第63話 開戦!『紅蓮の破壊神』vs『絶対要塞』


「リュカ、いつも通りにな」

 セコンド・エリアで、俺は改めてリュカに最後の声掛けをする。


「はいっ!」

 すると力強い返事が返ってきた。


「いい顔じゃないか。リュカはもうすっかり一人前の姫騎士だな。強敵相手でも安心して見ていられるよ」


「ヤマトさんの期待に応えられるように頑張ります。では行ってまいります!」


 ここまで7戦全勝。

 もはや押しも押されぬ大エースとなったリュカが、前半戦ラストとなるデュエルの舞台へと上がった。


『さて皆さん! ついにゴッド・オブ・ブレイビアも前半戦最後となるデュエルを迎えました! ともに全勝同士! まずは赤コーナー! バーニング・ライガーの誇るセカンドエース! 圧倒的な攻撃力は、立ちふさがる全てを粉砕する! 最強のほこ! 『紅蓮の破壊神』ティファニア・グランデぇぇぇぇぇぇ!』


 マイクパフォーマンスに応えるようにティファニアが右手を突き上げると、割れんばかりの歓声が上がる。


『対する青コーナー! こちらはライトニング・ブリッツが誇る最強の盾! 天翔あまかける8体の魔狼は近づくことすら許さない! 『絶対要塞──アブソリュート・フォートレス』リュカ・フリージアぁぁぁぁぁぁ!』


武具召喚コネクト! あま翔ける魔狼フェンリル!」


 コールされたリュカが、8枚の羽根を備えたバックパックを装着すると、


「フェンリルキタ━(゚∀゚)━!」

「キタ━(゚∀゚)━!」

「キタ━(゚∀゚)━!」


 観客からこれまた大きな歓声が上がる。

 今やリュカもすっかり有名人だ。


 あどけなさの残る可愛いらしい顔立ちと、包容力を感じずにはいられない体つきに加えて、一歩も動かずに圧倒するという誰も真似できない固有戦術。


 さらには4部から大抜擢されて勝ちまくるというシンデレラストーリーが、リュカを一躍スターダムへと押し上げていた。


武具召喚コネクト! 紅蓮の戦斧アグニ!」


 リュカの応援が一段落するのを待ってから、ティファニアが武具召喚コネクトする。

 その右手に、炎の刃を明々と燃やす威風堂々たる戦斧が現れた。


 これまた大歓声が上がる。


『両者の武具召喚コネクトを確認! 防御結界セットアップ! お待たせいたしました! 全勝を続けられるのはどちらか1人! 勝つのはどっちだ!? 姫騎士デュエル、レディぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・ファイッ!』


 カーン!

 ゴングが高々と鳴り響いたと同時に、ティファニアが進撃を開始した!


 対してリュカは定位置である自陣の最後尾に陣取り、フェンリルを展開して魔力砲撃を行う。

 しかしティファニアは遠距離戦にはまったく取り合わない。


 低ランク魔法のフレイム・アローやファイア・ボールを弾幕としてばらまくことで、最低限の迎撃をしつつ、被弾しながらもじりじりとリュカとの距離を詰めていく。


 そしてある程度まで距離を詰めると、その強大な力を一気に解放した。


「炎獅子咆哮! ライオネル・ストライク・フルチャージ!」


 巨大な炎の獅子をまとったティファニアが、リュカに向かって猛烈な突進を開始した!


「ライオネル・ストライクの上位派生技ですね! 威力が高い代わりに、エイムが難しい高難度魔法です!」


 マリーベルやアリッサ・カガヤ・ローゼンベルクも使う、炎属性のAランク魔法ライオネル・ストライク。


 激しく燃え盛る巨大な炎の獅子をまとって突撃するという、破壊力満点の攻撃魔法だが、フルチャージはさらに攻撃力を限界まで高めた、威力に全振りした派生技だ。


 魔法式が複雑でコントロールが難しいこともあって、この派生を使いこなせる姫騎士は多くはない。

 が、バーニング・ライガーのセカンドエースのティファニア・グランデともなれば、高難度の派生魔法すら当然のように使いこなしてくる。


 だが非常に攻撃力が高い代わりに、狙いを定めるのが難しく、使いどころが難しいという欠点も持っている魔法だ。


「たしかにこの魔法は狙いがぶれやすい。だがそっちが一歩も動かないなら、外れることはないだろうさ!」


「たしかにそうです。ですがそれはこちらも想定内です! 戻ってフェンリル! ガトリング・フルバースト!」


 リュカは8枚全てのフェンリルを自身の正面に引き戻すと、リュカの持つ膨大な魔力を注ぎ込んで、猛烈な連射で魔力砲撃を撃ち込んだ!


 巨大な炎の獅子の突進を、リュカの連射砲撃が迎撃する。

 リュカの全勝を支えてきた、これが勝利の方程式だ!

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