第13話
アラヤダ長いわ
────────────────────
『まずは一人で行くの禁止ね』
流れが悪く取られたタイムアウト。
今回の大会では攻撃防衛で一回ずつ、12:12からの二本先取の延長戦で更に一回取ることができるため、前半も終わりに近づいてきた今、遠慮なく使っていくことにしたらしい。
『今回ラウンドを取れてない要因が各個撃破されていることだ。ラークしているFaiceはまぁしょうがないといえばそうなんだけど、途中ミッドでRyukaがワンピック取られたときに誰も交換ができない位置だったのだけ気になったかな』
『悪い、いつもの癖で前目に行ってたけど今回は2ブレ構成だもんな。先頭はMythsかRiv4l、二人がいないなら複数で行くことにする』
『そうだね、それさえ意識できればもう少し立ち回りやすくなると思うよ。あとGhostにビビりすぎないこと。彼も強いけど普通に二人以上で同時に戦ったら勝てるから。気引き締めて残り取ってこう』
『『『『「了解!」』』』』
戦術的な話というよりは連携やメンタル的な話に時間を使ったタイムアウトだったけれど、流石というべきかみんな動きが変わっていた。
最初のエリアの取り合い。俺達はラークのFaiceさんを残してミッドを全員で取りに行く。
ミッドを確保した直後、MythsとRyukaさんを残して俺とValkさんはFaiceさんに合流。A側のメイン通路を
今回ピックの関係上サーチャーを使っているRyukaさんがサイトに侵入する合図を出す。
『リコンで行くぞ!3、2、1、Go!』
俺とMythsが二方向からサイト内にブリンクイン。ブリンクの最中に視界に入った敵もマップに映るため、これで二つの死角を潰すことができた。
ブリンクインしたあとはサイト内にある障害物の裏を確認していく。敵が一人いたがMythsがそのまま倒し、爆弾設置までスムーズに行う。今までと比べてだいぶ完璧に近い。
勿論このやり方を続けるようでは相手に対策を取られてしまうが、タイムアウト前後で流れが良くなったことだけは間違いなかった。
その後も流れをそのままにCW優位でゲームが進む。攻撃側を6:6で折り返し、防衛側。最初のピストルとセカンドラウンドを勝ち取り、サードラウンド終了時には8:7とスコアを盛り返した。そこからも俺達の流れは続き───
『ミッドにモクきた!抜け見えないからA挟み注意かも』
「Myths、フラッシュ投げるから飛び出すか?」
『Aメインで二人映ったから、MythsとRiv4l二人とも出てもいいぞ』
「了解!3.2.1…………ッ!おっけーナイス!」
俺とMyths二人で飛びだしてキルを取ったり、
『……サイト内敵入った。一人やった………二人、三人やった』
『守護神覚醒きたか?!』
『四人………ごめんラストロー』
『十分十分!強すぎや!……よし!ナイスや!』
Faiceさんが無双したりといろいろな出来事があったが、ついにスコアは12:10。俺達のマッチポイントだ。
『あと一本、気を引き締めて行こう』
『『『「了解」』』』
ラウンドの始まりは静か。俺達は1.2.2の配置でA、ミッド、Bを守る。
「ウルト使います」
〈
配置を変えてA側に来ていた俺はオリオンのウルトを起動する。ウルトの起動音声がアナウンスされ両チームに届く。
オリオンウルトはR.I.F.L.E.という名前のいわば最強格のSRを使うことができるものだ。最初は100ダメージしか入らずヘッドショットをするか敵が削れていないと倒すことができないが、そのSRで一人倒すごとに威力が30ずつ上がり三人目からは胴体、最終的にはどこに当てても倒すことができるようになる。
そこだけ聞くと弱いと思うかもしれないが、一番の特徴はこのSR、スコープを覗いているときはフラッシュが効かず、サーモスコープのためスモークも透けてみることができるのだ。それ故これは最強格のウルトの一つとされている。
俺はそのSRを構え、Aのメイン側を見る。どうやらミッドやBで敵の反応が確認できたらしいが、俺はマップの確認すらしなかった。
そっちは寄るまでみんなが守りきってくれる。その信頼だけを胸にスコープを覗き続けた。
サーモスコープ特有のそこに何も存在していないような灰色が段々と深くなっていく。
完全な集中状態。ディスプレイの外、実際の景色すら灰色になっていくようだった。
一瞬赤い色が映った。その瞬間に俺の指は反射的に獲物を撃ち抜かんと動き出す。
炸裂する発砲音。突き進む純白の弾丸。
そして吹き飛ぶ赤い影。
スコープの左にある弾数カウントランプが一つ消灯し、右の強化段階カウントランプが一つ点灯する。SRの白いボディにも薄く緑の文様が浮かんだ。
「一人やった。場所変えます」
一度味方がウルトで倒された通路は敵も警戒するだろう。俺はすぐさまブリンクを使い場所を変える。
次はAヘブンから繋がるミッドの入り口。相手はスモークでそこを塞いでいたが、まだ俺がAサイトにいると思い込んで油断しているようだった。
(ブリンクが功を奏したな)
ゆっくりと頭を狙って引き金を引く。ランプの点灯が一つ入れ替わった。
『B入ってきたで!…またこいつか!すまん!』
『…ごめんアフィリアがロー』
Bを守っていた二人がやられる。サイトは取られたと見ていい。
『サイトは爆弾設置させてからリテイクするぞ!タイミングは俺のフラッシュとRiv4lのフラッシュで!』
『了解、ブリンクして飛び込むね』
『フラッシュいくぞ、せーの!』
Mythsがサイトに飛び込む。マップに一人映ったが、そこは俺が見える位置だ。
ワンダウン。カウントが進む。
『ナイスRiv4l!ん?敵いないんだけど……メインまで引いたかも?』
『おっけーCTから俺も入って解除……?!』
Ryukaさんがダウン。ログでは倒したのが
『CTコルト!抜けてるわ』
『了解。Riv4l、一緒にCT倒しに行こう』
「了解、ウルトのカウント溜まってきてるし後から出てカバーする」
Mythsの使うアフィリアがCTに入った直後、その翼で飛び上がる。翼人であるアフィリアの強み───三次元的な動きが敵の注意をしっかりと引きつけていた。
上を向いてしまった敵を後から出た俺が撃ち抜く。
ダウン。残りはあと一人。
ログにはツールドの文字。
…………ツールド?
『?!……ごめんやられた!』
Mythsがやられた。恐らくステップの内一つをサイトにエントリーする際に使って残りの一つをRyukaさんを倒してすぐに使ったのだろう。
サイト内リテイクで中に居るだろうMythsに見つからないよう隠れつつすれ違った?
そんなことを考えている間も時間は進む。
敵は追撃してこないようだったが、ログから俺もCTにいたというのは割れている。立ち回りやハイドで時間を稼がれるとクリアリングに時間がかかり、爆弾の解除が間に合わない可能性があった。
俺はすぐさまキルで回復したブリンクを使ってサイト内に入る。入り口真横でガン待ちなんてことはなく、サイト内の障害物を利用した立ち回りか障害物裏でのハイドは間違いないだろうという予想がついた。
どちらもケアしていては時間が足りない。俺は立ち回りで裏に回られている可能性などを排除。バックと呼ばれる爆弾の近くの小部屋に居ることに賭けた。
ピピッ───
爆弾の解除音を鳴らす。これで解除してると思いこんで飛び出てきたコルトを撃ち抜くつもりだったのだが、フェイクだというのはバレていたようで全く顔を出さない。
ハイドしている場所が違う?もしくはやっぱり立ち回られている?思考が堂々巡りしそうになる。
────だからこそ俺は敢えて動かず、SRを構え続ける。
俺が本当に解除を通しているかの確認が取れていない状況で、スコアは俺達のマッチポイント。ここで解除を本当に通していた場合、相手は負けることになる。いくらBO3といえど確認しに来ないわけにはいかないだろう。
ピッピッピッピッ……………
タイマーが加速し、爆発が近づく。
俺がもし解除を通していたらそれが完了する直前───────
来た!!
──────ダァン!
〈ジェノサイド!!!〉
〈ディフェンダー側の勝利です〉
「っしゃああぁ!!!!」
寄ってきたみんなに背中を叩かれながらも画面を確認する。表示されているスコアボードには間違いなく13:10の文字が光っていた。
────────────────────
Tips.スキルとウルト
このゲームではスキルとウルトというキャラの固有能力がが存在している。
スキルは上限回数まで使うと準備フェーズで購入しないと再使用ができない“回数固定型スキル”とキルや時間によって回復する“回数復活型スキル”がある。キャラによって再使用可能になるための条件は変わるが、基本的にブレイバーがキル、他のロールは時間で回復する。
ウルトはキルとデス、爆弾の設置と解除によって発動するためのコストが緩和される、いわゆる必殺技。物によるが、平均的に1試合で大体1〜3回しか使えないため、結構貴重。発動するタイミングはシビアだがその分圧倒的に盤面を有利にできる。コストは低コスト、中コスト、高コストと大まかに区分けされており、キャラによって違う。コストが高いものほど強い影響力を持つ。
────────────────────
BO3ですが、今回描写するのは一戦分にしときます。次回はスコアボードを見たファンたちの掲示板回です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます