054 危ない魔物は早めに討伐するのが基本

 エアが冒険者ギルドの買い取りカウンターに戻ると、既に査定は終わっていたが、予想以上に買い取り金額が高かった。

 辺鄙へんぴな立地なので、他の地域ならたくさんいる魔物や素材類が少なく、ドロップ品の素材やマジックアイテムも同じ理由で相場の1.5倍ぐらいで売れた。

 まだあるなら売って欲しい、とは言われたが、エアの食料として残しているものばかりなので、あいにくと売れない。解体して出た素材はもう少し売る。


 裕福な冒険者は解体もギルドに頼むが、エアは下働き雑用歴が長いので、解体技術は結構自信があった。

 ちなみに、片手の時には使えなくなっていた【解体】スキルは、義手を着けた後は復活していたので、スキルを使うとかなり速く解体出来る。


 その後、依頼掲示板を見ると、討伐依頼が結構多かった。山なので魔物も割と多いらしい。

 Bランクの火魔法攻撃をしてくるファイヤーレッドベアまで、街からそう遠くない場所にいるらしい。

 危なくないのか。


「何でレイドクエストにならないんだ?」


 エアはカウンターで受付職員に訊いてみた。

 危ない魔物は早めに討伐するのが基本なので、ギルドが人数を集めて討伐するのがレイドクエストだ。強制依頼になる。


「それが商人護衛で来ている冒険者か療養や休暇で来ている冒険者ばかりなので、怪我するかもしれない他の依頼を受けてくれないのです…」


 なるほど。他の依頼を受けてる最中なら、レイドでも強制出来ないからか。街を襲って来るのなら強制出来ても側にいるだけでは。


「なるほど。確かにそうか。Cランクになったばかりのおれでいいのなら受けるけど」


 のんびりしよう、と言いつつ、結局働くのか、という辺りは苦笑してしまうが、見過ごす方が害が多い。

 Bランク依頼なのでCランクのエアでも受けられる。自分のランクの一つ上までだ。


「よろしいのですか?…他のメンバーの方は…」


「ソロ。これでもダンジョン攻略をしてるんで、火魔法使う魔物対策も大丈夫。山火事にならないようにも気を付けるし」


 討伐よりも、周囲に被害を出さないようにする方が気を使う。

 受付職員はサッとエアの装備や服装をチェックして、問題なさそうだと思ったらしく、普通に受注手続きをしてくれた。

 見くびられないためには、それなりの武器防具はやはり、必要らしい。


 では、食後の運動と行こう、と早速、エアはファイヤーレッドベアが目撃された場所へと向かった。エアジェットブーツを使って空から。


 索敵するまでもなく、魔力と図体がでかいため、ファイヤーレッドベアをすぐ発見する。4mぐらいか。


 火耐性がある毛皮や爪や牙は高く売れるので、なるべく傷付けないよう討伐したい。

 ファイヤーレッドベアがこちらを気にしてないうちに、とエアは一気に距離を詰め、首をねた。


 今、使っているエアのショートソードもダンジョンドロップ品で、かなり切れ味がいのに、魔力を流すと更に岩でも何でも切れるのだ!

 しみじみといい武器は必要である。


 水魔法も使ってさっさと血抜きをしてから収納。

 魔法が使えるようになると、こういった時も便利だった。

 しかし、いくら【解体】スキルがあっても、こんなに大きい魔物の解体は、まずひらけた場所を見付ける所からで面倒だし、討伐証明も必要なので、ギルドに任せよう。

 肉は欲しいので肉だけ返してもらう。

 圧力鍋で煮込んだ熊肉は、さぞ美味しいだろう。

 ランクの高い魔物肉程、美味しいのだ。

 山に来たついでに薬草採取、果実もあったので採り過ぎない程度に収穫してから街に戻った。


 それでも、早過ぎる程早い討伐だったので、ギルド職員に驚かれたワケだが。

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