第66話 激闘! マリーベルvsアリッサ!

 ゴウッ!

 ゴウッ!


 炎の刃が振るわれるたびに炎が燃え盛り、ぜた。


 フレイム・アローの撃ち合いに続いて、怒涛の近接ラッシュもこれまた互角。

 しかしここでマリーベルはタイミングを見計らって斬り合いを止めると、バックステップをした。

 明らかに、アリッサとの力比べから逃げるような動きだ。


(くそっ、こんなの全然、引く所じゃないだろ。マリーベルならこれくらい真っ向勝負でうち破れるだろ。お前はそれくらい強い姫騎士だろ)


 それが俺にはどうにもはがゆくて、思わず悔しさを隠しきれない言葉が漏れ出でてしまう。


(長年の心の傷だもん、仕方ないよ)

(言われなくても分かってるよ)


(ふふっ)

(なんだよ)


(ほんとヤマトは世話焼きなんだからー。うりうり。あんたは我が子を心配する保護者かー?)

(うっせ)


(照れない照れない)

(だいたいそういうアスナだって、フェンリルがAREを起動できるように、ここ数日ずっと徹夜続きで調整してただろ)


(黙れ! リュカちゃんとフェンリルはもはや我が子! 徹夜続きなど何するものぞ!)

(言い切っただと!?)


 などと、既にある程度マリーベルの事情を聴いているアスナが絡んでくる間にも、激しいデュエルは続いていく。


「貫け! バーニング・スピア!」


 マリーベルはバックステップで下がりながら、高密度に圧縮した炎の槍を一直線に突き放った。

 平凡な防御魔法ならあっさりと貫ぬく、一撃必殺の貫通魔法だ。


 下がるマリーベルを追いかけようと前に出たアリッサに、炎の槍が吸い込まれるように向かってゆく!


 文句なしの完璧なカウンターだ!


(完全に狙っていたな!)

(上手いです! タイミング、ドンピシャですよ!)

(これはアリッサ=カガヤ=ローゼンベルクでも、かわせないんじゃ――!)


 期待感から思わずガッツポーズをしかけた俺・リュカ・アスナの前で、


「烈火天槌! バーニング・ハンマー!」

 しかしアリッサは巨大な炎のハンマーで、伸び来る炎の槍を問答無用で上から叩き潰した。


(これでも無理かぁ……)

(多分ですけど今の見てから反応しましたよ? 凄すぎません?)

(あぁぁ……)


 これまたガックリと肩を落とす俺たち3人の前で、 小休止といった様子で、どちらからともなく2人の動きが止まった。


 マリーベルとアリッサの視線が交錯する。


「さすがねアリッサ。前に決闘した時よりも強いじゃない。まさかあの時は手を抜いていたわけ?」


「お姉さまこそ。寸分の隙もない見事なまでの魔法の連携です。正直ここまで仕上がっているとは思ってもみませんでした」


「強い相手と毎日、実戦なみのハードな訓練を積んできたからね」


「なるほど、リュカ・フリージアですか。たしかに彼女なら練習相手にはうってつけです。もし炎魔法の使い手であれば即、お姉さまともどもバーニング・ライガーに引き抜きたいくらいですから」


「あんたは戦力の均衡化って言葉を知らないの?」


「わたしがいる以上、そんな言葉は意味を持ち得ません。なぜならわたしがいるチームこそが、常に最強なのですから」


「ほんとに傲慢ごうまんね。ますます行きたくなくなったわ」

 マリーベルが呆れたように肩をすくめた。


「ですがそれでも今のお姉さまでは、わたしには届きません。限界は見えました。ここからはずっとわたしのターンです」


「ほんと、好き放題に言ってくれるわね!」


 2人が激しい魔法戦を再開した。


 まずはさっきと同じくフレイム・オーラ・ブレイドでの接近戦だ。

 しかしさっきまでとは打って変わって、目に見えてマリーベルが押され始める。


(わわっ、なんかマリーベルちゃん押されてない?)

 焦ったようなアスナの声に答えたのは、俺ではなくリュカだ。


(アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクがかなり強く魔力を込めています。今までは技術とパワーが5:5くらいだったのが、技術3:パワー7くらいの力押しに切り替えたようです。おそらくは――)


(マリーベルが全力を出せないことに気付かれたか)


(はい。彼女ほどの姫騎士なら、決闘と今日の2戦もすれば、すぐに気付くでしょうから)

(なにせ現役最強の姫騎士だからな。観察眼も超一流だ)


 一流の姫騎士ともなれば、デュエルを通して相手の様々な情報を読み取り、デュエル中に対処法を自己アップデートしていく。


 俺も5年の業界生活でたくさんの姫騎士を見てきたが、アリッサは特に実戦での対応力が高い姫騎士だった。


(しかもこれだけ強く魔力を込めているのに、魔法がまったく乱れません。恐ろしい程のコントロール精度です)


 力押しの戦法に切り替えたアリッサに、マリーベルが明らかに嫌がった様子を見せ始めた。

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