第278話 ロビーで介護狩りの仕分けをする

 特にトラブルも無くロビーまで帰ってきた。

 先生方もマリちゃんも強くなっていて安心だね。


 ロビーの応接セットのテーブルに戦利品と魔石を出して仕分けをする。

 鏡子姉さんが居ないので食料品が残っているな。

 先生方とマリちゃんにオークハムが一本ずつあたった。

 装備品とかは、あまり良い物が出てないので換金かな。

 ポーション類は先生方が分けて引き取った。

 聖典が二個、楽譜が一個出た。

 出た聖典は竹宮先生が覚えていた物なので三間堂で売る感じだな。


 宮川先生が戦利品を抱えて換金カウンターに並んだ。


「いつもすまないな、新宮」

「いえいえ、学校の事ですから」


 学校の未来に関する事だから、協力しないとな。

 あと十年したら、Dチューバー養成学校とかもできるだろうし。


 換金カウンターの女悪魔さんに魔石と戦利品を買い取ってもらい、先生方と、マリちゃん、チアキの口座に振り分けた。

 後ろから付いてきた俺たちは無しだ。

 とは言っても、配信料は入るので特に問題は無いね。

 リスナーの皆さんがあってこその『Dリンクス』なんだな。


 ソファーに戻ってきたら、みのりと鏡子ねえさんがやってきていた。


「おつかれ。どう、調子は」

「通しでリハーサルやってきたよー、マリアさんが上手くて凄かった」

「私は暇なんで配信見てた、やっぱり半グレどもは皆殺しにしにいこう」

「そりゃ無理だよ、ねえさん」


 過激な事を言い出すね、このねえさんは。


「今日もよく戦った、さあ、夕飯はどこに行こうか」

「モナリザン!」

「チアキ師匠はモナリザン好きっすね」

「美味しいからっ」

「ばうばう」


 くつしたもモナリザンが好きか。


 そんな話をしていたら、羊角の女悪魔さんが寄ってきた。

 バスケットにビリヤードの玉ぐらいの何かの玉を沢山いれているな。


「みなさま、この珠をどうぞ~」

「何の珠ですか、これ?」


 カエル玉系の大きさだな。


「回収珠で~す」

「回収?」

「はい、死亡したパーティに向けて投げつけると、勝手に悪魔教会まで運んでくれる便利な珠です。これで死体を運んだり触らないで済みますよ」

「へえ……」


 何というか、自動死体回収の珠か。


「蘇生料金とかは?」


 東海林が鋭い質問を投げかけた。


「装備とか手持ちのお金などで蘇生料金はあがなわれます、お金が無かった場合はデモンズクレジットが肩代わりしますよ」


 借金になるのか。

 一人蘇生させるのに、成功だと三百万、二回目なら一千万だ。

 良い商売だな。


「回収させたパーティーの得はなんですか?」

「相手が持っていた装備やお金を全部ゲットできますよ。オプションで装備類を換金して蘇生代金を引いてからもらう事もできます」

「……相手を殺しても、使えますか」


 女悪魔さんはニコッと笑った。


「当然、そういう事もできますね。さあ、タカシさんどうぞどうぞ、人数分差し上げますよ」


 女悪魔さんが『回収の珠』を押しつけてきた。

 確かにこれがあれば他パーティの死体を気軽に回収できるな。

 文無しパーティでも、装備を売り払った分だけはもらえるのか。

 それぞれのパーティーの人数分、回収の珠をもらった。

 俺は収納袋に入れる。


「いいなあ、半グレパーティーを狩って荒稼ぎしょうぜ、タカシ」

「鏡子ねえさん、そういうのはちょっと」

「使ってしまった場合は補充は?」

「ロビーの窓口で配りますよ、迷宮の方に利益が大きいサービスですからね」


 回収が楽になると色々と騒ぎが起きそうだな。

 相手を殺して文無しにすることが気楽にできるのか。


「死傷者を悪魔神殿に運ぶような使い方もできますよ」

「あ、装備を売らないで、自分たちの口座から出す事もできるんですね」

「はい、身内の場合は転送オプションが増えますよ」


 遺体をロビーまで運び上げるのは大変だしな。

 遭難したパーティーの蘇生率が上がるのか。

 悪いことばかりじゃなさそうだ。


 羊角のふわふわ女悪魔さんは一礼して、他のパーティーに声を掛けに行った。


「なかなか、賛否が出そうなサービスだな」

「死傷率がそれだけ高いのでしょう」

「『メロウリンク』を迷宮に食べさせたせいかもな」


 たしかに、あの時、これがあれば……。

 いや、面倒だから食わしていたな。

 色々悪魔さんたちも考えるな。


『新しいサービスだなあ』

『半グレ大戦争が起こりそうだな』

『ああ、殺し合いで一文無しにする競争か』

『殺伐としそうな、そうでも無さそうな』


 『回収の珠』の回収件数が上がらないと解らないな。


「そんな事より、明日のライブだよっ、先生たちも来てくれますよねっ」

「ああ、券をもらったから行かせてもらうよ」

「楽しみね、頑張ってね峰屋さん」

「行くよ、楽しみだなあ」


 先生方も明日のライブに来てくれるのか。

 楽しみだな。





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