3章 新たな街、魔法の力と魔法の森
魔術とエルフの街
第18話 新しい街は真夜中から
1節 エルフと魔法の街“ペルニジム”
「おーい朝凪起きろー」(矢矧
「んぁ……あー着いたのね」(朝凪
「早くしないと発車しちゃうから早くしろ」(矢矧
「へーい」(朝凪
僕は渋々起きて後部に連結された貨物車へ向かい、係員の人にドアを開けてもらい車を出した。人が乗り降りする乗客プラットフォームの反対側、貨物プラットフォームだ。このプラットフォームに、僕と同じように車を持ってきた人や、
“
そして僕の車は、検閲所のような所へ行くよう案内され、貨物室の中を調べられた。もちろん変なものは入っていないので、通された。そして、駅前の駐車場のような所で待っていると、みんなが気づいてこっちへやってきた。
2節 新しい街に来て最初にやることは宿探し
「とりあえず車持ってくのもあれだし歩きで探すか」
「だなあ」
僕たちは車を出て歩き出した。時刻はすでに午後8時。辺りはすっかり暗くなり、夜の街になっている。
この街は夜でもすごく綺麗だ。街灯はほのかに光る魔宝石で光っていて、道行く人々も、おとぎ話で聞くような僕らのエルフのイメージそっくりそのままで、異民族を目の当たりした感覚は不思議だった。
しばらく歩くと宿屋があった。もう夜なので泊まりたい。テントはまだしも車中泊は場所が無いので勘弁だ。店に入って値段を聞いてみる。
「すいません。ここは1人で何ヘレトですか?」
「ここは1人500ヘレトです」
「ありがとうございます」
500へレト×5人で2500へレト。クラーマーさんから貰ったうちの8分の1なのでまあまあ痛い。8分の1と言うと割と少なさそうに見えるが意外と多い。が、正直まだお金を使うことはほとんどないので5人分払って泊めてもらう。5人用の部屋はけっこう広くて、すごくオシャレな部屋だった。
「すごーい!広いしおしゃれだしベッドもふかふか!」
「こんな部屋元の世界でもあまりないかもな」
「すごいねーほんと」
「ビレノートの時と同じく、素敵ですね」
そんな話をしながら荷物を下ろしてベッドにダイブしてみる。流石に元の世界のような感じではないが、それでもテントで使っている寝袋よりはすごく柔らかくて肌触りも良い。ビレノートの宿屋に負けず劣らずの快適さだ。しばらく休んでいると、店員に呼ばれたので夕飯を食べに行くことにした。夕飯も豪華で、パンに肉、それに果物やスープもあった。味もとても美味しく、疲れも全部吹き飛んでしまった。
食べ終わって部屋に戻ると、僕たちは少し雑談をして、それから明かりを消してベッドに入った。ベットに入ると、すぐに眠気が襲ってきて深い眠りについた。
3節 朝起きたらまず朝ご飯!
「おーい朝凪ーおーきーろー」(如月
如月に起こされた。しょうがないので起きる。
「うへぇーい」(朝凪
「坂田くんはなんでそんなに朝が弱いんですか?」(時雨
質問が飛んできた。
「つい1週間前くらいまでは夜更かししない日の方が少なかったからかな」(朝凪
「よく今の今まで生きてましたね」(時雨
鋭い返しをされた。
「褒め言葉として受け取っとくわ」(朝凪
朝食は、夜ご飯よりは簡単なものだったが、それでもパンと魚、サラダ、スープだ。普通に美味しい。
「……私の作る料理も美味しいですか?」
突然時雨が睦月に聞いている。たぶん嫉妬している。
「もちろん時雨が作る料理も美味しいよ。こういう料理と違って、家庭的で、温かみ
がある。し、優しい味がしておかわりがあるなら欲しくなれる」
「わかる!時雨ちゃんの料理も食べれることならたくさん食べたい!」
「ありがとうございます……」
時雨は嬉しそうに、スプーンで掬っているスープの具を食べた。
しばらくして食べ終わり、僕らはチェックアウトして宿を出た。
4節 朝の街
「それじゃあどうしようか」
「どうしようなー……」
「とりあえず街を回ろうぜ」
「オッケー」
この街は夜の時だと魔宝石のランタンくらいしか魔法が使われてそうなものはなかったが、それだけでなく、オシャレな街並みに綺麗な自然、そして魔法が普通に使われていた。
昨日の夜見た街頭は明かりだけしか見えなかったが、とても細かくデザインされているのがよくわかる。公園へ行ってみると噴水があり、その噴水は青い水の宝石を使
い水を制御しているようだった。
公園にある大木の枝には様々な宝石がぶら下がっていて、幹を削ったり横に木の足場をつけたりしてツリーハウスのようになっている。そこで子供たちが木を登り降りして遊んでいた。
もうしばらく街を散策していると、川の音がする場所へ辿り着いた。
音のなる方へ行ってみると、川があり、その川に大きな橋がかかっていて、その先には商店街があった。
そこからめちゃくちゃ美味しそうな匂いがするので行ってみる。
街にはパン屋や、野菜屋のような食べ物関係の店もあれば、雑貨屋や小物店のような店もあり、中には武器屋や魔法店なんてのもある。
ウィンドウショッピングするだけでもとても楽しい。
異世界の植物は割と元の世界と同じようなものもあって面白い。
雑貨屋には食器だったり花瓶だったりなどの生活雑貨もあれば、綺麗なガラスや魔宝石の細工も売っていた。
武器屋に行けば
本当に異世界に旅行しに来たようである。
まあ旅行しに “きたよう” というよりは “している” のだが。
「それにしてもだいぶ広いな」
「だね。歩いてるだけでもすごい楽しい」
「次どこ行く?時間なら山ほどあるよ」
「魔法店とか面白そうだし行ってみたい!」
「俺も魔法は気になるな」
「じゃあ魔法店へ行ってみよー」
5節 魔法店とまさかの出会い
魔法店へ行ってみる。中へ入ると魔法の杖や道具がたくさん置いてあり、店員もいかにも魔術師らしい服装で、とても不思議な雰囲気が漂っている。その店員とは別の店員が、時雨と話していた。
「あなたは魔法を使ったことはあるのですか?」
「いえ……私はどんなものが売っているのか気になってこのお店に入っただけなので」
「では、魔法をここの店長に教えてもらいませんか?」
「え!?私が!?」
『えぇ!?』
その店員曰く、時雨からはかなり強い魔力が感じられるのだそう。確かに街中を歩いている時ほとんどの人が時雨の方を向いていた。単純に容姿がいいからだろうとみんな思っていたのだが、どうやらそれだけではなかったようだ。
「この店の店長は有名な魔法使いで、この街では有名人なんです」
そういうとその店員は、カウンターの奥に消えた。数分待った後、さっきの店員がただならぬオーラを放つ老いた男を連れて戻ってきた。
「この人がこの店の店長です」
「どうも。この店の店長のランドルフです」
ランドルフと名乗るその男は、魔法なんか全くわからない僕でもわかるような強いオーラを放っていた。ランドルフは時雨の各所を観察した。
「赤い目に真っ黒の髪……魔力を持つ人によくみる特徴だ。それに確かに子供にし
てはだいぶ強い魔力も出ている」
「そ、そんなに魔力が感じ取れるんですか?」
「あぁ。早速森へ行って練習を始めよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます