第24話 もう一つの出会い 気付き~寧々と崇

 教室にはまだ寧々ねねたかししかいなかった。席に着く崇。横目で寧々の方を見る。寧々は今日もずっと本を読んでいる。


「ねえ、寧々ちゃん。あのさあ。ちょっと気になってたんだけど……」


「?」


「あのさあ。間違ってたら、ごめんなんだけど」


「なに?」


「土曜日はお疲れ様」


怪訝けげんな顔をする寧々。崇は思わず『やっぱり勘違いだよな』と思った。


「お疲れ様。夜間飛行……」


「え?」


自分で言っておいて寧々の返事に驚く崇。首を傾げる様にして微笑む寧々。


「そういう返事でいいのかなあ」


「あ、いや、ほら、それ、ナイスファイト! って感じかな」


「ナイスファイトは崇君でしょ」


「そうかあ。やっぱり寧々ちゃんなんだね……よっし!」


「? よっし?」


「いや、ほら『鏡さん』って、あまり聞かない名前だったからさあ。もしかしたらって思ってたけど……鏡さんが仲間だと思ったらなんか心強いなって思って……」


「そうね。私も全然知らない人とチーム組んでるより安心できるわ」


「そう。よかった」

なんだかドキドキする気持ちと嬉しい気持ちが入り混じる崇だった。微笑む寧々。


「改めて、よろしくね」


「よろしく」


◇◇◇◇◇◇


 職員室には何かの答案用紙の採点をしている先生や、授業の準備をしている先生など数人の職員がいた。

 れい多香子たかこに聞く。

「鏡さんって国語、百点ばかりなの」


「すごいのよ。とにかく他の生徒より読む速さが、とてつもなく速いし、いろいろな文章をきちんと理解できる。物語文なんかでは登場人物の心情把握がすごいわね」


「そうなの」


「なんかさあ。小学生の問題って『友情』とか『親子の関係』とか……そういうものから心情を読み取っていくものが多いと思うけど。なんていうか、登場人物の会話だけじゃなくて、ちょっとした動作や仕草を見落とさないっていうか……」


窓の外に目を移しながら多香子が言う。


「……」

言葉が見当たらない麗。


「あと語彙力とか知識面もね」


そこまで聞いても、まだ麗の中では、多香子の言葉が実感として理解できない感じが残った。


「この子の解答を見てみたいわ」


「それはないけど、この前授業でやった小テスト問題の答案用紙ならあるわよ」


他の生徒の答案用紙と一緒に見せてくれた。


「これ……」


◇◇◇◇◇◇

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