番になるサダメ

２

　「月光ノ楽園」はいわゆるΩバース系の学園オンラインゲームだ。

　主人公をアルファ、ベータ、オメガから選ぶことができ、性別も設定できる。

　最もオーソドックスで人気なのがオメガ×女性。

　オメガは稀な存在だ。人口の１０パーセントに満たない。定期的に発情期があり、特殊なフェロモンをまき散らし、周囲のアルファを凶暴化させるが、「抑制剤」によって抑えることができる。不安定な存在なので社会的な差別が酷い。

　けど「運命の番」と呼ばれる特別なアルファに出会うと、本能のレベルで導かれ、恋に落ちる。うなじを噛むことで正式な番となり、互いにしか発情しなくなる。

　オメガ×女性ルートで行くと、アルファ候補の相手が10人いる。

　攻略対象を選んでスタートするが、皇子様も、騎士も、社長も、アイドルも、SSSランクの冒険者etc...も、正直どうでもいい。

　職業やキャラやルックスがいい人しかゲームにはならないし、みんな歯の浮くセリフしか言わない。けど求めてるのはそこじゃない。

　現実的にそういった人と付き合うと骨が折れるし、人付き合いも面倒だし、やっぱり普通の相手が一番いい。そういう人とシュミレーションしたい。

　私のためだけに存在してる相手から求愛されるほうが、イケメン・高身長・高学歴・高給取りの中の、自分のタイプを選ぶより、何倍も愛されてる気になれる。

　アルファは知能が高く、身体能力に優れ、ゆえに社会的に身分が高く、高給取りが多い。ベータは一般的で、人口の８０パーセントを占める。オメガはマイノリティーであり社会的弱者だ。

　……ふぅ。

　元の世界に残してきた弟と妹が心配だが、いまはどうすることもできない。

　こっちの世界でも私は社会的地位が低い。

　大人しく「月光ノ楽園」を生き抜いてゆこう。