彼女のとなり
としやん
第1話 完璧な彼女
僕には彼女がいる。
彼女は容姿端麗で成績優秀、スポーツ万能で教師や生徒からの信頼も厚い。そんな「完璧」な彼女とのとある日々と今後の彼女との関係性が一変するきっかけとなった出来事についての物語。
僕の名前は優。普通の男子高校生だ。
僕には彼女がいる。名前は白南風琥珀(しらはえこはく)。白南風とは梅雨明けごろに吹く風のことらしい。
女は成績は常に学年トップ、どんなスポーツでも卒なくこなしてしまう。容姿端麗で髪の毛は短く切りそろえられており、長いまつげと少しだけ切れ長の目つきは人を惹きつける魅力になっている。個人的に後ろ髪の方が少しだけはねているのがとてもかわいく見えてしまう。この圧倒的なカリスマ性と魅力で周囲を惹きつける。彼女を慕う生徒や先生も非常に多いのだ。
「従って答えは4/37です」
ふと透き通るような声が僕の耳を震わす。その声の主は例の彼女、琥珀だった。まさに今、授業中に彼女は先生に問いを投げられ、問題の答えを難なく答えていた。先生も大変満足げな様子だ。
「さすがはうちの学校設立以来の天才少女だ」
先生は大変喜ばしいと言わんばかりに彼女を称賛する。琥珀は少し照れたようにして席に着く。
琥珀は僕の彼女だ。とても魅力的で、どうしてこんなに平凡な僕と付き合っているのかがよくわからない。
琥珀がふと僕の席の方を振り向く。ニコっと僕に向けて微笑みかける。その笑顔がかわいくて、つい口元が緩んでしまう。僕も微笑みながら笑顔を返す。彼女はそれに満足したのか、前を向いた。彼女はとてもかわいくて魅力的な僕の彼女なのだ。
「ねぇ、優!これから図書館で勉強しない?」
彼女は朗らかな声で僕にそう問いかけてきた。
「いいね。ちょっと準備してからいくから先行ってて」
彼女を待たせるのも悪いと思い、彼女にそう返事をする。しかし、彼女はその場から動くことはなく、僕は再び彼女に声をかける
「どうしたの?」
「準備の時間くらい待つよ。一緒に行こ」
彼女はやっぱりかわいい。僕は急ぐかのようにカバンに荷物を詰め込んだ。それを見て彼女はふふっと笑う。
「そんなに急がなくていいのに」
図書館は意外と静かで生徒は少ない。みんな自宅で勉強したり、予備校に通ったりしている。彼女は成績優秀だが、塾や予備校には通っていない。完全に独学で授業を進めているようだった。
彼女は集中した様子で参考書を進める。参考書は僕のそれよりもずっとボロボロで彼女が単なる天才なだけではないということを感じさせる。僕は彼女の勉強している姿に目を奪われ勉強がはかどらずにいた。彼女はそんな僕の様子に気づき、
「こら!ちゃんと勉強しないと。定期テストも近いんだから」
彼女はそう僕を𠮟りつける。しかしそれすらも僕にとっては幸せな空間で彼女の叱っている姿でさえ笑みがこぼれてしまう。
「もう、そんなんじゃ定期テストでまた悪い点とっちゃうよ」
「大丈夫だよ、赤点はとらないから」
「当たり前!しっかり高得点とってよ」
僕はそういわれて目の前の参考書に手をかける。そこからはお互い会話することなく勉強に集中していた。
彼女は完璧だ。
誰もがそう信じて疑わない。
体育の授業でバレーボールをしている彼女。今はチーム戦をやっているようだ。彼女は男子顔負けのスマッシュをうち続けている。結果彼女がいるチームは圧勝。全戦全勝だ。
家庭科の授業ではミシンを使って、服を作る。彼女は学校では習わない縫い方を使って、先生顔負けの裁縫技術で普段使いできるほどの服を作ってしまった。
英語の授業では英語の先生顔負けの発音と流暢さで教科書に書かれてある英文を読み上げる。
彼女は完璧だ。
誰も彼女の輝きに追いつけない。誰も彼女と肩を並べられない。誰も彼女と対等になれない。
誰も本当の彼女のことを知らない。
彼氏である僕さえも......
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