番になるサダメ
空沢 来
第1話
不幸、不平等、理不尽、バイオレンス、世の中は不条理に満ちてる。
私の話は嘘だとあなたは思うかもしれない。でも、本当に私の親は家庭放棄で、弟妹の学費や生活費のため、私は中学生のときから、友達の牛丼屋でバイトさせて貰った。
高校でも続けて、何とか卒業できたけど、就職した会社は最悪で、古くて動作の鈍いパソコンや黄ばんだ電話、タイルの剥げた床、雨漏りのする天井、ひびの入った内壁、ネズミとゴキブリの巣窟であるボロボロの社屋で、退屈してた先輩に事あるごとにいびられ続けた。
それを見かねて営業主任の岩田先輩がフォローしてくれたけど、彼は社内でも人気があったので余計妬まれた。三十歳独身のおじさんだけど、馬鹿なおばさんたちには王子様に見えてるらしい。
4月に入社して2か月、ちょうど7月に歓送迎会があり、妹と弟の面倒を見なくてはならないため一次会で帰ろうとすると、岩田先輩が家まで車で送ってくれた。
それが気に入らなかったんだと思う。
翌週、帰り道で襲われ、危うくレイプされそうになったところを、たまたま営業の帰りに通りがかった岩田先輩が助けてくれた。
ブラウスのボタンが強引にちぎられ、下着も破られてブラが丸見えで。スカートの中、太ももをまさぐられて本当に嫌だった。
そのまま、電車に乗っては帰れないし、家に帰れば二人に心配される。
岩田先輩がペットボトルの甘い飲み物を飲ませてくれた。そのまま眠くなって、気付くと知らないベッドに寝ていた。身体が熱く、彼と二人きりで、親切なことばをかけてくれて。頭を撫でられ、キスされて、舞い上がった。
ことが終わると彼は急に背を向けた。声をかけても反応がないので、腕を絡めると手ひどく振り払われた。
「お前、軽すぎ。ビッチだな」
そう笑って私を見下し、シャワーを浴びるためそそくさと立ち上がった。
賢者タイムだろうと思って、風呂から戻ってきたタイミングで声をかけると、
「話しかけんな」
で、終わり。仕方なくシャワーを浴び、着替えると、
「早くしろよ、追加かかるだろ」
と、せかされたのでとりあえず聞いてみる。
「ねぇ、岩田先輩、私のこと好きなんですか?」
「はぁ? んな訳ねぇだろ。おまえ、イイ身体してんじゃん。……あ、ちなみに写真撮ってあるから、今日のことバラされたくなければまた付き合えよ。どうせ誰にでも股開くんだろ?」
「……最低」
「何だと?」
「いえ、何でもないです」
「最低なのはお前だろ? ヤリマンのくせに」
はぁ。こいつ、ブッ殺したい。
ホテル代は彼が払い、最寄り駅まで送ってくれたけど、どうやって部屋までたどり着いたかよく覚えていない。
弟と妹のことも忘れ、自室に引きこもり、いつもの乙女ゲーム「月光ノ楽園」をプレイし、日付をまたいでもダラダラしてると、プツンと意識が途切れた。
瞬間、スマホから強烈な光が溢れ出し、私は目を瞑る。それは私を包み、目を開けると知らない世界が広がっていた。
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