとうございます。」
私はそう言ってドアを閉めた。
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絢香、彼氏さんのとこ行ったのかな。グラウンドを見渡すと、そこには龍平(彼氏)さんと思わしき男の子が絢香と一緒に話している。これは、私が入ってもいいのだろうか。そう悩んでいたとき、私を呼ぶ声がした。
「恋果ーー!!」
絢香だ。私は急いで絢香の方へ向かった。
「龍平さん、こんにちは。」
「こんにちは、中野さん」
龍平さんは、彼女(絢香)以外の女子を下の名前では絶対に呼ばない。龍平さんがそう自分で決めているらしい、とこの間絢香に教えてもらった。
じゃあ、龍平さんのことも高橋さんと呼んだほうがいいのでは?と思っていた時期もあったが、絢香曰く、龍平さんは自分の苗字が好きじゃないから名前で呼んでくれたほうがいい、らしい。
その代わり、特別感を出すために絢香のみ「龍」呼びが許可されている。この呼び名だけは誰にも呼ばれたくないので、そう呼んだ女子には嫌われるような行動をわざとしているとのこと。
「絢香、今日ちなみに一緒に帰ってもいい?もし、龍平さんと帰りたかったら私邪魔だろうから一人で帰るよ。」
「全然平気!龍とはいつでも一緒に帰れるから大丈夫だよ」
すると、龍平さんが
「俺も一緒じゃやだ?」
と絢香に言うと、
「やじゃないよ」
といかにも甘々カップルぶりを見せつけられた。でもそれはそれで、癒やしだ。
結局3人で帰ることになった。私は3駅、龍平さんと絢香は4駅なので私が先に電車を降りる。私は絢香に手を振って電車を降りた。
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