第300話 戦いが済んで、ライブに戻る
『Dリンクス』の仲間やレグルスと共にタンカーの甲板に上がった。
ヘリコプターが飛び交い、タグボートや海上保安庁の巡視船、海上自衛隊の護衛艦などがタンカーを取り囲んで、あたりは騒がしい。
ミハエルと『ウラジの嵐』のメンバーは『チャーミーハニー』さん達に捕まって連行されていった。
「タカシくん、ありがとう~~、日本政府がロシア新政府に対して素晴らしい交渉材料が手に入ったわ」
鮫島さんは、そう言ってニマニマ笑った。
それは良かったね。
みのりは海を見て、ほうっと息をついた。
「タカシくん、ありがとう、助けにきてくれて、レグルスさんも」
「いいんだよ、気にするな」
「みのりんは俺の推しだからな、もっと良い歌を歌って恩返しをしてくれよ」
「ありがとっ」
そう言って、みのりはレグルスに笑いかけた。
「いやあ、強かったな『バーバ・ヤガー』、何度も駄目かと思ったよ」
「ねえさんも、泥舟も、チアキも、朱雀さんも、くつしたも、助けに来てくれてありがとう、みんなが来た時に、勝ったと思ったよ」
「当然だ、私たちは『Dリンクス』だからなっ」
「ヘリに初めて乗ったよ、結構揺れるよ」
「バウンバウン」
「竜弾はさすがに凄かった、沢山あると良いんだけど、今回限りだね」
「さすがにね」
「やっぱり、『
「ありがとうございます、鏡子さん」
朱雀さんがふんわり笑って言った。
『マリアさん、助かったよ、ありがとう』
『ホワッツマイケル』たちもヘリの第二便で来ていたのか。
仲間と一緒のマリアさんに声を掛けた。
『何でもないわ。みのり、早く帰って歌い直してライブを終わらせましょう』
『そうね、急いで帰ろうよ』
「帰りの足は、鮫島さん」
「優先して出しますよ、早く帰ってライブを終わらせてらっしゃいな」
鮫島さんは大型ヘリに俺達を案内した。
乗るのは『Dリンクス』とマリアさん、あとレグルスだな。
レグルスは【人化】してラオウモードになって乗って来た。
「空飛ぶ機械か、乗るのは初めてだ、わくわくするな」
「するよねえ、レグルスのおっちゃん」
「わはは、おっちゃんか、チアキに限って、その呼び方を許可しようではないか」
「あんがと、おっちゃん」
大人の男性が少し怖いチアキにしては、レグルスには懐くな。
やっぱり正体が竜だと解ってるからだろうか。
「サッチャンは乗らないのか」
「私は自力で飛んで、動画を配信しますよ。同接数が凄い事になってますよ♡ 世界中がタカシくん達を見ていますよ~♡」
「解った、じゃあ、また会場で」
「は~~い♡」
サッチャンはパタパタと羽ばたいてマリエンの方へ飛んでいった。
俺がヘリに乗り込むと後部ハッチが閉められて、ふわりと浮き上がった。
音が凄いな。
窓から、下の方にタンカーが見えた。
ちょっと傾いているけど沈没はしなさそうだね。
ヘリが下りたのは中央公園の駐車場だった。
スタッフに先導されて俺達が会場に戻ると、歓声と拍手が鳴り響いた。
ああ、なんだかスターになった感じだね。
「タカシく~~ん!! 凄かったよ~~!!」
「みのりんも頑張った! 偉いっ!!」
どうやらサッチャンがDチューブに流した動画をステージの大型スクリーンで映してみんなで見ていたようだ。
今のスクリーンには、凱旋する俺達『Dリンクス』と、マリアさん、そしてレグルスが映っていた。
「赤ガチャピン!! かっこ良かったぞ~~!!」
「陛下~~!! 今度乗せてください~~!!」
「デートしましょうよ~~!! 陛下~~!!」
レグルスはニマニマしながら手を振っていた。
「じゃあ、行ってくる、ステージを終わらせるよっ」
「行ってこい、みのり」
「がんばれ~、みのりねえちゃんっ!」
「行ってこいっ」
「がんばって、マリアさんも」
『ありがとう、朱雀、さあ、行こう、ミノリ!』
「行きましょう、初ライブを終わらせましょう!」
「バウバウ!」
みのりとマリアさんが通路を走り、ステージに駆け上がった。
りっちょんと『ウラジの嵐』に邪魔された、『
会場の全員が立ち上がり、歓声を上げた。
みのりはマイクを受け取り、ステージに立った。
「みんなっ! 心配掛けてごめんねっ! でも、タカシ君と『Dリンクス』の仲間、あとレグルス陛下が助けてくれたのっ、悪意のある妨害なんかに私たち『マリア&みのり』は負けませんっ!! では、最後の曲です、『
『世界中で見ている私とミノリのファンのみんな、ありがとう、私たちの新しい歌をプレゼントするわ、楽しんでね』
みのりの歌声と、マリアさんの歌声が溶け合い、鳴り響く。
その歌声は、川崎マリエンで歌われて、Dチューブを通じて世界中に伝わっていく。
全世界で何億人もの人がこの放送を見て、楽しんだ。
ニューヨークの街角で、ハワイの海岸で、北京の目抜き通りで、パリの凱旋門近くで、アフリカの平原のラジオで、ロシアのクレムリンで、世界中の人が、『マリア&みのり』のライブを見て聞いて楽しみ、踊った。
こうして、みのりのデビューライブ、『マリア&みのり』の初ライブは空前の大成功で幕を閉じた。
これから、みのりは世界的なアイドルとして活動していくだろう、迷宮にもなかなか潜れなくなるかもしれない、でも俺は、この日の舞台で輝いていた彼女の姿を忘れる事は無いだろう。
そう、思った。
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