第25話 二者択一
・・・。
俺は考える。
友達のままいられる道を選ぶか、それとも友達としてもいられなくなる道を選ぶか?
多分、そのどちらか一つしかないのだ。
"その子と友達のままいられる道"
それはすなわち、俺の恋を諦めることだ。
その子の"友達のままでいたかった"という願いに寄り添い、俺はその子の傍で自分の想いを封印して友達を演じるという選択だ。
俺にそれができるだろうか?
自分の想いを誤魔化して踏み潰して閉じ込めて、彼氏がいるその子の傍で友達として笑っていられるだろうか?
届かない恋を胸にその子の前でずっと笑っていられるだろうか?
俺の見知らぬところで彼氏と愛し合っているであろうその子を、友達として身近にいて許せるだろうか?
嫉妬や、俺と付き合ってほしいという気持ちをその子の前で誤魔化し続けられるだろうか?
俺は、今この場でその子の手を取り友好の印を結んだらどうなるかを必死に考えた。
率直に出てきたのは嫌悪感の数々だった。
その子の一番に一生なれないまま、他の男がいるその子と友達で居続けるのは絶対に無理だと感じた。
もし俺が今ここでその子の手を取り友好の印を結んでしまったら、その先は生き地獄が待っている。
――そんなことになるくらいなら、今ここでいっそのこと自分の決意を貫き通してしまおうか?
それがもう一つの選択肢――友達としてもいられなくなる道だった。
"そんなに俺のことも大切なら彼氏と別れてくれ"――と。
"彼氏なのか俺なのか、どちらか選べ"――と。
もう行くとこまで行ってしまったのだ――全部ぶちまけて終わりにしてしまってもいいのではないか?
そうしたら、彼氏を振ることができないその子は、俺を振り払って去っていくだろう。
ほら――そうしたら、俺もその子とさよならできて、その子と友達でいる辛さも苦しさもなくなるじゃないか。
"俺とは付き合ってくれない"って、もう十分わかったじゃないか。
――そんなことできるわけないだろ。
なんで俺がさよならしなきゃいけないんだ?
5年越しにようやくこんなに仲良くなれたんだぞ?
高校3年間、俺はずっとその子を見てきたんだ。
話しかけられなくてずっと後悔していたのを、ようやくの思いで繋がりができたんだ。
それなのに、なんでこの俺がその子とさよならしなきゃいけないんだよ?
ずっとずっと大好きで、大好きだからこそ恥ずかしくて怖くて言えなくて――やっと今、ようやくの想いで親しくなれたのに、親しくなりすぎたから、好きになってしまったから"さよなら"ってあんまりだろ?
いざ離れようとすると、やっぱり離れたくない気持ちが強くなる。
それは、そうした瞬間に友達としても絶交になると薄々感じていたからだった。
こんなことになるくらいなら、その子が言うようにその子のことを好きにならずに友達のままいれば良かった。
――だから俺は、自分の想いを否定し始める。
その子から好かれているのかもしれない―ーだから、その子と付き合えるかもしれない――なんて勘違いしなければ良かった。
――だって、そうしたら嫌悪感も生き地獄も発生せず、その子と友達のままいられたんだ。
俺はそもそもクズ人間だったじゃないか。
――だから、自分の存在をも否定し始める。
その子に話しかける勇気もない、友達もいないくせに無駄にプライドだけは高い、自分の無能さに言い訳して改善しようと努力もしてこなかったクズ人間だったじゃないか。
そんな俺が、なんでその子と仲良くなっていると――付き合えると思い上がってしまったんだ?
なんで、友達関係のままじゃ満足できなくなってしまったんだ?
ああ、そうだった――こんなことになったのも恋愛マニュアルや略奪愛テクニックを鵜呑みにして頭でっかちになっていたからじゃないか。
”こうすれば付き合える”、”ああすれば彼女の好感度が上がる”――と馬鹿が勘違いして過信しすぎた結果じゃないか。
――こんな俺なんかがその子と付き合えると思うことも、嫌悪感を抱くことも、好きだと思うことも全て最初からしてはいけなかったんだ。
だったら――
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