第13話:談話室でお話しましょう!

ここは私立桜花中学校に隣接された小さな寮。


本来桜花中学校は通学制であり、寮は存在しない。


この寮はあくまでも、とある特殊なクラスのためだけに作られた寮なのである。


そう、魔法使いクラスのための。


その寮の一室に、1人の教師と、それに対面する形で座る1人の生徒がいた。


基本的に、教師も生徒もそれぞれが1人1部屋ずつ与えられており、教師が生徒の部屋を訪れること、またその逆も禁止されている。


いま2人がいるのは、誰もが入ることの出来る談話室の1つである。


(スー、ちょっとうるさいよ)


談話室にいる教師、心太が、せっかく状況を説明してあげている私に文句を言ってくるんですけど。


(はぁ)


心太は心の中でため息をつきつつ、目の前の生徒に目を向ている。


生徒の名は犬飼みさお。心太が担任を務めるクラスの生徒の1人。

赤髪の少年、剛力君達にいじめられている可能性のある子ね。


「そうですか、1年生の頃から」

心太は犬飼君のこれまでの話を聞いて、呟いた。


担任となったこの日から寮に入ることになった心太と私が寮を散策していて、犬飼を見かけたの。

それで心太が犬飼君に声をかけてこの部屋へといざない、剛力君達とのこれまでの関係を聞いてみたっていうわけ。


犬飼君の話によると、剛力君達からは1年生の頃から今日と同じようなことをされていたみたい。

ちなみにだけれど、2年生までは魔法使いのクラスは1つだけだったらしいわ。


今でこそM-1、M-2クラスに別れているけれど、2年生まではMクラスという1つのクラスだったみたい。

しかもM-1クラスになった生徒達はみんな、犬飼君に危害を加えるようなことはなかったそうよ。


どちらかというと、ユリアちゃんや朧ちゃんがように、無関心に近い対応だったみたい。


目立って嫌がらせをしてきていたのが剛力君で、よく言葉の暴力を投げかけてくるのが華ちゃんだったらしいわ。

華ちゃんは、髪の色がコロコロ変わっていたあのギャルっぽい子ね。


吉良君も以前はユリアちゃんたちみたいに無関心だったようなのだけれど、クラスが別れてから少し嫌味を言うようになったんだそうよ。


ちなみにだけれど、クラス分けした際にその説明はなかったみたい。

説明が無かったこともそうだけれど、このクラス分けには疑問を感じるわね。


ただでさえ突然のクラス分けだったようなのに、わざわざ犬飼君と剛力君達を何故同じクラスにしたのかしら?

このクラス分けには、犬飼君の件は関係ないのかもしれないわね。


そのあたり、斎藤ちゃんは理由を知っているのかしら?

まぁ、心太が聞いても教えてくれないだろうけど。


(スー、さっきからうるさいんですけどっ!!)


あら、心太に怒られちゃったわ。


「犬飼君。辛いことを話させて申し訳ありませんでした。

もしなにかあったら、すぐに私に連絡してください」

心太が優しくそう言うと、犬飼君は小さく頷いた。


「は、はい。あの、ありが―――」

犬飼君がそう言っていると突然、この談話室に来訪者が現れた。


そう、入ってきたのではなく、現れたの。


「ほっ。よかった、今回は女子風呂ではなかったみたいです。

おや、小嵐教諭殿と―――っ!?」

突然現れた吉良君が、犬飼君を見て言葉を止める。


「お話中だったみたいですね。ではこれで―――」

「あっ、あのっ!僕はこれで失礼しますっ!!」

吉良君の言葉を遮るようにそう叫んだ犬飼君は、そのまま談話室から逃げるように出て行っちゃった。


「吉良君ですか。突然現れるなんて、びっくりしますね」

心太はそう言いながら、吉良君へと話しかけた。

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