第三十四話 月閃
《草間町:桃太郎》
僕と栗太郎、弁慶さん。
そしてティナさんの四人は、
義経さんの屋敷へと向かっていた。
町中は混乱を極めている。
親を探し泣いている子供。
逆に子供を探し慌てる大人。
親子だけじゃない。
友達や恋人を探している人だっている。
未だに事件の詳細はわかっていない。
何が起きてるかわかっていないけど、
これだけ混乱するんだなーと僕は思う。
『人が集まり『集』となるとき、それは一つの生命体に等しいんだよ。そこに『個』の思考は存在しなくなる。一つ勉強になったね君』
僕は
あの言葉の意味。
実はあの後、何回か考えたんだ。
感情は伝染する。
僕の中で答えはそれに落ち着いた。
感動も、不安も、悲しみも、不安も。
周りに伝染しそれが広まり、
一つの塊としてなるんではないか。
僕はそう思った。
「おい! もう着くぜ!!」
弁慶さんの声で我に返る。
「おっ! 弁慶じゃないか!!」
義経さんの屋敷の前には、
大勢の人がいた。
それぞれが武器を持っている。
そしてその中の一人が僕たちに気付く。
「おぉ、若様のお客人も一緒か。それは良かった」
「こいつらを安全な所にと思ったらやっぱりここを思いついてな」
「ちげぇねぇ! 俺らがしっかり守ってやるよ!」
「あぁ。頼んだぜ!!」
弁慶さんと代表のような人はハイタッチをする。
「と、それより弁慶。若様を見かけていないか?」
「それが俺も見てねえんだ。アイツ何やってんだろうなこんな非常事態に」
「何かに巻き込まれていらっしゃらなければよいのだが……」
「大丈夫だろ。アイツ、俺らが束になってもかなわないんだぜ?」
「確かに。それはちげえねえが」
義経さんがいないと聞いて、
代表の人以外の顔は曇っていた。
弁慶さんの言う通り、
義経さんがそんなに強いのなら
居るか居ないかで士気に影響はすると思う。
僕も栗太郎や朔夜さんがいるかいないかじゃ
不安は全然違う。
不安が伝染している。
代表さんも振り返ってそれに気付いたみたいだ。
だけど、次の一言で空気は変わった。
「よっしお前ら! 若様はどこかへ行ってらっしゃるようだ! だけどあの方のことだ。本事件に関係あることにちげえねえ!」
みんなは代表の顔を見ている。
「いなければ俺たちでやれることをやるだけだ! 今、俺らに出来ることはなんだ!?」
「「若様のお客人を守ることだ!!」」
「そうだ! 勿論、街の警護も大事かもしれねえ!! だが、俺たちが使えてるのは誰だ!! 源家か!?」
「「若様だ!!」」
「だったら今俺たちがすることはなんだ!!」」
「「屋敷を死守することだ!!」」
「わかったら持ち場へ迎え!! 数名は東門へ行って現状を把握して来い! 若様が帰ってきても自分は必要なかったと思われるよう……やるぞおめぇら!!」
「「「「おぅ!!!」」」」
空気がガラリと変わった。
これが集団をまとめる人の力なのかもしれない。
「……不思議か? 辰夜」
僕を見て弁慶さんは言った。
「あいつは
「おい弁慶! そりゃ言わねえ約束だろがい!」
「へへ。とにかく任せたぜ伊勢!」
「あぁ、まかせとけ!!」
伊勢さんにそう告げて弁慶さんは屋敷へと進んでいく。
僕も、皆に信頼されるような頭首になりたい。
そう強く思った瞬間だった。
──────────────────────
《草間町 東門付近:朔夜》
私は東門について驚きを隠せなかった。
門のあたりに数百を超える小鬼がいたのだ。
小鬼は元来、知能がない。
その為、群れることがない。
ただし、お互いを認識はしており、
小鬼同士で争うこともない。
だから、同じ獲物がいた場合は
協力し合うことはある。
それ以外にも小鬼が群れて行動することが、
一つだけある。
それは自分より圧倒的に強いとわかる
鬼に命じられること。
つまり、この状況下では、
どこかに圧倒的強者と思われる鬼が
いることになる。
「とんだ大事件だな……」
悔しいが、私は一度『
思われる奴に負けている。
それも手も足も出ずに、
六芒鬼の偽物に負けたわけだ。
今は私も六芒鬼の『夜叉』。
初代の『夜叉』は孤高の存在だったと言われる。
普段は誰も扱えないほど自由な存在であり、
頭首をも困らせるほどの問題児だが、
有事の際にはその力をいかんなく発揮して
勝利への道筋を切り開く『懐刀』であったらしい。
強者がそろい踏みの六芒鬼の中でも
一対一なら最強と言われた孤高の剣士。
私はその『夜叉』を継いだわけだ。
「初代や母の顔に泥はぬれん。……どこにいるかは知らんが、私が相手をしてやる!!」
私はそう宣言し、
瞬脚をもって小鬼の群れに突っ込む。
瞬時に中へ入り込んだ私は、
三体の小鬼を間合いに
入れることが出来る位置を取った。
「肆の型、『
私は一瞬にして三体を減らすつもりで切り込んだ。
だが私の目論見は一体目に刃がぶつかった時点で阻止される。
──ガキンッ!!
なるほど。
やっぱり時貞が言ってたやつか。
奴らはそのまま私を殴りつけようとして来た。
難なく瞬脚でかわす。
鉄より硬い。と時貞は言っていた。
私の愛刀、
それに対処できる形態もあるが……。
今の私にはまだ扱えない。
「とにかくやってみるほかないな」
私は一人だけ少しだけ浮いてる
『剛鬼』とやらに狙いを決めた。
上段に刀を振り上げ……、
脚に力をため……加速する。
瞬脚の速さと切り下げのタイミングを合致させ、
敵を切断する、今私が持つ最大の斬撃力を持つ技。
「『
──クァン!!!
甲高い金属音が鳴り響く。
振り返れば『剛鬼』の脚が切断されていた。
「よし。通用するようだな」
『剛鬼』はゴォンと音を立て崩れる。
「首は高すぎてとれんが、脚がなければ動けないだろう」
相も変わらず知能も感情もない奴らは、
戸惑いも恐怖も感じていないようだ。
意味はない。
だが、私は口上を述べる。
「『剛鬼』か何だか知らんがな。かかってくるといい。
私は八具戦を構え、
『剛鬼』の群れへと再び突撃をした。
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読んでいただけてありがとうございます(˘•̥⧿•̥˘ )
私が初めて管理者になったとき、
尊敬する前任の上司が言ってました。
俺の思う理想の上司ってのはな、
『誰よりも何でもできて、誰よりも何もしない奴だ』
「上司が居なくても仕事回ってない?」って言われれば勝ちだ。
そういう環境に出来たならお前も次のステージに上がれる。
お前が手を出さなきゃいけないうちはまだだな。
って言われてました。
賛否はあると思いますが私は深く納得しました。
そんな思いを伊勢さんに乗せた次第です。ハイ。
というわけで!!
また次話にてお会いいたしましょう!!!
ありがとうございました!!!
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