第55話 『隣の別荘の家政婦』 鐘古こよみさん

〇作品 『隣の別荘の家政婦』

 https://kakuyomu.jp/works/16818093077356225140

 

〇作者 鐘古こよみさん


【ジャンル】

 現代ドラマ


【作品の状態】

 4,500字程度の短編・完結済。


【セルフレイティング】

 なし


【作品を見つけた経緯】

 こよみさんの作品なので、いつもの理由です。


【ざっくりと内容説明】

 別荘地で起きた、とあるホラーミステリー。

 庭の手入れではないですけど、細かいところまで手が行き届いている、完成度の高い作品です。


【こんな人にもおすすめ!】

 ホラーが苦手な人でも大丈夫なお話です👍

 序盤で「え……」となる部分はありますが、そこを乗り越えてもらえると、「そうだったの⁉」と思うような結末が待っています。


【個人的に好みなところ】

 家政婦さんと社長の会話。


【感想】

 キャッチコピーに「本当のジャンルはホラーコメディです」とあるように、このお話は背筋がちょっと冷える部分と、笑ってしまう部分が絶妙に混じり合ったお話になっています。


 ジャンルが「現代ドラマ」となっているのですが、思うにそこまで怖い話ではないと作者さんが判断されたからではないかなと推察します。そのため、「ホラーは苦手で読めないよ!」という方もきっと楽しむことができるでしょう。

 私が証人です。(←ホラー苦手です。笑)


 さて、この物語は二つの視点が入れ代わりになって話が進みます。

 一人は、「FIREファイア」、つまり「早期退職」をした「俺」。彼はサラリーマン生活を早くに切り上げ、平日は別荘地で過ごすことが夢だったようで、どうやらそれが実現したことが冒頭で語られます。


 ある日「俺」が、手に入れた別荘でやりたいことを想像しながら、チェーンソーで庭を整え始めたときのこと。隣の別荘を管理しているという女性が現れます。


 彼女はその別荘の家政婦をしているようなのですが、話しているうちに「チェーンソーを使いたい」ことが分かり、「俺」は彼女にチェーンソーを貸すことになるのです。


 一時間もすると、貸したチェーンソーが戻ってきます。家政婦はお礼を言い、何故か「もしこちらの別荘から誰か来ても、チェーンソーを借りたことを言わないでほしい」と言い残して去ります。理由が分からないままでいた「俺」ですが、戻ってきたチェーンソーからは生臭いにおいがして――?

 ……というのが、このお話の流れです。


 なんだか事件が起きてそうなにおいがぷんぷんしますね! いや、しているのは生臭いにおいですけども……。


 このあとどうなってしまうのでしょうか。

 ですが、続きをちらっとでも話してしまうとつまらないので、以降は内容について書かないでおきます(笑)


『隣の別荘の家政婦』は魅力が沢山ありまして、まず伏線が上手く回収されているのです。読み手がホラー的想像をする要素がお話の中にちりばめられているのですが、あとで何故そう思ったのか「なるほど!」と分かるようになっていて、読んだ方全員が納得いく構成になっていると感じます。


 また、細かいところも作者さんの手が行き届いているなと思います。

 例えば、借りたチェーンソーを返したときに「生臭いにおいがした」という部分も、家政婦の人の事情を上手く組み込んであって、きちんと状況が繋がるようになっていました。さらに、あまり聞きなれない言葉のことや、チェーンソーを使うときの条件や格好についても、さりげなく情報が入れられていて、形のしっかりとした話になっています。(見るところが細かくてすみません 笑)


 早期リタイアした「俺」には気の毒な話ですが、家政婦の事情を知ることができる皆さんはきっと楽しめると思います。

 ミステリー初心者でもヒントをちゃんと拾えるようになっていますし、文章も読みやすいですから、気になった方はぜひ読んでみてください。


 今日は『隣の別荘の家政婦』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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