第149話 買い物をしていたら奴らと会う

 『オーバーザレインボー』と合流して一緒に電車で川崎へと行く。

 チアキと樹里さんが同じ『盗賊シーフ』だからか仲良くしているな。


「【鍵開け】持ってるっすか、チアキ師匠、今度教えて下さいっす」

「し、師匠だなんて、今度教えてあげるよ」

「『盗賊シーフ』仲間は全然居ないので嬉しいっす」

「わ、私も、あんまりいない」


 二人の会話を藍田さんがニコニコしながら聞いているね。


「チアキ、樹里さんは【気配察知】持ってるぞ」

「ほんと!! 今度コツを教えてっ」

「私もタカシ師匠と鏡子師匠に教わったんで、たいした事無いっすよ」

「『盗賊シーフ』仲間に聞くからいいんだようっ」

「そうですね、じゃあ、今度教えあいしましょうっす」


 仲良しは良いな。


「良いなあ、僕は避けられているお」

「ま、まあ、半グレにロリコンが居たんだろうよ」

「くそうくそう」


 高田くんは世界の理不尽に怒ったようだ。


 川崎駅に着いたので、京急の駅から歩いて地獄門を目指す。


「あら、みのりんよ、鏡子さんもいる」

「『Dリンクス』と『虹超』だわ、今日はレイドかな」

「泥舟くーん、がんばってね~~」


 女子高生に声援を送られる。

 いつまでも慣れ無いなあ。


 エスカレーターに乗ってJRの線路をまたいで複合商業施設に入る。

 今日は平日だけど、配信冒険者姿の奴らが多いね。

 たこ焼き屋も出ている。

 あ、ねえさん買おうとするな。


「いいじゃないか」

「チアキの買い物に参加出来ないぞ」

「そ、それはいかん、また今度な、兄ちゃん」

「あはは、しょうがねえなあ鏡子さんは」


 たこ焼き屋の兄ちゃんは笑ってゆるしてくれた。


 みんなで地獄門をくぐる。

 ちょっとヒンヤリして独特な匂いがするな。


「まずはチアキの防具だ」

「あーしもアドバイスするっす」

「ありがとう、樹里ちゃんっ」

「『盗賊シーフ』仲間っすからねえっ」


 売店に『Dリンクス』と『オーバーザレインボー』が入るとぎゅうぎゅうになるな。


「いらっしゃいませ、あ、タカシさん、今日はなんですか」

「チアキの防具とかを買おうと思って」

「『盗賊シーフ』用の装備ですね」

「小さい子の防具もあるのかおん?」

「ええ、迷宮用品はサイズが自動調整されますから、便利ですよ」

「ああ、それでかあ」


 というか、今日のチアキはわりとひらひらした格好だな。


「迷宮ジャージをまず買うか」

「買うっ、タカシ兄ちゃんと同じのありますかっ」

「ありますよ」


 おお、同じデザインの奴を選ぶのか。

 お揃いでなんだか嬉しいな。

 チアキはジャージに着替えにフィッティングルームに入っていった。


 ジャージに皮籠手、皮脚絆、ブレストプレートの姿は、だいたい俺の格好といっしょだな。

 動きを重視する装備だとだいたい似た感じになる。


「わああ、ミニタカシくんみたい~~」

「そう思う? みのりねえちゃんっ」

「可愛いぞ、チアキ」


 皆にも好評のようだ。


「とりあえず、武器装備は、手盾と、魔銃で」


 チアキの腰にガンベルトを巻いてやった。

 似合うねえ。


「ナイフが良いんだけど」

「ナイフも買うか」


 サブ武器としてナイフは便利だしな。

 割と良い鋼のナイフを買ってベルトに吊してやった。


「いいね、格好いい」

「そ、そう、ありがと……」


 照れて赤くなるチアキも可愛いな。


 俺と似た装備なのでなんかボーイッシュな感じの子供盗賊となったな。

 とりあえず、後衛で銃を撃っていればいいな。


「チアキちゃん可愛いお」

「……」


 チアキは高田君を睨むと鏡子ねえさんの影に隠れた。

 可哀想だから、返事ぐらいはしてあげなさいよ。

 高田くんはしょんぼりしてしまった。


「元気だすっす、チアキちゃんは性犯罪者っぽい姿の男子が苦手なんすよっ」

「うわあ、樹里さん、それ慰めてないお」

「ちょっと、察しなさいって事っすよ」


 そう樹里さんが囁くと高田君はうなずいて顔を上げた。


 霧積が売店に入ってきた。


「おお、こんちは、お前が新入りか、俺は霧積だ、よろしくな」

「よろしく……」


 チアキは男性が苦手なのかな。

 だけど、俺と泥舟は平気だしな。


 チアキと並ぶと大小の俺な感じだな。

 面白い。


「きゃーっ!! 『ホワッツマイケル』よーっ!!」

「マイケルがいるわーっ!!」


 背後で歓声が上がったので振り返ると『ホワッツマイケル』がいた。

 マイケル、パティさん、エリベルトさん、テレサさん、アルマさん、マリアさんのフルメンバーだな。

 パティさんが『彩雲』を持っている。


「よー、タカシー、狩りか~~」

「あんたもかマイケル」

「おう、『十柄』の起動実験と習熟に七十階だ」


 テレサさんが目を笑わせて手を振ってきた。


「お、もう一人ちびっこいお前みたいのがいるな」

「『盗賊シーフ』のチアキだ」

「……」


 チアキはマイケルを黙って睨んだ。

 マイケルはそれを見るとぎゅっという感じに笑った。


「俺の魔銃、お前が使うのか」


 チアキはガンベルトの魔銃を押さえた。


「取らねえよ、賭けだったからな、ちゃんと撃てるか?」

「撃ってないから解らないっ」

「それもそうだな」


 そう言うとマイケルは茶色のカウボーイハットを脱いでチアキの頭に被せた。


「やるよ、ガンマンにはこの帽子って決まってんだ」

「……あ、ありがとう」

「がんばってパティみたいになれ、チアキ、じゃあな、ハハハ」


 笑ってマイケルはポータルの方に向かった。

 『ホワッツマイケル』の連中は通り過ぎる際にチアキの頭を撫でていった。


「……」

「なんだい?」

「そんな、悪い奴には見えない……」

「まあ、そんなもんだ、良い奴らでもないけど、そんなに悪くも無い、そんな感じだよ」

「んっ……」


 チアキはマイケルに貰った帽子をかぶり直した。

 大きいけど、良く似合うな。

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