FA to CHAMPION 〜1つのクリップが世界を変える〜

weak_mode

第1話

 本作品はフィクションです。実際の人物や団体とは一切関係ありません。

 ないったらないのです。

(2023/07/08 LexとRiv4lの互いの呼び方を変更しました)

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 5対5タクティクスFPS───ViX。


 無料でできる手軽さと、その戦略性の高さから世界中で一躍人気を博しているいわゆる爆弾設置系FPSである。


 ViXは今や最も盛り上がっているゲームとされており、世界大会では数億の規模で資金が動いているという噂すらあるまさしく今一番アツいゲームの一つだ。





 LFT Riv4l:

【FA】 ViX 【LFT】

 Role: 全て

 S4ランク122位, S5ランク90位, S6ランク62位。少しでも興味を持っていただけたチーム様や企業様があれば DMにご連絡ください。





 そんなアツいゲームと裏腹に、沈んだ面持ちを浮かべてスマホに映るツブヤキッターの画面に大きくため息を吐く青年が居た。彼は乱雑な手つきで電源を切ると、横にあったベッドに体を投げだした。


「はぁ……」


 今日もDMは来ず、項垂れる。

 これが俺、神谷柊真しゅうまの現在の日常である。


 俺は数ヶ月前までプロゲーマーとして活動をしていた。高校は出ておけ、という親の一声で学業と兼業し、その中でも自分はかなりの努力をしていたと自負している。


 日本予選で勝つために週2回のスクリム。それが終わったら深夜までランクに潜り、朝7時からは学校に向かう。スクリムがない日はランクを回しまくり、マッチング時間に世界中のプロの配信を見て適切なスキルや立ち回りを勉強する。


 慌ただしく大変な日々だったが、あの頃は間違いなく充実していた。


 だがそんな日々も長くは続かなかった。


 俺が所属していたチーム、RubyFoxが資金難で解散することになったのだ。


 日本の予選ですら1回戦止まりのRFでは赤字のほうが圧倒的に多く、所属していた選手は俺を含めそれぞれの道を探すことになる。


 俺は昔から世界で戦う自分を夢見て戦っていた。だからこそ、ここで辞めるわけにもいかないとツブヤキッターでFAを出したのだが……。


「まぁそうだよなぁ……」


 投稿してから数ヶ月、未だ音沙汰は無い。


「しゃあない。切り替えて今日もランク潜るか」


 いつまでもクヨクヨなんてしてられないと俺はパソコンを起動し、ViXを立ち上げる。


 ここで立ち止まってるわけにはいかない。もっと実力があればチーム勧誘が来るかもしれないし。


 表示されたゲーム画面にはいくつものUIが出ているが、その中でも特に目立つフレンドの欄。そこには数人のフレンドのゲーム中表記があった。


「………お、Lexマッチ待機中じゃん。誘ってみるか」


 招待を飛ばして数秒後、フレンドの欄に載っていたLexがすぐさまパーティーに参加してくる。どうやら既にReadyのボタンも押している模様。早すぎるだろ。



『Lex:いくぞ』



 左下のチャット欄に表示された言葉は端的だったが並々ならぬやる気が感じられる。


 高ランク帯でのソロプレイはゲームの性質上色々と戦い方が難しいことに加え、マッチメイキングの時間も長くなるのだ。Lexも柊真もそのことは身に沁みて理解している。


 まぁだからといって二人ならばマッチメイキングも一瞬かと言われると、そうでは無いのだが。



『Riv4l:なぁLex。FAしてから一向に連絡が来ないんだけどどうすればいいと思う?』



 俺の打ったチャットが左下に表示される。

 いつもなら海外のプロや国内のプロの配信や切り抜き、動画を見て立ち回りなどの勉強をするこの時間。だけど今回はどうにもやる気が起きず、Lexに話を振ることにした。


 内容は先程確認したツブヤキッターの話。あまりにも来ないDMに、実際に今日本の有名チームで戦っているLexの意見を聞かせてほしいと思ったのだ。



『Lex:え?Riv4lならどこのチームも欲しがると思うぞ』

『Lex:まぁ俺はお前と戦いたいからチームに勧誘なんてしないけど』

『Lex:というか、そもそも実力知られてない説がある』

『Lex:ハイライトとかクリップとか上げてないだろ確か』



「え……?」


 告げられた言葉はまさしく盲点。確かにツブヤキッターにはクリップもハイライトも上げていないし、そもそもFA宣言以外全く呟いてすらない。大会も数回しか参加していないし、それも1回戦止まり。2回戦ではチームメイトがインフルエンザにかかって棄権した。実力どころか俺の存在が知られてなくても無理はない。


『Riv4l:盲点だった』

『Riv4l:次の試合からクリップとりま』

『Riv4l:ty』

『Lex:おう、がんばれ』

『Lex:大会で戦えることを楽しみにしてる』


 そう会話した直後、画面に大きくマッチしましたという文字が表示された。


「よしゃ、やったるぞ…『お願いします』」


 気合を入れ直してゲーム内VCを付ける。

 もちろん画面の録画も忘れない。


 こうして俺はこの日した数試合を素人ながら丁寧にまとめてクリップをツブヤキッターに投稿した。


 これがあるプロの目に止まり、そこから今後の俺の運命が変わるなんて知らずに。





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 こっちではシナリオとか伏線とか気にせず、息抜きとして気の赴くままにに書いてみようと思います。


 勿論こっちも不定期更新!(ごめんなさい)

 最初の5話は連続(毎日)で投稿します。


 というかこれどこまで用語出していいんだろう……?今後スモークとかジャンピ、エントリー、サイト、フラッシュとかも説明入れたほうがいいですかね?




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