~ゴッド・オブ・ブレイビア~ 姫騎士デュエル・アナリストの俺、男だからとランク2位のチームを追放され、訳あり美少女ばかりの新チームに拾われる。「開幕戦は3日後だ。よろしく頼むよ」「……OK」
第59話「ギィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!」
第59話「ギィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!」
「私の方はしょうがないわよ。そんなにすぐに治るわけがないんだし。だからリュカも気にしないで。ヤマトさんもね」
「せっかく頼ってくれたのに、力になれなくてごめんな」
気にしないでと言われたものの、デュエル・アナリストとしてはやはり申し訳なさでいっぱいだ。
「だからいいってば。元はといえば自分でまいた種なんだし。そもそも私が決闘を受けなければ、別に負けてもいいデュエルだったんだから。ま、今できる最善を尽くすわ」
マリーベルの状態にまったく改善が見られなかったことに、重苦しい空気が漂う中、
「あれ、マリーベル。肩に虫が付いてるぞ」
マリーベルの肩にカナブンか何かがくっついているのが目に入った俺は、何気なくマリーベルに伝えた――んだけど。
「ギィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!」
突然、マリーベルがこの世の終わりみたいな盛大な悲鳴を上げた。
「ふぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!?」
「おおう!? ビックリしたぁ!?」
マリーベルのあげた声のあまりの大きさに、リュカと俺はビックリして顔を見あわせる。
「と、ととととと取って取って、早く! 虫を取って!」
「虫って言ってもカナブンだぞ?」
「カナブン!? カナブンってあれでしょ!? テカテカの緑色したなんか気持ち悪いヤツ! いっやぁぁぁぁぁぁっっっっっ!」
「ええっと、虫の中ではかなり接しやすい部類に入るはずだけど――」
「そんな虫は存在しないから! 虫は全部、等しくアウトだから! いいから早く取ってよ! お願いヤマトさん! 一生のお願い!」
「お、おう。ちょっと待ってろ」
俺はマリーベルの右肩に止まっていたカナブンをひっつかむと、ポイっと放り投げる。
「もう取れた?」
「取れたぞ」
「近くにいない?」
「放り投げたらどこか遠くに飛んで行ったよ」
「よかったぁ……」
マリーベルが腰が抜けたように、へなへなとその場に座り込んだ。
その姿に俺は思わず苦笑してしまう。
「ははっ」
「ちょっとヤマトさん、笑わなくてもいいでしょ。本当に嫌いなんだから」
へたり込んだマリーベルが、睨みながら見上げてくる。
まさかの涙目だった。
どうやら本当に虫が嫌いらしい。
「ごめんごめん。こんなに怖がるなんで、意外だなって思ってさ」
「すごい声でしたもんね」
リュカもまだ呆気にとられたような顔をしていた。
「虫は昔から嫌いなのよ。なんであんなのがこの世界に存在しているのか、理解に苦しむわ。国を挙げて絶滅させるべきね。ああもう、早くシャワーに入って汗と一緒に虫の名残を洗い流さないと。リュカ、行きましょ」
「あ、はい。それではヤマトさん、お先にあがらせてもらいますね」
「後片付けは俺がやっとくから、マリーベルについていてやってくれ」
俺はシャワーを浴びに向かう2人を笑顔で見送る。
しかし頭の中はさっきからずっとフル回転していた。
さっきの大絶叫は凄かった。
激しいデュエルをこなす姫騎士は肺活量が多い子が多いとはいえ、あんな大声はそれこそ全身全霊を込めないと出せないぞ?
今、間違いなくマリーベルは全力で叫んでいた。
思わず全力を出していたんだ。
出せたんだ。
もちろん叫んだだけで、魔法の使用とはまったく状況が異なる。
だが全力を出せたことに変わりはない。
つまりそれくらい虫が嫌いってことだよな。
なるほどね。
なるほど……ふむ。
夕闇が迫る中、俺は運動場で一人、後片付けをしながらフンフンと頷きを繰り返していた。
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