第23話:グランドに戻ってきました!

「『飛行』の魔法に使用する物には、使用者が使用するのに適しているのかに応じてスピードが変化することがあるんですわ」

「適している、ですかな?」

ユリアちゃんの言葉に、吉良君が応える。


「話に入ってこないでくださいませんこと?スケベ野郎」

「あれ!?今私の飛行のスピードについての話じゃなかったですっけ!?」


あら、吉良君もなかなかツッコむじゃない。

心太も負けてられないわね?


(いや、そこに張り合うつもりないからね?っとそれよりも)

「ウィルソンさん、良ければ続きをお願いします」

心太はユリアちゃんに続きを促した。


「ええと。例えばそこのスケベ野郎。以前は小学校の教科書を使っていたと言ってましたわね?」

「はい、その通りです」


「話しかけないでもらえるかしら?スケベ野郎」

「いやいまウィルソン女史から話しかけてきましたよね!?」


「あの、ウィルソンさん、話が全然進まないのですが」

あら、心太が優しくツッコんでいるわね。


「これはごめんなさい。とにかく、スケベ野郎は中学3年生なのにも関わらず、小学生時代の教科書を使っていた。学年に対して使用する教科書が適していなかったために、スピードが出なかったんですわ」

「なるほど。確かに、スピードが出始めたのは中学の教科書を飛行に使い始めてからでしたな」


「独り言ならよそでやってもらえる?スケベ野郎」


「いやもうそのやり取りいいから!!」

あら、ついに心太がユリアちゃんにツッコんじゃった。


「し、失礼しました・・・」

心太は慌ててユリアちゃんのいるであろう方向へ謝った。


「い、いえ、ワタクシも少し吉良に言いすぎましたわ」

「まぁ、もとはといえば私の魔法のせいですので」


とまぁそんなやり取りをしながらも、一行は街を一周して学校へと戻っていったわ。


ちなみにユリアちゃんと吉良君が夫婦漫才を繰り返している間、犬飼君は全く会話に入ろうとはしていなかったみたい。

ユリアちゃん、明確に犬飼君をいじめていたわけではないという話だったけれど、だからといって昨日の今日ですぐすぐに会話までは難しいわよね。


むしろ、これまでのことが嘘のように犬飼君と仲良くしている吉良君の方が異常なのかしら?

まぁ、それは置いておきましょうか。


中学校のグランドに到着し、魔法使い組が姿隠しを、忍者である心太が忍隠しの術をそれぞれ解除して少し遅れる剛力君を待っていた。

その間に心太は、こっそりと吉良君へ声をかけた。


「吉良君。昨日話していただいた件なのですが・・・」

「小嵐教諭殿。それについては私も考えていました」

吉良君は、心太の言葉に小さく頷いた。


「先ほどのウィルソン女史の反応で、痛感しました。私は女子にとって敵なのだと。さすがにこのままでまずいと思いました。

とはいえ、全員に話すのはまだ抵抗があるのです。なので、ひとまず女性諸君に話をしたいと思っています。

小嵐教諭殿、よろしければ立ち会っていただけないでしょうか?」


「えぇ、そういうことでしたらもちろん。ただし吉良君、無理はしないでくださいね?」

「はい、ありがとうございます」

吉良君が笑顔でそう返していると、遅れて剛力君がグランドへと到着した。


「剛力君。このままではいつまでも他に遅れてしまいます。今一度、飛行道具については考えてみてください」

「いやだからそれは―――」

斎藤ちゃんの言葉に剛力君が言い返そうとしていると、


「おっと、新人君率いるM-2じゃ~ん」

横やりが入った。


心太たちが声のする方へ眼を向けると、そこにいたのはオリバー スミス。

面接のときに忍者の存在を笑った彼ね。


ちなみに彼、「忍者である証拠を見せろ」なんて面接のときに言ってたわね、彼。

その時は心太が、剛力君と同じように『水砲の術』と『乾燥の術』のコンボをお見舞いしちゃったのよね。

忍者を笑われたからって、心太もちょっと大人げなかったと思うけれど、あれはちょっぴりスッキリしたわね。


「あ!オリバー先生!」

スミス先生の登場に、先ほどまで斎藤ちゃんの言葉で若干不機嫌そうだった剛力君の表情が、明るくなったわ。


剛力君のあんな表情、これまでは見たことがないわね。

まぁ、彼とは出会ってまだ2日目なんだけど。


犬飼君の話だと、スミス先生は以前は副担任だったようだから、生徒達とももちろん面識はあるようだけれど。


それでもこれまでの態度と一変して嬉しそうな剛力君の表情。

ちょっと気になるわね。

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