後悔しないように(※全てフィクションです)
こばおじ
第1話 恋
俺は高校生の頃、好きなヒトがいた。
その子も同じクラスだった。
その子のことが気になったのは入学してまもない頃、その子から急にCDを渡されたことがきっかけだった。
本当に急だったので、俺はきっかけも理由もわからなかったからその子の突飛な行動のせいでその子を意識するようになってしまった。
一つ原因があるとすれば、俺は高校では軽音楽部に所属し、精力的に活動をしていた。
好きなバンドや音楽の話をバンド仲間としていたので、おそらくその子はそれを端から聞いていたのだろう。
貸してもらったCDには小さな手紙が入っていて、"小林くんの好きなバンドと雰囲気が似てるから是非聴いてみて"と書かれていた。
俺はその当時、思春期真っ只中だったなと今になってそう思う。
俺はその子から貸してもらったCDを一回も聴くことなく、机の中に閉まった。
そのCDが視野に入るだけでその子のことを、その子からCDを借りたことを思い出し、どうしようもなくドキドキしてしまうのだ。
その姿を家族に絶対に見られたくなかったのも大きかった。
なんでそんなにドキドキしたのか大人になってしまった今の俺には到底理解できそうにないが、俺はそのことがきっかけでその子のことが大好きになってしまったのだ。
しかし次の日、俺はCDを借りたことも、CDに入っていた小手紙のことも全てなかったことにして普段通り振る舞った。
その内面では、その子のこと、その子が同じ教室にいること、その子が話しているところ、その子が笑っているところになぜだかわからずドキドキしていた。
そんな俺は、当然その子に話しかけられずにいた。
ただ、彼女がこっちを見ていない隙に、彼女を――彼女の全身を舐め回すように眺めた。
髪の毛、耳、横顔、胸、太もも、スカート、ふくらはぎ、時々ポニーテルにしてくれた時に表れるうなじ等、いろんな箇所を遠くから眺めた。
俺はその子とまともな会話もしたことがなかったのでその子のことを何一つ知らなかったのだ。
だから、せめてできる範囲でその子の情報を得ようと尽力していたのだと思う。
彼女は女性にしては170cm近くある高身長で、しかもスラっと痩せていて、いわゆるスタイルがいいタイプの見た目をしていた。
そして長く艷やかに整えられた黒髪で、性格もかなり大人しめでいつも少人数(だいたい一人の友達と)で教室内を過ごしていた。
俺は授業中や休み時間に意識をその子に向け続け、その子の情報を絶えなくキャッチした。
その子と友達同士の会話の内容を聞いていると、その子(と友達も)はわりとアニメや漫画が好きなオタク趣味を持っていることがわかった。
俺はその頃は音楽にのめり込んでいたのでアニメや漫画は人並みには好きだったがそこまでではなかった。
しかし、その子がそういったものが好きだということがわかり、俺はその子と共通の話題・趣味を持とうと深夜アニメを観るようになった。
それが終わりの始まりだった。
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