第15話:試してみましょう!

「小嵐教諭殿、時々キャラがブレていませんか?」

「えっと・・・それについては気にしない方向で」


「まぁ、小嵐教諭殿がそうおっしゃるのならばそうしますが」

ブレブレな心太のキャラに戸惑っていた吉良君は、それでもなんとか持ち直して頷いた。


やっぱり、この子本質的に凄く良い子なのね。


「それで小嵐教諭殿、転移と犬飼氏の件を両方解決するとは、どういうことなのでしょうか?

もしかして修行ですか!?

僅か15話にして、修行回に突入なのですか!?」


「いや15話とか言っちゃったよ!じゃなくて!」

相変わらず思いっきりツッコんじゃってる心太は、心を落ち着かせる。


「少し、試してみたいことがあるんです」

「試したいこと?」


「はい。これから吉良君に、私の力を流してみてもいいでしょうか?」

「力を?先程の話に出ていた忍力とかいうやつですか?

まさか、私を忍者に?」


「いえ、忍力ではありません。似たような力ではありますが。

それと、忍力を人に流したところで、忍者になるわけではありません」

「そうなのですか?」


「えぇ。まぁ、そのへんは追い追い説明しますよ。それで、よろしいですか?」

「き、危険はないのですか?」


「ご安心ください。これから行うものは、時々ですが一般の方を対象とされることもあることですから」

「それならば、まぁ」


吉良君の了承を得たところで、心太は腕を上げ、吉良君の方へと手を伸ばして止めた。


「小嵐教諭殿?」

「あぁ、失礼。これからあなたに触れようと思うのですが、その、大丈夫ですか?」


「大丈夫とは?」

「いえ、あなたの恋愛対象は男性とのことですが、いくら私がタイプではないとはいえ、恋愛対象である性別の者に触れられて嫌な想いはしないかと」


「あぁ、そんなことですか。それならばご安心ください。その辺の感覚は、あくまでも中学生男子ですから」

「と、いいますと?」


「このくらいの年齢であれば、タイプであろうとなかろうと、恋愛対象である性別の人から触れられて、嫌な気持ちはしないでしょう?」

「いや冷静っ!」


「というわけで小嵐教諭殿っ!どこへでも触れてくださいっ!!」

「なんかちょっと僕、後悔し始めてるんですけど!?」


その後、少し現場がワチャワチャし始めたけれど、2人ともなんとか落ち着きを取り戻した。


「では、失礼します」

心太はそう言って、吉良君の肩に手を置いた。


(やっぱりこれは・・・くっ、少し抵抗があるな・・・でもこれでっ!)


「くぅっ!」

心太が力を込めると、吉良君が目を閉じて、小さく声を上げた。


「ふぅ。はい、大丈夫です」

そう言って目を開く吉良君。


「なんでしょうか。先程までとは何かが違う。小嵐教諭殿、何をされたのですか?」

「それは、忍者の秘密ということで。それより吉良君、試しに転移をやってみたらどうでしょうか。

そうですね。吉良君の部屋にある物をこちらに転移させてみてください」


「わ、わかりました」

「吉良君。転移の際に、しっかりと対象物をイメージしてみてください」


「イメージ?それならばいつもしてはいるのですが、そこがなかなか・・・いや、いつもよりもイメージできる。これならば―――」


そう言った吉良君の手に、一本の鉛筆が現れたわ。

ご丁寧にしっかりと『吉良』って書いてある鉛筆が。

この子、本当に真面目な子。


「吉良教諭殿っ!出来ました!連続で成功したのは初めてですよっ!これならばもう一度、えいっ!」

そう気合を入れて再度転移を発動させたであろう吉良君の手にあるのは、ブラジャー。


そう、紛うことなき、ブラジャーだった。

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