第279話 デビューライブの朝が来た
ガスコンロの魚焼き器に甘塩の切り鮭を三つ入れて、乾燥ワカメを戻して切った豆腐とともに出汁を取った鍋に入れ、味噌を入れる。
「おはよー」
「おはようございまふ」
鏡子ねえさんと寝ぼけチアキがやってきた。
炊飯器からご飯をよそって味噌汁と一緒に座卓に持って行ってもらう。
鏡子ねえさんがよく食べるので炊飯器のご飯がすぐ無くなるな。
チアキがプラの容器から味付けのりを出してそれぞれの席に置いた。
「日本の朝ご飯って感じだなあ」
「たかし兄ちゃんのお味噌汁好きだ」
「かーちゃん直伝だからな」
とはいえそんなに手間は掛けて無いけど、なにげに作りたての味噌汁とかは美味しい。
温め直したり、インスタントだと、ちょっと味が落ちるんだよね。
焼けた鮭を皿に入れて座卓に並べる。
「「「いただきまーす」」」
「お、鮭おいしいな」
「のりのり~」
チアキが小皿にお醤油を入れて海苔を漬けてご飯に巻いて食べている。
魔法瓶から熱いほうじ茶を湯飲みに入れて飲む。
うん、美味しいな。
「今日はマリエンライブだなあ、何時から?」
「十時半から」
「どうやって行くの、バス?」
「いや、リーディングプロモーションさんがマイクロバスで送迎してくれるって」
「おお、良いねえ」
『オーバーザレインボー』と『迷宮ぶっ潰し隊』も一緒に拾ってくれるらしい。
「楽しみだねえ、出ろくつした」
チアキが珠を投げるとくつしたが現れた。
「ばうばう」
「シャケたべる?」
「ばうばうばう」
くつしたはチアキのシャケを半分貰ってわふわふと食べた。
チアキは目を細めてくつしたの首筋をもふもふしている。
「ちゃんと食べろ」
「はーい」
チアキがくつしたに寄りかかったまま、朝ご飯を再開した。
今日は良い天気だな。
野外ライブに最適だ。
楽しい一日になれば良いけど。
「ロシアとりっちょんが来るな」
「来そうだね」
「りっちょんもロシア人も結構目立つから、そこは楽かもしれない」
「見つけたら制圧? 殺しちゃだめなの?」
「外界だからね、殺すと色々と面倒くさい」
「殺した後で、朱雀に【
「どうだろう、最悪その手は有りかもしれないけど、故意にやるのはどうかな」
サッチャンが警察の偉い人を殺した後に【
ピンポーンとドアベルが鳴って泥舟が入ってきた。
足軽スタイルだな。
「おはよう、泥舟、それで行くのか?」
「何があるか解らないからね、タカシもいつもの装備で行くといいよ」
「そうか、まあ、俺たちは配信冒険者だから良いのか」
「一目で『Dリンクス』って解って良いな」
「みのりねえちゃんは先に行ってるのかな」
「みのりは朱雀さんと一緒に別の車で先にマリエン入りだってさ」
朱雀さんはまた峰屋家に泊まっている。
駅前ホテルは解約すべきだと思うのだが。
結構高いのになあ。
泥舟が座卓に付くと鏡子姉さんが湯飲みにほうじ茶を入れ前に出した。
「ありがとう」
泥舟は目を細めてくつしたをモフりながらお茶をすすった。
三人とも食べ終わったので、食器を流しに運び、鏡子姉さんが洗い始めた。
食器洗いは当番制である。
泥舟がケイズパソコンのリモコンでテレビを点けた。
パソコンだけかと思ったらテレビ機能も付いていて便利なのだ。
セットアップは泥舟と鏡子ねえさんがやってくれた。
意外に鏡子ねえさんはパソコンにも詳しかった。
『本日は川崎マリエン前に来ています。今日はあの『ホワッツマイケル』所属の世界の歌姫マリア・カマチョさんと、『Dリンクス』所属の世界で二番目の『
朝のワイドショーのカメラが現在の川崎マリエンを写した。
「わあ、人がいっぱいだ」
「ばうばう」
映像に映し出されたマリエンの外に人がいっぱい群れていた。
『すごい人出ですね、みんなデビューライブのお客さんですか?』
『いえ、一目『Dリンクス』の峰屋みのりさん、通称みのりんを見たくて集まったDアイドルファンが多いみたいです』
なんだかもっさりした男性たちが群れをなして集まっていた。
『みのりん命』とか書かれた横断幕を持っているグループもいる。
『す、凄い人気ですねえ』
『そうでしょう、みのりんさんの所属する『Dリンクス』は最近結成されたDチューバーの配信冒険者パーティで、迷宮の敵を倒したり、ドラゴンを倒したりと、素晴らしい業績を上げて人気が上がってきたパーティなんですよ』
『ニュースで見ましたよ、『ホワッツマイケル』のマイケル氏も破ったと聞きましたね』
『はい、一部では日本の新しいシンボルとして人気が凄い事になっているんです。そのメンバーの一人のデビューライブなので、盛り上がっているんですよ』
ふわあ、なんだか凄い事になっているなあ。
「こいつら切符持ってるのかな?」
「持ってないみたい、会場の外で峰屋さんを一目見たくて集まってるってさ」
「それは、暇だなあ」
鏡子ねえさんがほうじ茶をすすりながらしみじみと言った。
俺も同感だな。
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