第112話 難波『高虎』半グレ軍団を懲らしめる

「ワシらは難波迷宮の『高虎』ちゅうチームじゃ、タカシ、おどれのもっとる『暁』をよこせっ、命は助けてやるけんのうっ!!」

「あれがリーダーよー」

「わかりました」


 気の抜けた美春さんの声で、みのりと二人でビュンビュンと弓を撃った。

 ドドンとリーダーの太ももに金属製の矢が二本突き刺さり、奴は膝を付いた。


「う、うぎゃああ、な、何をするんじゃあ!!」

「足足、足をねらって」

「美春さん、この弓すごく撃ちやすいですっ」

「まかせてー、最新式だよーっ」


 怒った五十人の半グレたちに、美春さんとみのりは恐れる事も無く矢を撃ち放つ。

 足を打たれた半グレたちがごろんごろんと転がる。


「 『ゆっくりゆっくりゆっくりなりたまえ~~♪ あせってもしかたがないからのんびりいこうじゃないか~~♪』」

「わあっ、当てやすくなった、みのりちゃん、ナイスうっ」

「ひ き ょ う だ ぞ ~ ! !」


 半グレたちは転がっていく、が、なにせ数が多い。

 お互いの距離が半分ぐらいに縮まった。


「よし、新兵器を使っちゃえ」

「え、なんですかなんですか」

「科学の結晶、爆発矢!」


 美春さんは矢壺から、不吉に光る真っ赤な矢を取りだし、撃った。


 ズドオオン!!


 半グレの足下で爆発が起こり、五六人が吹っ飛ばされた。


「ははは、どうだっ!」

「「えーーー」」


 美春さんは躊躇無く半グレの集まっている所の足下に、爆裂矢を撃ち込み、吹っ飛ばしていった。


「美春さん格好いい」

「へっへーん」


 盛りあがる女性陣に対して、俺たち前衛男性陣はドン引きである。

 容赦ないなあ、この人。


「降参だ降参~~、も、もうやめてくれ~~っ」

「なによ、五〇人も居て、もう終わりなの?」

「助けてくれ~~、これ以上は死んじまうっ、お願いだ~~」


 半グレのリーダーは泣きながら頭を下げた。

 足に矢が刺さってちゃんと座れないっぽい。


「な、何者だあ、あんたっ」

「『京都大学素材研』よ」

「げえええっ、京大素材研っ!!」


 関西では有名なパーティなのだろうか。


「誰に頼まれたの、見逃してあげるから言いなさい」

「が、外人、外人が『暁』を取ってきたら十億くれるって~~」

「外人?」

「外人……」


 駐車場に止められた真っ赤な外車のオープンカーからドンツクドンツクとアップビートな音楽が流れ、赤いスーツを着た赤い帽子の怪外国人が立ち上がった。


「ひゅー、それは僕さあっ!! Dリンクスのみんな、そして素材研のお姉さんっ!! そのふがいないブラザーたちに仕事を頼んだのは、この僕、世界一レベルが高い男、『ホワッツマイケル』のマイケル・ラプラントンだよ~~っ」

「「「「……」」」」


 怪人だ。

 そして日本語が上手い。


「日本語、お上手、ですね」

「ひゅーっ、ベイビー、僕はレアスキルを山ほど入れていてね【多言語理解】も取ったのさー、これで異世界に行ってもオッケーさっ!!」

「ああ、それで」

「世界一位のSランク配信冒険者が何しに来たんですか?」

「もちろん、タカシ君の持って居る『暁』を手にいれるためさ~~っ、そいつはEランク配信冒険者には過ぎたしろものだー、ひゅーっ、幾らで売るかい~~? 言い値で払おうじゃあないかあっ! なにしろ、僕は世界一の大富豪だからねえっ、ひゅーっ」


 酔っ払ってるのか、この外人は。

 とはいえ、相手はレベル72、世界一の男だ。

 どうすべきか。


「嫌だと言ったら」

「へいメーン、それは賢くないなあ、クレバーになりなよー、世界一の男に勝てるとでも思っているのかい~~」


 そう言うと、マイケルは腰のガンベルトからリボルバー拳銃を抜いて、キリキリと回した。


「あ、鉄砲!」

「イエース、仔猫ちゃんっ、こいつはレア装備箱から出た魔銃さっ、こうして」


 マイケルは駐車場の看板を六回撃った。

 なんだっけ、あの撃鉄を撫でるようにして早撃ちするやつだ。

 というか、西部っぽいリボルバーだからリロードに時間が掛かるだろうに。


『リロード』


 マイケルが唱えると装弾されたのか、また六発発射した。


「すごいだろー、ベイビー、72レベルのパラメーターに、この魔銃、君たちに勝ち目はないよ~~、ひゅ~~」

「西部のガンマンみたい~」


 みのりがパチパチと手を叩くと、嬉しかったのかマイケル氏はパチリとウインクをした。


「マイケル氏は両手剣じゃ無かったですか?」

「この前職業ジョブチェンジしたんだよ~~、ミスターデイシュー」


 ホワンホワンとサイレンを鳴らしてパトカーが山ほどやってきた。


「お巡りさん来た」


 お巡りさんたちはバラバラと走り寄って、マイケル氏を包囲した。


「え、ホワーイ?」

「銃刀法違反の現行犯で逮捕します」

「え? いや、その、僕は、レベル72で世界一の」

「関係ありません、ここは日本なので、日本の法律に従ってもらいます」

「え、いや、その、大使館、アメリカ大使館に連絡したいんですけど」

「とりあえず、ご同行願います」


 マイケル氏は捕まった。


 美春さんとみのりのコンパウンドボウは素早く俺の収納袋に入れたので、お廻りさんには捕まらなかった。

 半グレ軍団『高虎』はお縄になった。


「まあ、Dチューバー同士の諍いなどあるのだろうけれど、あまり派手にはやらないでくれたまえよ」

「すいませんでした」

「気を付けます」

「お世話様でした」

「ありがとうございました」


 いやあ、マイケル氏が馬鹿で助かったなあ。

 しかし、直接『ホワッツマイケル』が『暁』確保に動いてくるとは。


「お父さんが新しく打った両手剣にフツノミタマが宿ったら少しは違うのでしょうけど、しばらくは大変そうね」

「タカシ、マイケル氏が来たって事は、他の『ホワッツマイケル』のメンバーも来ている恐れがあるよ」

「そうだな、やばそうだ」


 彼らは高ステータスの上に、レアスキル、レア装備、レア魔法を満載してそうだ。

 今の『Dリンクス』に勝ち目があるとは思えない。

 これはヤバイな。

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