第44話 最強の殺し屋クロは、嫌いなものがある

 この世界で絶対に嫌いなものが一つある。それはリリーでもなく女でもない。たった一つの言葉。殺せないくせに頻繫に使う「殺すぞ」だ。


 殺し屋など人を躊躇なく殺すことができる者が使う分には良い。だが人を殺すのもためらう者や殺せない人が言う殺すぞは俺にとっては煽り言葉だ。


 要するにギャングどもはさっさと人を殺さない汚いやつらだ。なんだおやじに店への嫌がらせ?。気持ち悪いな。俺は今夜そのギャングを潰しにいく。


 「レイ本当に良いのか?」

 「大丈夫だよおやじ」

 「絶対に帰ってこいな!!」

 「わかった」


 俺はその場でおやじと分かれた。ミハエルの情報によるとギャングのアジトはこのスラム街の路地裏にあるらしい。今回は上に続く建物ではなく下に続く建物らしい。簡単に言うと地下だな。そこでだ。


 ここで俺から面白い地下への攻め方があるんだ。地下は密閉されているだろ?


 「だから俺はこの毒ガスを下に投げ込む。そして俺はあらかじめ耐毒薬を飲んでいるから吸ってもなんら問題はない」


 カタカタカタと階段を下りる音がした。ギャングたちから見ればただの恐怖だろう。


 「お前は、ゴホゴホ。だれだ!!」

 「どうした? 咳するかしゃべるかどっちかにしてくれない?」

 「うるさ……ゴホゴホ」


 バタバタと人間が床に落ちる音がし始めた。これはもう潰したなと俺は思ったが気を緩めるのが早すぎたようだ。


 奥から体格がでかい男が歩いてきた。しかもこいつは人を殺している目をしている。やっとちゃんとした獲物が出てきたわけだな。


 「俺のギャングを荒らしておいて無傷で帰れるとおもうなよ?」

 「なんでお前は毒が効いていないの?」


 こう聞いたがおそらく何らかの薬だろう。


 「ギャングを荒らしたお前に明日はこない死ね!!《ロックブラスト》」

 「おお。魔術持ちね」


 俺は無数の岩が自身に飛び交うロックブラストを丁寧にかわした。そして右横からギャングのリーダーが猛突進をしてきた。


 「この体格で突進されたらひとたまりもないのだが俺には効かない」

 「うぉぉおぉ。何が起きた?」

 「俺の速さについてこれないお前は俺には勝てないよ。《ヒートアップ》」

 「うぉ!速い!!」

 「おやじが苦しんでる。お前はここで永遠に眠れ《発勁》」


 ギャングのリーダーはレイの発勁によって壁の奥まで貫通して体全部の内臓が破裂してこの世を去った。


 「俺はこういうことになるのを知っていた……。なのになぜ分からないんだ。己の目で相手の強さを見極めろ」


 破裂した死体を前にそんな言葉を吐き捨てた。俺が建物から出る時また裏世界で生きていそうな人間にあった。おそらく殺し屋だろう。


 「まだギャングのボスはいるか?」


 基本俺は殺し屋同士それが知らない者なら話を聞かず下がる。だから俺はそうした。


 「無視をしないでもらいたい。俺はこの仕事をやらなきゃいけないんだ」


 これは無視をしている俺が悪いと思うのが普通だろうが裏世界では相手より強い場合は無視が普通なのだ。


 それを知っていての所業かまさか俺の腕を引っ張るとは……。


 「お前ちょっと面貸せ」

 「俺早く帰りたいんだけど」

 「お前どこの所属だ?」


 はい来た勝利確定演出。これが話題に出れば負けることはない。だが俺はその場から去った。別に俺は弱者を見下ろす趣味はないしこの世界には俺より強い者など数えられないぐらい存在する。


 ここで反応するのは三流だよな。


 「では急いでいるので」


 シュンっとその場から黒い灰をまき散らし消え去った。


 そうして俺は闇市ことフェスティバルから帰還した。無色へのお土産はとても喜んでくれた。初めてだった異性の顔を見て幸せな気持ちになったのは。俺には一番幸せという言葉と縁が遠い存在だからな……。


 「これぐらいで報告は終わりだ」

 「ご苦労さん」

 「そうだカノンお前このNATO弾追加欲しがっていたでしょ?」

 「え? 気が付いていたの?」

 「そりゃあね。これとりあえず同じ奴を50箱購入しておいたから後から届くと思う」

 「うわぁ~ありがとうレイちゃん~」


 カノンにはNATO弾、そしてリリーには服など装飾品、ミレイユにはトレーニングセット、ミルには暗器、リキッドにはお菓子を買ってあげた。みんなそれぞれいろんな喜び方をして俺はまた学んだ。


 だが時々俺はふと思う。俺にこんな幸せを与えてもらって本当に神は許しているのだろうか……と。仕事がらでどうしても全ての人間を敵だと思ってしまう俺に友達や仲間などは本当に必要なのか……。


 「レイちゃん何考えているの!」


 背中をバチンと叩かれた。振り向くとリリーだった。


 「すまないリリー俺は本当にこんな仲間に囲まれて良いのかと……」

 「ぷ~くすくす!!」

 

 リリーは小馬鹿にするように笑った。


 「レイちゃん考えすぎだよ! ここにいるものは全員仲間だし家族だよ! 私も時々思うのいつも拷問しているけど本当にこんな事をしていて仲間がいるのかって」

 「じゃあなんでだ?」

 「私たちは家族だからだよ」


 その言葉「家族」この言葉で俺は納得した。そうだ俺には家族がいる。本当の家族は誰だか知らないが今の本当の家族は六色光だ!!

 

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