第11話 後悔

秒速を視た俺は、一言で言うならば"どうして俺はあの時勇気を出さなかったのだろう"と後悔をした。

そう――高校生の時に好きだった"その子"を思い出したのだ。

その子からCDを渡されたこと、"聴いてみてね"と小手紙が入っていたこと。

少なからずその子が俺に好意を持ってそうしてくれていたのではないか?――そんな考えれば当然のことをずっと見て見ぬふりをし、そしてその子に酷い態度をし続けていたのを、5年後になってようやく理解したのだ。

直接的に貴樹と境遇が似ているというわけではないのかもしれない。

ただこの時の俺は、貴樹の明里への未練やそれによって発生している生きづらさ・歪みにとても共感したのを覚えている。


高校生だった頃の俺は、毎日その時の気分でしか生きていなかった。

学校がつまらないからサボる、眠いから寝坊して遅刻する、好きな子とは恥ずかしいから話さない――

アニメは楽しい、ゲームも楽しい、現実はつまらない――

その時の"今"が、当時の俺にとって全てだったのだ。

その子のことが大好きだという当時の想いが、将来――5年経った今、こんなにも強い後悔になるとは思ってもいなかったのだ。


俺は四畳半の狭い部屋で気づいたら涙を流していた。

貴樹の未練が――どうにもならない、行き場のない想いが、俺にも流れてきた。

そして俺は、今までずっと逃げてきた事実を、ここでも改めて痛い程に実感したのだった。

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