薔薇はお好きですか?

薔薇が人を食べる。

そんな噂が、この小さな街に広まった。

都心から電車で小一時間のS市。  


霊媒師耳人形は、また1000万という多額の金のために今日もこの手の‘欲の匂いが強い’仕事を請けおった。


黒山羊カナコは、黒い高級車の中からか細い声で言う。

「あなたが耳人形さん?本当のことを言うとね。このような不気味な話には、解決なんてそんなことしたら呪われてしまうと思うの。

あなた怖くないの?

呪われてしまうのは?」


耳人形は、よほどこの黒山羊という女の子が、小さな学校でおこった不可解なできごと(それは、2ヶ月ほど前、名田という霊媒師がこの街で、人食い薔薇に関して調べているうちに行方不明になったのだ。)を必死に解決したいのだなと感銘をうけた。

「黒山羊カナコさん、もう夜中の2時だ。

なんでこんな夜遅くあなたは、外にいるんだい?

当てようか。

君はなにか隠している。」


すると黒山羊は、耳人形の方を向いた。

そして目には、小さく涙を浮かべているのがわかる。

「耳人形さん、絶体に。絶体にこの人食い薔薇の事件を解かないでください。

もし、解いたら、」

黒山羊は大きく目を見開いた。

「名田さんのように、」

黒山羊の口がみるみる大きくなていく。

「お前も、養分にするゥゥー!」


耳人形は、護守霊を1体出した。

たちまちに、もののけにのみ反応する電流が黒山羊の体を巡る。


耳人形は、鼻をきかせた。


そして、車を降りた。


アタッシュケースをあけるとそこには名田が寝ていた。


運転席に人はいなく、そこには一輪の薔薇がおいてあった。


「やれやれ、薔薇男と薔薇女。

妖怪のカップルが人を食っていたのか。」

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