第35話:吉良君の告白!

あまりの出来事に、みんな頭が追い付いていないみたい。


それでも、視線だけはユリアちゃんに集まってる。

ちょっとユリアちゃんが可哀想ね。


みんなの視線を一手に受けているユリアちゃんは、居たたまれないのかオリバー先生の後ろでモジモジしていたけれど、意を決したように前へと進み出た。


「さ、先ほどは、取り乱してしまって申し訳なかったですわ!スミスが言うように―――」

「スミス先生、ですよ。ウィルソンさん?」

ユリアちゃんの言葉を、わざとらし咳払いと共にオリバー先生が遮る。


(今ウィルソンさん、オリバー先生のこと呼び捨てした。2人はどういう関係なんだろうね、クー。オリバー先生も、さっきウィルソンさんを『お嬢様』って言ってたし)


確かにそうね。まぁ、もしかしたらその辺も後で分かるかもしれないわよ?


(だったらいいけど)


「ス、スミス先生が言うように、ワタクシは日本の文化に興味がありますの。お婆様からも先ほどのような態度はレディーとして『はしたない』と、何度も言われておりましたのに・・・」


そう言って耳まで真っ赤にして俯くユリアちゃん。あらやだ可愛い。


(オッサンかよ!)

失礼ね。なんだか娘を見る母のような気持ちが湧いちゃっただけよ。


(年齢差的にはそれこそおばあちゃんだろうけどね)

うるわいわよ、心太!!


(クーには言われたくないけどね)

まったく。口の減らない。


私と心太が声なき言い争いをしていると、突然部屋に笑い声が響き渡った。


「イィーッッヒッッヒ。ウィルソン女史、良いものを見せていただきました」

吉良くんね。


(おぉ、すんごい特徴的な笑い方。魔法使いっていうか、もはや魔女だな)


「き、吉良」

ユリアちゃん、思いっきり吉良君を睨んでるわね。

まぁ、気持ちは分かるけど。


「あぁ、失敬。気を悪くしないでいただきたい。私は決して、ウィルソン女史を馬鹿にしているわけではないのですよ」

「だ、だったらなんなのですわ!そんな笑い方して、馬鹿にしている以外にあるわけがないんですわ!」


「いや、誠に申し訳ない。この笑い方は癖でして。馬鹿にしているわけではないのです。むしろ私は、嬉しいのですよ。同志がいると思うと」

「ど、同志、ですって?」


「えぇ。まぁ可能性でしかないのですが・・・忍者で興奮したウィルソン女史。あなた、漫画に興味はありませんか?」

「MA、MANGA!ジャパニーズ文化の象徴とも言えるMANGA!興味がないわけがありませんわ!」


(いや、漫画が日本文化の象徴になっちゃったよ!)


「やはり、私の思った通りでしたか。ウィルソン女史。私のオススメのコレクション、あなたのような人にこそ読んでいただきたい。良ければ改めて、私と友達になりませんかな?」

吉良君は、そう言ってユリアちゃんへと手を差し出した。


その手に自身の手を伸ばしたユリアちゃんだったけれど、それを止めて吉良君を睨みつける。


「MANGAには興味があるけれど、それでもワタクシ、吉良のこれまでの悪行を許すつもりはありませんわ。下着泥棒のスケベ野郎なんかと、友達だなんてまっぴらごめんですわ!!」

「あ、それは―――」


「小嵐教諭殿」

ユリアちゃんの言葉に口を挟もうとした心太だったけれど、それを止めたのは吉良君。


「この場にいる人であれば、私は自身の口から、しっかりと説明したいです」

「そうですか。差し出がましいことをしました」


「いえ、小嵐教諭殿のお心遣い、感謝いたします」

そう言って心太へと頭を下げた吉良君は、改めてユリアちゃんと、それから斎藤ちゃんへの視線を向けた。


「ウィルソン女史、そして斎藤教諭殿。これまで、私の魔法が未熟なためにご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

私の魔法『転送』は、これまで全く制御できておりませんでした。

物を転送させようとすれば下着が、自身を転送すれば女子更衣室へと、どうしても『転送』してしまっておりました。しかしこのたび、小嵐教諭殿のご助力もあり、思った通りの『転送』を成功させることができました。まだ1度だけですので、これからもまだまだ迷惑をおかけするかもしれませんが、必ず『転送』を完全に制御してみせます。

なので、もう少しだけ辛抱してはいただけないでしょうか」


「「・・・・・・・・」」


吉良君の言葉にウィルソンさんと斎藤ちゃんは黙っている。


斎藤ちゃんは、『小嵐教諭殿のご助力』のくだりで驚いていたし、そのあとは心太を少しの間睨んでいた。

これはもしかすると、嫉妬、かしら。

まぁそれは良いわ。


対するウィルソンは、少しの間考えたようだけど、それでも吉良君を睨むことを辞めずに言い返した。


「魔法の失敗というならば、致し方ない部分は無いとはいえませんわ。ただ、それでも失敗したときにそんなことになるのは、吉良のやましい心のせいなのですわ!そんな野蛮でいやらしい男とだなんて、友達にはなれませんわ!」

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