第4話江戸時代の老人の話

 働かねば食べていけない江戸時代。

 豊かではない。粥が贅沢な時代。それなのに足を折って、働けなくなってしまった。

 添木もしてあるが、起き上がることもできなくなってしまった。男で働かなければいけないのに。体が思うように動かない。

 家族に迷惑かけている。わかっているが、体がまだ生きようとしている。

 動けないのに。ただただ申し訳ない。

 はらがすいた。幾日も病気で床にふしてて指先も肋骨も浮き出て骨と皮のよう。

 食べるものも喉を通らずにいたが、家族は暖かく、飲水を飲ませてくれる。


 謝る私に家族は温かい言葉をかけてくれる。

「気にするんじゃないよ。よく働いてくれたものね」

 

 仕事で忙しいだろうに必ず優しさをもって接してくれた。

 毎朝、水を飲ませてやり、水が飲めない時には湿らせた布を口元に当ててやって甲斐甲斐しく世話をしていた。

 嫁に、孫に世話になるとはこれほどありがたいことなのか。


「世話になったからねぇ」


 済まないと言いながら幸せな気分に包まれて、息を引き取った。

「ありがとう」声になったかはわからない。

 家族に伝わっていればいいと思う。

 

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