空が黒く染まったので浮気した彼女に復讐する事にしました。
アキノリ@pokkey11.1
第一章 どん底へ叩き落とす
先輩が許しても私は許しません
第1話 私は絶対に許しませんよ?
俺、鍋島勇気(なべしまゆうき)には彼女が居る。
その彼女の名前は田中雪(たなかゆき)。
同級生でクラスメイトの初カノだった。
今日までは、であるが。
俺は用事があって来ていたショッピングモールの中で見知らぬ男と腕を組んで歩いている雪を見つけてから心が真っ黒に染まった。
今日、5月24日、14時。
絶望しかない日と時間になってしまった。
黒の短髪をガシガシ掻きながら踵を返してその場を去る。
何が起こっているのか全く分からない。
ただ戯けたい気分だった。
忘れたい気分だ。
「クソが」
そんな悪態を吐きながら俺は早足でショッピングモールを立ち去る。
それから途中で立ち止まって泣きぼくろのある顔を空に向ける。
何が起こっているんだ。
訳が分からない。
俺がイケメンじゃないから?
それだから浮気されたのだろうか。
だとするなら雪の性格を見抜けなかった俺のせいだな。
考えながら歩き出す。
すると明るい声がした。
「あれ?先輩」
「.....冴島?」
「はい。冴島由紀(さえじまゆき)ですよ〜」
何かビニール袋を持っている。
それはスーパーのビニール袋だ。
俺は?浮かべながらその顔を見る。
そんな顔も?を浮かべて俺を見ていた。
「どうしたんですか?先輩」
「いや。ちょっとな」
「そういえば.....何か浮かない顔ですね」
「浮かない顔をしているかな。俺」
はい。何というか泣いた痕跡まであります、と心配げに言葉を発する冴島。
俺はその事にハッとしながら痕跡を打ち消す様に目を拭う。
すると冴島はビニール袋を揺らしながら寄って来る。
真剣な顔をしていた。
「何かあったんですね?」
「何かって何だよ。俺は何も.....」
「もしかして田中先輩ですか」
「.....!」
俺はビクッとしながらその顔を見る。
茶髪が入り混じった黒髪を近付けてくる。
クリクリした目と。
同じ様にクリクリした髪の毛。
かなりの美少女が目の前に迫りつつあった。
その顔を見ながら、何もないよ、と柔和に答える俺。
だが冴島はそれでもジッと俺を見たまま、嘘ですね、と答えた。
それから俺を真っ直ぐに見る。
もしかして何か大変な事ですか、と言いながら。
「.....大変な事は無いけど」
「それも嘘ですね。何でそんなに嘘ばかり吐くんですか」
「お前に何が分かる」
「私は分かりますよ。だって先輩とかれこれ2年も一緒ですから」
そんな事を言いながら離れて俺を見てくる。
そして、マンションだって同じですから、とも言いながら。
俺はその言葉に黙る。
すると冴島は足元にビニール袋を地面に勢い良くドサッと置いた。
それからその顔をまた近付けてくる。
「教えて下さい。何がありました」
「だから何も無いって」
「2年も一緒に居る人間にそれは通用しません。嘘です」
「お前な」
言葉を荒げる俺。
すると冴島は、信頼されてないんですね。私、と悲しげな顔をした。
それから後退する。
俺はその顔にゆっくり黙る。
それから、すまない、と言う。
そして震える唇を動かしながら、浮気された、と話した。
「.....」
「だから俺は別れようと思って」
「え?別れるだけですか?」
「え?」
何か予想外の言葉を言われた。
俺は顔を上げると.....天候が怪しい事に気が付く。
それから雨が一気に降り出してきた。
傘が無いし濡れてしまう.....。
俺はそんな事を考えたが。
それを気にせずに俺を見上げてくる冴島。
それから何故か笑顔になる。
雨で濡れた顔で。
「うん。田中さんに復讐しましょう。先輩」
「は.....?」
「これ許せませんよ。絶対に。私は我慢出来ないです」
「お前は何を言っている.....!?」
「私は至ってマジメです。私の2年も知り合いとして付き合っている先輩を何だって思っているんですかね?私は止めてもらっても絶対に復讐します」
先輩なら止めるかもですが無駄です。私は田中さんを絶望の渦に叩き落とします。
そう言いながら柔和になる冴島。
俺はその顔をゾッと見る。
何か背筋が寒くなる感覚だ。
「犯罪にならない程度なら良いんですよ。それに犯罪なんて境界線は曖昧ですから。私達を敵に回した事を後悔させてやる」
「.....お前.....」
「先輩はこのままで良いんですか?貴方は負け組で良いんですか?私は嫌だ」
「まあその.....負け組になったつもりは」
「いや。負け組です。私は絶対に許す事は無いです」
いじめられる渦でも良いですし。それか退学でも良いですね。
何なら誰かに病気を移されても良い。
誘い込んで田中さんも相手の人も絶望に叩き落とします、と笑顔になる冴島。
いやちょっと待て。
何でコイツはこんなに怒っているのだ。
それに復讐なら学校中に広めるだけで良いじゃないか、と思った。
冴島に拳を握って向いてみる。
「冴島。学校中にこの噂を広めたら良いんじゃないか」
「いやそれありきたりですね。それやっても良いですけど。でもそれだけじゃダメージが足りない。.....その身にこの苦しみと同じ様にショックを受けて解らせてやらないと意味ないです。私の大切な人を傷付けたんですから」
「いやちょっと待て。さ、サイコパスすぎるぞお前!」
「先輩。ちょっと考えてみて下さい。先輩の飼っていたペットが他人に暴行されて虐待された。嫌ですよね?.....それを考えたら復讐なんて当たり前ですよね」
目からハイライトを消して迫って来る冴島。
楽しくなってきましたね、とまた目は笑わず口角を上げながら俺の手を握る。
大丈夫です。先輩は私が守りますから、と話した。
そして俺を真っ直ぐに見てくる.....。
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