第10章・貸しマジック収納屋
193 死蔵在庫を有効活用しよう!
時間停止機能が付いたマジックバッグを作るために、エアは色んな容量のマジックバッグをたくさん作った。
容量は多い方がいいに決まっているが、そうなると成功率が低い。
色々と工夫して魔力が定着し易い素材を何度も試行錯誤して変えた所、時間停止機能付きマジックバッグの成功率は二割。
まだまだ練習は必要だが、時間停止じゃないマジックバッグも容量が大きく作れるようになり、それまでに散々練習で作ったたくさんのマジックバッグを収納に放置して置くのももったいない。便利な物は使ってこそ、だろう。
かといって、延々と作り続けたくはないので、死蔵になっているマジックバッグを売らずに貸し出しすることにした。
駆け出し冒険者、駆け出し商人でも手が届くぐらいの価格にしたいし、一番多く死蔵しているので、リュック一つ分ぐらいの低容量のマジックバッグがメインで。
先日、ガラノスの街の外で解体を頼んだ低ランク冒険者たちを見て、大きめの魔物を討伐してもマジックバッグがなくて運べないからこそ、稼ぎが減るのだと、改めて思ったこともあった。
エア自身が貸しマジック収納の店を構えるのは面倒だし、人手も足りないので、冒険者ギルド、商業ギルドに委託することにする。ギルド側も委託料が入り、更に素材や商品を運んで来るようになるのだからメリットだらけだ。
普通は貸し馬、貸し騎獣屋のように高額な保証金を取る所だが、駆け出し冒険者・商人を応援したいのに高額になるのは却下。
かといって、何もないと売り払われるので、【魔法契約】をすることを条件に貸し出すことにした。
だから、レグナルと契約する時、その試作で作った魔法契約用紙を持っていたのである。
魔法契約用紙と専用の魔石を溶かしたインクがあり、借り主にサインをさせて魔力を通すか血判で魔法契約は成立するので、貸しマジック収納オーナーになるエアが立ち会わなくてもいい。当然、ギルドカードのチェックもしてもらう。
魔法契約用紙の作成はまったく難しくないので、錬金術なら量産可能だ。
罰則は…ギルドと話し合って決めた方がいいだろう。ギルドも職員と魔法契約しているハズなので参考になるのだ。
…ということで、エアは貸し出すマジック収納は、練習でたくさん作ったリュック1つ分ぐらいの低容量のポケット型だけじゃなく、リュック3つ分のマジックバッグを新たに多く作って用意し料金を決めた。
魔法契約用紙と魔石インクも用意し、早速、交易の要所であるイルーオの街へ行き、ギルドマスターがちょうどいたので、奥の応接室にて話を持ちかけることにした。
「こんな便利なマジック収納が一日銀貨1枚で貸すというのは、いくら何でも安過ぎだろ」
「そうでもない。ラーヤナ国王都フォボスのダンジョンでたくさんドロップする【ガルーポケット】は知ってるだろ?同じリュック1つ分ぐらいの容量で金貨1枚だ。十回貸し出せば元が取れるということだな。旅費や入手費用や委託料は除外してるけど」
『Cランク冒険者以上』という規定があるフォボスダンジョンなので、入手出来る冒険者も限られているし、隣国のフォボスダンジョンまでの距離はかなりある。馬車なら一ヶ月ぐらいかかるだろう。
「しかし、ラーヤナ国ではたくさんドロップするから低価格になってるのであって、
「その場合も想定済だ。おれには精霊獣たちがいるからな。ちゃんと回収出来る」
エアの能力はあまり教えたくないので、猫型精霊獣のおかげにして置く。
エアの影転移の熟練度が上がり、シヴァのように物を送ったり引き寄せたりする【転送】が使えるようになったので、貸し出すマジック収納に転移ポイントをさり気なく付ければ、遠隔で回収出来るのだ。
強盗には回収だけでは済まさないので、この場合は転送出来なくても同じだが。
また仕組みを知ろうとマジック収納を分解、嫌がらせで壊そうとする輩も出て来るだろうから、その前に負荷がかかったら通知が来るよう設定してある。
所有者登録は基本的になし。低容量のポケット型収納は更に機能を付与するには心もとない素材なので。
「では、貸し出し限定で買い取り不可というのは何とかならんのか?マジックバッグ自体、数が少ないからオークション待ちをしてる奴らも多いんだ」
「ならんな。数少ない連中だけ手に入るより、もっと大勢の人間が借りられるようにした方が奪い合いも減るだろ。それに、商業ギルドの方でも話を持ちかけるから、便乗商売をする連中も出て来ると思うぞ。大事に金庫にしまって置くだけでは金にはならんし、マネされても別に構わん」
マジック収納は他の錬金術師はそう数を作れず、日数もかかってどうしても高額になるだけに、欲をかき過ぎて中々売れないということもある。魔法契約用紙と魔石インクも買うのならコストがかかり過ぎる。
素材を集めるのも自力、必要な物も自作出来るエアだからこそ、利益が出る。
「商業ギルドの方にも?どれだけの数を用意してるんだ?」
「たくさん。見た通り、従来のマジックバッグと作り方が違うからな。作る期間も短縮出来る」
誰が作ったか、どうやって入手しているのかは言わない。うるさくなるので。
冒険者ギルドとしても、マジック収納持ちが増えれば、依頼達成率も上がるし、素材の持ち帰り率も上がるので利益が上がるし、冒険者たちの収入も増えるので冒険者ギルドで扱っている商品購入率も上がるし、でいいこと尽くめなのだ。
商談は成立し、詳細は冒険者ギルド職員で煮詰めるので、後日、また話し合いになった。
商業ギルドの方にも同じように持ちかけ、好感触だったが、入手ルートの詮索がうるさかった。もちろん、エアは何も言わない。
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「快適生活の冒険者~禍福転変~」★999感謝!4(大)コマ漫画(31)更新!
https://kakuyomu.jp/users/goronyan55/news/16818093088437248916
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