今の僕たちの時代
「今日で最後だけど、何か感想は?」
あの日から七日、つまり一週間が経とうとしていた。あと五分で、約束の時間だ。
「私には、人間を理解するには時間が足りな過ぎた。だが、自分なりの“楽しい”は見つけられた気がするな」
あの小説もそこそこ面白かったし、と死神は付け加える。
「とにかく、そろそろ時間だ」
「そういえば僕、どうやってやられんの?」
と聞くと、彼女は懐からナイフを取り出した。刃の部分が少し長くなっている。
「それをいうのもあまりに野暮なものだろう」
彼女の声を聞きながら、時計を見やる。残り一分だった。そして、今の僕たちの時代に想いを馳せる。夜の淡い光に照らされ、自分に守りたいことがあることに今更ながら気がつく。
しかし、どちらかを守らなければいけない時は来なかった。そうして、僕が線路の上に立ったら、真っ先に助けてくれそうな人を考える。
志村はどうだ?志村なら、助けてくれそうだ。田中は?田中は、「お前ならなんとかできるだろう」と言って、見放しそうだな。
くだらないことなのに、噴き出してしまう。口から息が漏れるのと同時に、目からも水が漏れる。
死神は再びナイフを取り出し、構えた。そして、死神はいつものように、抑揚のない声で言った。
「友達を殺さなければならない時、私はどうする?」
口を開こうと思ったが、上手く動かない。体が死に怯えているのだろう。月明かりが死神の右腕を照らす。そこには大きなアザがあった。
「真っ先に私は、自死を選ぶね」
そうして彼女は、なんの躊躇いもなく自分の首を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます