第36話 白騎士とあかり

 久遠達の合宿は早くも三日目を迎えていた。

彼らの合宿地である羽衣島の中心部には、国際連合が共同で運営する研究施設群が存在する。

その中に位置するUNITTE羽衣島研究所。

普段は南国らしい穏やかな雰囲気の研究所だが、今日は少し緊張感のある騒々しさに包まれていた。

研究所内にはディメンジョン・アーマーの開発テストを行うための屋内試験場が存在する。

その中心には、白亜の鎧に身を包んだ和泉久遠の姿があった。

体育館ほどの大きさの試験場の床には金属製のパネルが敷かれ、四方の壁には激突防止用のクッションが取り付けられている。

西側に位置する壁の上部は強化ガラスとなっており、その向こう側には上階の中央研究室があった。

中では多くの研究者達が、「白騎士」と呼ばれる機械の鎧をガラス越しに、あるいはディスプレイを通して凝視している。

白い金属装甲に身を包んだ久遠は、額を流れる汗を感じながら小さく息をついた。

羽衣島研究所所属の研究者である水瀬沙織の声が久遠の元に届く。

『和泉さん。三回目の試験を始めます。機体モードはそのままE2で。こちらの準備が整ったら合図をします。』

「了解です。水瀬さん。」

久遠はそう答えると、頭部装甲を傾けて研究室の方を見る。

ガラスの向こうには、白衣姿の研究者達と、城戸あかりの姿が見えた。



 ウィンドブレーカーの下にディメンジョン・アーマー用の黒いインナースーツを着た城戸あかりは、中央研究室の窓に手を触れた。

目線の先には、試験場の中央で佇む白い鎧の姿がある。

「久遠君……。」

小さく呟いたあかりの横に、一人の女性が近づいて声をかけた。

「彼のことが心配?」

「瑞葉さん……。」

「こんな状況じゃ、緊張しちゃうわよね。」

羽衣島研究所の副所長を務める楠木瑞葉は、あかりに優しく笑いかける。

あかりは小さく頷くと、振り向いて研究室内を見渡した。

研究所内でも最も広い中央研究室の中には、多くの研究者やエンジニアの姿があった。

羽衣島研究所の研究員に加え、ディメンジョン・アーマーの開発と製造を担当しているオオトリ・ロボティクスの開発者達、さらに世界各地の国際連合から派遣されてきた研究者達だった。

彼らの目的は、眼下の試験場に佇んでいる白亜の鎧である。

「国連でも注目されているとは聞いていたけど、こんなに人が来るなんてね。ビジターカードが足りなくなるとこだったわ。」

「……久遠君は見せ物じゃないのに。」

そう言って口を尖らせるあかりに、大鳥真美が近づいて声をかける。

「ディメンジョン・アーマーの始祖たる、あの白騎士が見られるってんで、みんな興味津々なんだ。勘弁してやってくれ。」

「うん、わかってる。……だけど。」

あかりはそう言って再び眼下の白い機体を心配そうに見つめた。


 中央研究室の後方から鋭い視線を試験場に向けていた御影英子教授は、今回の試験責任者である水瀬沙織に声をかける。

『水瀬、準備をしておくれ。TL強度は同じでパターンのみ変更。」

「了解です!」

沙織は膝の上に置いたノートパソコンを叩く。

「テストコードL16。フェイクモデルはOC、LZを使用。」

眼下の試験場では、床のパネルから高さ2メートルほどの「標的」が複数出現しようとしていた。

ターゲットブロックと呼ばれるその標的は、小さな樹脂製の立方体で組まれおり、ちょうどレゴブロックを人型に組み上げたような外観をしていた。

個々の立方体には加速度センサーや電子マーカーが組み込まれており、データの計測や収集ができるようになっている。

「ターゲットブロック準備完了。開発番号DA-00-WK『白騎士』に試験データを送信します。」



 

『和泉さん。ターゲットにフェイクモデルを重ねます。』

久遠の頭部装甲内ディスプレイに映るターゲットの上に、コンピュータグラフィックで描かれた映像が合成されていく。

彼の眼前には、四体の次元獣が出現していた。

OC型と呼ばれる小鬼オークを模した次元獣と、爬虫類を模したLZ型次元獣である。

ディメンジョン・アーマーのディスプレイに映っているのは、カメラを通したそのままの映像ではなく、機体内のプロセッサで演算されてリアルタイムに作り出されたCGである。とはいえ、目を凝らして見ない限りは、現実に繰り広げられている光景と見分けがつかないほどの精度であった。

『L16テストを開始します。和泉さん、シグナルグリーンでスタートしてください。』

鎧姿の久遠は小さく頷いた。

彼を包む白亜の鎧は、試験場の無数のライトを浴びて輝いている。

曲線を多く用いた西洋鎧を思わせるその姿は、まるで工芸品のような美しさだ。

だが、その装甲の中には無数の機械と電子部品が張り巡らされている。

それはまさに『機械の鎧』と言うべき姿で合った。

『テスト開始です!』

頭部ディスプレイ内に表示される電子表示が緑に変わった瞬間、久遠は右脚に力を込め、手近なターゲットに向けて飛び出した。

「……ぐ……!」

久遠は自分を襲う異質な感覚に戸惑いを隠せない。

頭がついていけないほどに鋭い白騎士の加速に、まるで自分の身体が置いていかれるような感覚を覚えていた。

あまりの速度に、感覚の上では思わず倒れそうになっているというにも関わらず、機械の鎧は少しもバランスを崩すことなく高速でターゲットに向かっている。

装甲内の駆動システムと演算装置が作り出す正確無比な動きと、五感で受け止めている身体的な感覚とが生み出すズレは、久遠に大きな混乱と負担を与えていた。

(……そうだ、攻撃を……!)

大振りにした白亜の腕が次元獣を捉えると、ターゲットブロックの肩口は申し訳程度に砕け、分解された樹脂製のブロックが金属製の床に散らばっていく。

続けて現れた二体のターゲットを連続で破壊すると、彼は背の高いターゲットの前にたどり着いた。

先日の調査で大進と静香が対峙した、LZ型と呼ばれる爬虫類型の次元獣を模した標的だ。

OC型は白騎士と変わらないサイズだが、LZ型はひと回り大きい。

「頭を狙う……!」

白騎士は大きく跳躍し、空中で身を翻す。

繰り出された脚部は、ターゲットの頭部から大きく上に外れたところで空を切った。

「うわ……!」

久遠は空中でバランスを崩す。

慌てる彼とは裏腹に、鎧に組み込まれた演算装置は自らを制御して何とか体勢を立て直す。

白騎士は両手と片膝で地面にへばりつくようにして着地した。

『和泉さん、ありがとうございました。結果を集計しますので、メンテナンスラックに戻って休憩していてください。』

中央研究室から沙織の声が届く。

久遠は滝のような汗を流しながら宙を見上げると、小さくため息をついた。


   ◇


「……ああ。最後の蹴り、惜しかった……。」

中央研究室でガラスに食いつくようにして久遠の様子を見ていた城戸あかりは、思わず声をあげた。

大鳥真美と水瀬沙織が研究データの確認を行う中、室内では研究者やエンジニア達の騒めきが広がっていく。

その様子を後方の席から伺っている女性がいた。

彼女はディメンジョン・アーマー計画の責任者である御影英子教授であった。

齢六十を越える年齢だが、白髪の前髪から覗く眼光は鋭い。

外装した機器で人間の力を強化するいわゆる『パワードスーツ』の分野を長年牽引してきた彼女は、後進の研究者や技術者達に大きな影響を与えている。

それはUNITTEの技術面をリードする大鳥真美や南ひろ子にとっても例外ではなかった。

御影教授は傍に置いた杖に手をかけたまま、ガラス越しに見える白騎士と、ディスプレイに表示されている各パラメータから目を離さずにいる。

「御影教授、集計データが出ました。表示します。」

集計された試験データが中央ディスプレイに表示されると、中央研究室は騒めきが大きくなった。

「これがあの白騎士のデータなのか……?」

「数値が全然出ていないぞ。本当に例の機体なのか。」

「操縦者が慣れていないというのは聞いていたが……。これでは研究にならんぞ……。」

出力されたデータを見た外部の研究者達は、明らかに戸惑いと失望を見せていた。

だが、この反応は無理もなかった。

彼らが知っているのは、1ヶ月前の大規模調査で突然現れ、これまでの機体では考えられないような動きと破壊力を示した白いディメンジョン・アーマーの姿なのだ。


 あかりは中央研究室の様子を伺いながら、無言で口を結んでいる。

(無理もないわよ。久遠君は今までほとんどったことが無いんだから。)

彼女は眉根を寄せたまま、そっとガラス窓に触れた。

眼下の試験場には、一人佇んでいる鎧姿の久遠が見える。

考えてみれば、あかりにとっても白騎士の姿を見るのは1ヶ月前の大規模調査以来だった。その後、近接調査員ではない久遠は白騎士や他のディメンジョン・アーマーに触れてさえいないのだ。

(だけど、久遠君はあの時……。)

彼女の脳裏に、大規模調査での激しい戦いの中で、巨竜の背中に強烈な拳を打ち付けた彼の姿が蘇る。

あかりは意を決して振り向くと、研究者達をかき分けるようにして御影教授の元へと進んで行った。

「御影教授。」

「なんだい、あかり。」

「私も自分の機体で出ていいでしょうか?」

あかりの申し出に、御影教授は小さく頷く。

「水瀬、あかりの第三世代機を準備してやっておくれ。」

水瀬沙織は赤いメガネの下で笑顔を作って敬礼すると、あかりを伴って階下を繋ぐエレベーターへと向かった。


   ◇


 試験場に備え付けられた簡易のメンテナンスラックに鎧姿のまま腰を下ろしている久遠は頭部装甲を外し、滝のような汗をタオルで拭っている。

(たった数分のテストを3周しただけなのに……。)

彼はぼんやりと天井を仰いだ。

ディメンジョン・アーマーは機体の演算装置がリアルタイムに計算しながら最適な動きを作り出して鋼鉄製の四肢を動かすため、機体内にいる操縦者への身体的な負荷が相当に大きい。

異空間のエネルギーを取り込んで変換する「DeUS」と呼ばれる次元エネルギー炉を搭載した白騎士は強大な出力を持つ分、その負荷もさらに大きいものとなっていた。

「城戸さんや大進君達はこれを着て飛んだり跳ねたりできるなんて……。信じられないや……。」

久遠はそう言って小さなため息をついた。

すると、北側の壁にある格納庫の扉が開き、中から灰色の機体が姿を見せた。

白騎士と同じく西洋鎧を思わせる外観だが、主に直線で構成された無骨とさえ言えるようなパーツ群で構成されている。

全身の各部はライトグレーだが、胸部装甲は緋色に近い赤で染め上げられ、国連とUNITTEのマークが白で描かれている。

「久遠君。」

聞き慣れた声が届くと、久遠は思わず顔を上げた。

「城戸さん……。」

第三世代機と呼ばれる機械の鎧に身を包んだ城戸あかりは、ゆっくりと彼の元に近づいていく。

『あれが噂の城戸あかりか……。』

二人の元に、研究室内の騒めきが通信を通して伝わってくる。

優れた機体適性を持つ彼女の名前は、ディメンジョン・アーマーに関わる人間のみならず、パワードスーツの開発や研究に携わる者にとって、あかりがこれまで残したデータと共に広く知られていたのだ。

「ごめん、城戸さん。うまく出来なくて。」

「あんなに動けるだけでも大したものだと思うわ。」

彼女は鋼鉄製の面貌の下でそう言って笑う。

「私だって、ただ歩くだけで何ヶ月もかかったんだから。みんなわからないのよ。」

あかりはそう言うと、鋼鉄の装甲で包まれた右手を久遠に差し出した。

「私と一緒にやろう。久遠君は本当はすごいんだから。そのことをみんなにわからせてあげないと。」

久遠は頷いて頭部装甲を身につけると、彼女の手を取って再び立ち上がった。

「さおりんさん、ターゲットを出してください。」

うけたまわりー!』

彼らの数メートル先に樹脂製ブロックのターゲットが現れ、OC型の映像が重ねられる。

「私が行くね。」

そう言うが早いか、あかりの機体はまるで瞬間移動のようにターゲットに迫ると、あっという間に上半身を粉々に砕いていた。

「速い……!」

あかりは久遠の元に戻ってくると、彼の肩部装甲に触れて直接回線を開く。

「ディメンジョン・アーマーは、自分の身体を包む重い鎧と考えると駄目なのよね。自分が動かすんじゃなくて、助けてもらう感じ。」

「助けてもらう感じ。」

「そう。まず『動く』という意志を明確に持つの。そして動き出したら鎧の動きに身を任せる感じ。」

「なるほど……。」

「何よりも大事なのは、イメージかな。」

彼女は面貌の額部分を指差す。

「イメージ?」

「そ。イメージするの。たとえば……。」

あかりは久遠の横に立ち、両拳を前に掲げたファイティングポーズで構える。

「目の前にOC型の次元獣が出てきたとするでしょう? そしたら、こう……ぶっとばす!」

あかりは右腕を弓のように引くと、正面に向かって鋭い拳を繰り出した。

「……ぶっとばす……。」

「そう。最初にイメージしておくの。例えば……右腕を後ろにぐっと引いた後に、背中の筋肉まで使って思いっきり力を込めて真っ直ぐ拳を叩きつける! みたいな感じかな。」

「イメージか……。よし……。」

久遠は少しの間目を閉じ、ターゲットに突進して右腕で破壊するイメージを頭の中で組み立ていく。

目を開いた久遠の数メートル先には、OC型を模したターゲットが現れていた。

「よし、ぶっとば……うわ!」

白い鎧は放たれた矢のように飛び出すと、右腕でターゲットを粉砕し、そのまま勢いよく数メートル先の衝撃防止壁にぶつかって止まった。

「そうそう、そんな感じ!」

あかりの嬉しそうな声が久遠の耳元に届いた。

その時、二人と研究所の回線がオンラインになり、中央研究室で彼らの様子を見ていた水瀬沙織の高い声が入ってくる。

『くおりん、今のいい感じでした!』

「くおりん?」

あかりは思わず口をへの字に曲げる。

『L13のターゲットを出します。やっちゃってください!くおりん!』

「よし……。」

身構える久遠の前に、三体のOC型が現れる。

「久遠君、最初は右拳で。そのまま左にステップして肘打ち、勢いを止めずに旋回して右脚でミドルキック!」

あかりの言葉通りに、頭の中でイメージを組み立てていく久遠。

次の瞬間には白騎士は旋風のように閃き、三体のターゲットを力強く、そして正確に破壊していく。

「そうそう!いい感じ!」

久遠が見せた鋭い動きと、研究室から通信で届いてくるどよめきに、あかりは満足げに頷いた。

『さあ、最後のターゲットはでっかいのを出しますよー!』

久遠とあかりの視線の先に、高さ8メートルはある巨大なターゲットがゆっくりと出現する。

研究室から届いたデータは、彼らに見覚えがある姿を合成して重ねていた。

「OG型!」

久遠は思わず叫んだ。

目の前に現れた次元獣は、隆起した筋肉を紫色の表皮で覆った巨大な体躯に、銀色の装甲を身につけている。

巨大な鬼を連想する怪物「オーガー」に似ていることから、OG型と呼称されていた。

それは忘れもしない、久遠が初めて目にした次元獣だった。

「おー。改めて見るとOG型はでっかいね。久遠くん、あれやってみよっか。」

「あれって?」

「さっきやろうとしてたじゃない?」

久遠は先ほどの試験で無意識に繰り出そうとしていた空中回し蹴りを思い浮かべた。

「……。できるかな。」

「いい、久遠くん。」

あかりの第三世代機が久遠の白騎士の横に立つ。

「ジャンプはできるだけ高く。」

彼女の機体はわずかに身を屈めると跳躍し、その場で降り立つ。

「で、頭の部分をめがけて、思い切り身体を回転させて鋭く蹴りを放つ!」

あかりは小さくジャンプすると右足を鋭く旋回させ、その場で回し蹴りの実演を見せた。

「思い切り身体を回転させて……鋭く蹴りを放つ……!」

「そう。これこそがUNITTEが誇る必殺の『ディメンジョン・ソバット』よ。」

「え、必殺の……?」

「技の名前は大切でしょう?」

「よし……!」

久遠は無意識に、胸に手を当てる形で身構えた。

胸部装甲内に搭載された次元エネルギー炉からは、白い輝きが溢れ出している。

「久遠君、イメージよ、イメージ!」

あかりの言葉に久遠は頷くと、目を閉じた。

(イメージ……)

彼の脳裏には、数ヶ月前に初めて次元獣に遭遇した時のことが蘇っていた。

闇の中に立つ巨大な怪物に対峙するあかりの機体。

次元獣に向かって全力で駆け出していく彼女の姿が呼び起こされる。

気がつかないうちに、久遠はターゲットに向かって駆け出していた。

脳裏で描いたあかりの機体を追いかけるようにして走る。

「久遠君! 今!」

あかりの声が試験場に響く。

勢いよく跳躍した久遠の機体は空中で身を翻すと、金属製の足先で弧を描くようにして強烈な足蹴りを繰り出した。

ターゲットの首は大きく吹き飛び、壁に激突して弾けるようにして砕け散る。

「やった……!」

空中の久遠はその様子を見て思わず声をあげる。

「久遠君、着地! 着地ー!」

「え!?」

次の瞬間、彼の機体は壁の防護クッションに衝突し、思い切りめり込む。

やがて彼はずりずりと壁を這うようにして地面に落下した。


   ◇


 中央研究室では、研究者達が慌ただしくデータの分析を行なっている中、先ほどまでは懐疑の色を隠せなかった外部の研究者達も、目の当たりにした光景をさかなに活発な意見を戦わせている。

眼下の試験場では、あかりの機体が白騎士を抱き起こしているのが見えた。

御影教授はその様子を見ながら、横にいた大鳥真美に話しかける。

「真美も面白いのを連れてきたもんだね。」

「でしょう。所長も気にいるんじゃないかと思って。」

「白騎士……。改めて計測すると、基本的な出力や速度は第三世代機より大きく数値が落ちるね。データは嘘つかないもんだ。まあ、ディメンジョン・アーマーは白騎士を元に最新の技術を投入して開発したわけだから、十分わかっていたことではあるがね。」

「DA計画の責任者がそう言うのでは、間違いないでしょうね。」

「面白いのはあの和泉久遠という少年だよ。なあ水瀬。」

ノートPCでデータを確認していた沙織は、小さく頷いて口を開く。

「ですね。他のメンバーで言えば、ディメンジョン・アーマーへの適正はあかりんが一番ですし、御堂さんや滝川さんは機体の特性を活かす技術が非常に高いです。」

沙織は液晶画面に流れるデータを見ながら続ける。

「ただ、機体の理論限界値に到達する速度。これはくおりんが誰よりも速いですね。そもそも、機体の限界に達するほどの一撃を見せることは、あかりんでもなかなかありません。」

御影教授の横にいる楠木が沙織に問いかける。

「ということは……瞬間的に出せるパワーが並外れて高いということかしら?」

「はい、そうなります。機体が異なるので、単純な比較は出来ないのですが……。DAに乗って間もないことを考えると、これは驚くべきことです。」

沙織の言葉に、御影教授は黙って頷いた。

「前回の大規模調査で見せたあの一撃……。一度きりの偶然ではないかも知れないね。」

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