第22話 本選①

『本戦第一回戦第二試合、『白銀の輝き』所属、帰来誠Lv324 vs『天使の手腕』堂本どうもと回元かいげんLv978』



 スタジアムに歓声が響き渡った。


 本戦は観客に被害が行かないように透明な防御の魔法結界が張られている。



「すぐ終わんなよー」


「大穴のお前に賭けてるんだぜ、負けたら俺がボコボコにしてやる!」



 など外野は大はしゃぎだ。


 そんな声はおいといて、目の前の対戦相手を見る。

 

 白い僧服を着て錫杖を持った坊主の中肉中背の男。


 『天使の手腕』といえば回復メインのクランで、回復魔法に特化するメンバーを多く抱えていて、それらを要請に応じて他のクランに派遣するという派遣会社みたいなことをしている変わったクランだ。



「いかに低レベルとはいえ、予選を勝ちぬくとは実力者に相違あるまい。この回元容赦はせぬぞ!」


 そして長い錫杖で僕に殴りかかってくる。

 

 避け……られない。

 

 だってレベルが違いすぎるからめっちゃ早いんだよね。


 それを迎え撃つため僕は腰を下ろして正拳突き。


「ぐぬっぅ……」


 正拳突きと錫杖の跳ね返しでそこそこのダメージを与えてよろめかせる。


「お主やるではないか。本気で参ろうぞ、聖棍撃舞!!」


 そして回元の体がブレて4人になり、4人が同時に襲いかかってくる。


 同時に襲いかかってきてくれる、というのはとても都合がいい。


「闘気掌!!」


 全方位へのオーラ攻撃をまき散らすと同時に回元の攻撃も跳ね返す。


「ぐほぉぅ、何たる威力……」



 吹き飛ばされよろめきながらも踏ん張り立ちする回元。


 いやあ、4倍分攻撃食らってなお立っているあんたのほうがすごいよ。



 じゃあとどめにいこうかと近付くが、




「秘儀、チャクラヒール!」


 緑のオーラが回元の体を包むとたちまち回復して、見るからに万全な状態にまで戻っていた。


「拙僧の真髄はこの類まれなる回復力。持久戦に持ち込めばレベルの低いお主が負けるが必定。さあ、降参は恥ではない。ダンジョンなら死ぬより逃走が賢いゆえ」


 しかし僕はここで正拳突きのかまえを取る。


「もはや闘気掌も使えぬか。しかし諦めぬ意志やよし! かかってくるとよい、聖棍撃舞!」


 また4人に分身して錫杖が叩き込まれるが、その寸前に、


(【リバース】発動、この回元の体力を瀕死に戻せ!)


 さらに連続して聖棍撃舞の攻撃を跳ね返し正拳突きも当てて回元は吹き飛んでいく。


 ズザザッ、と仰向けに倒れこんだ回元は起き上がってこず、気絶していた。



『勝者、『白銀の輝き』帰来誠!』



 ふう、勝てた。


 回復が得意というなら、回復前の状態に戻してあげればいいのさ。


 いきなり瀕死+跳ね返ってきた自分の攻撃+僕の正拳突きのトリプルコンボで一気に倒しきった。






 錫杖を使った打撃力も高い回元だが、その真髄は行使コストの低く完全回復可能なチャクラヒール(対象は自分だけ)があることによる継戦能力の高さにある。


 これを見込んで彼に賭けていた観客はまさか初戦で負けるとも思っておらずまさかの結果に唖然としていた。



◇◇◇



 全国探索者大会(Lv1000未満)総合スレpart21



 245:名無しの探索者

 おい、Lv324だってよw

 何しに来たんだコイツw


 246:名無しの探索者

 ん~、おおかた自分のスキルに自惚れてきたってとこ?

 これ生涯に1回しか出れんのにねー


 247:名無しの探索者

 Lv1000未満限定なんだからせめて900台まで待てばいいのに……


 248:名無しの探索者 

 てか『白銀の輝き』だってよ。

 あの終わったクランからだよw


 249:名無しの探索者

 ちょっと認識が古くない?

 最近クランランキングを上げてるぞ

 しかも何かクランの建物が新築みたいになってたぞ

 金もあるんじゃないか?


 250:名無しの探索者

 娘の治療に金を注ぎ込みまくって破産寸前だったのに?


 251:名無しの探索者

 ってことは娘治ったんじゃね?

 そういやなんか上級ダンジョンのアイテムをギルドに持ち込んでるのを見たような……


 252:名無しの探索者

 『天使の手腕』かあ……

 あいつら回復メインだろ?

 試合がgdgdになるんじゃね?


 253:名無しの探索者

 回復メインつっても自衛できるように前衛能力も鍛えてるんだぜ

 手間のかからない回復役、ってので売りこんでるから

 回復役守るために戦力のリソース割いたら意味ないからな


 254:名無しの探索者

 お、始まったぜ

 錫杖で殴りに行くとか、めっちゃ脳筋だなあ……

 あれ回復魔法増強の媒体じゃないのかよ


 255:名無しの探索者

 分身して攻撃とかカッケェな


 256:名無しの探索者

 闘気掌であの攻撃を打ち破るとか

 スキルレベルがめっちゃ高いか、実はレベル詐欺か?


 257:名無しの探索者

 【レベル鑑定】で見られてるはずからそりゃないだろうな

 Lv300とLv900なら差はだいたい6倍くらいあるから、

 誠のスキルは【カウンター】系統とみた


 258:名無しの探索者

 反撃スキルメインなら相手が強いほうがかえって都合がいいな

 でも【カウンター】は命中率低いから

 即時全快スキル持ち相手なら長期戦で打ち負けるかも


 259:名無しの探索者

 おおー! 正拳突きで一発KOだぜ!


 260:名無しの探索者

 バカな……


 261:名無しの探索者

 ギャンブラーワイ氏、誠に全財産賭けてて歓喜




◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る