『喰らいやがれ、二十年。』 真野魚尾さん 

〇作品 『喰らいやがれ、二十年。』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330655987926428

 

〇作者 真野魚尾さん


【ジャンル】

 恋愛


【作品の状態】

 3,000字の短編・完結済。(本編以外の解説付きです)


【セルフレイティング】

 なし。


【作品の種類】

 BL作品です。


【作品を見つけた経緯】

 作者さんがよくこちらに訪問して来てくださっていたのもあり、どんな作品を書いていらっしゃるのだろうとこっそり訪ねてみました。そのとき見つけたのがこちらの作品です。


【ざっくりと内容説明】

 バーで夢見る、主人公の「俺」が選択する未来のお話。


【私の解釈について】

 これはあくまで私の考えと好みの問題なんですけど、「(代償の有無は関係なく)あったことがなかったことになる」という内容のものは、私は基本的に得意ではありません。理由はここでは必要ないので省略します。

 誤解されないように念のため説明をいたしますと、そういう話を否定しているわけではありません。

 読み手が何かを選択するときに「あったことがなかったことになった」話を読んで参考になるかもしれませんし、作品そのものを読んだあとの読後感が好みという方もいると思います。ですから、これは単に私の好みの問題ですので、あまり気になさらないでください。

 では、そういう作品でありながら、何故今回取り上げたのかといいますと、時折、すんなりとまではいかなくても、折り合いが付けられる部分がある場合があるんですね。この作品は今のところ(というのも、私の場合読むたびにその考え方が変わることもあるので、えて「今のところ」としています)ちょうどそれに当たっていたため感想文を書いてみました。


【感想】

 不思議な感じのお話です。

 バーという場所もそうなのですが、女性のバーテンとの会話も不思議な感じで、どうなっていくんだろう……というふうに読者に思わせつつ、お話へといざないます。


「俺」こと「結城ゆうき尋登ひろと」は、あるバンドのメンバーの一人で、ギターボーカルを担当していました。ですが何かしらの問題があり、二十年前に解散していたのです。

 メディアに出ていたのも十年前まで。そのため、自分のことは忘れ去られていたと思っていたところに、バーテンの女性が「俺」が「結城ゆうき尋登ひろと」であることを言い当てるのです。


 さらに彼女は「俺」の触られたくない部分にも触れてきます。どうやらバンドを解散したことによって「俺」はメンバーの一人である「美作みまさかれん」を、うしなってしまったというのです。美作は「俺」にとって、公私共に大切な人でした。


「俺」はバーテンの女性の話に自身の感情をあらわにしながら、最終的にしんみりした雰囲気になって「XYZ」を頼みます。すると次に「俺」が目を覚ましたときに美作がいて、このあと二人はどうなったのか……——というのが、このお話です。


 この作品は別途作者さんの解説が付いています。

 タイトルに疑問を持っていた方は、作品を読み終えたあとに解説をお読みになるとその意味も分かることでしょう。それが読み手にとってどう影響するのか人によって違うと思いますが、その人それぞれの楽しみ方があるのではないかなと思います。


 この作品で特に注目したいのは登場人物たちの会話です。

 何かが起きそうな予感がするバーテンとの話。

 そして、結城と美作の甘いけれどどこか苦みがにじむような会話。特に恋人同士の会話は柔らかく雰囲気があって、二人のハッピーエンドを、多くの読者が望むのではないかなと思います。


 また読んでいると、結城がどこまでも美作に対して一途であるのが感じ取れることでしょう。そこから何となく「お前がいればそれでいい」と思っているような気がしました。言い換えれば、結城は美作さえいればどんな生活だろうといいと構わないと思っていたのかなと。

 一方の美作も結城のことを大切に思っているのがひしひしと伝わってきますが、彼の中には結城とは別に「大切な人だからこそ重荷になりたくない」とか「才能の芽をつぶしたくない」という感情があるなと思いました。


 この作品はどういう解釈をするにせよ、「結城が美作のほしい回答を答えられるか」というところが問われているのかなと思います。そしてそれこそが彼らにとってのベストな回答なのかなと思いながら読みました。


 さて、最後はどうなるのか。気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。


 今日は『喰らいやがれ、二十年。』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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