うるせえ

「……売女め」

「あら酷い。でもそういうのも嫌いじゃないわ」

そう言ってクエンは私に向かって剣を振る。

それを結界魔法で防ぎながら、私は唱える。

「【天垂】」

クエンの周りに展開される二十の魔法陣から一斉に光線が放たれる。

「良いわぁ!もっと頂戴!」

そう言ってクエンは剣を一振りするだけで私の放った光線を跳ね返す。

私は転移魔法でそれを躱し、再び魔法を唱える。

「【孤高の天】」

光の弾が空高く浮く、これは自動で敵に狙いをつけ光線を放つ。



「貴方が戦っていたの見ていたけど、さっきの魔法の劣化版ってところ?」

魔法を使い【孤高の天】と共に光線を放つ。

「それしかないの?」

そう言ってクエンは光弾に向けて剣を振る。それだけで私の放った光弾が全て落ちる。

「ほら、どうしたの?まだまだあるんでしょ?」

そう言ってクエンが私を煽る。

「うるさい……」

さっき体を使われていた時、あの魔法は私のよりも何倍も完成された物だった。

それに目指すべき場所と言った【自己転換】あれは……

「ほら!もっと私を楽しませて!」

そう言ってクエンが剣を振る。私はそれを躱しながら次の手を考える。

(どうすれば良い?どうすれば……)

「あら、もう終わりなの?」



そう言ってクエンが剣を振るう。私はそれを結界魔法で防ぐがそのまま吹き飛ばされる。

「ぐっ」

地面に叩きつけられる前に何とか体勢を立て直す。

「考えすぎんな、楽しめよ。湧き上がる感情に身をゆだねていつかのハイに成れ」

「お前は私だ、私なら今を楽しむぞ」

…………誰なんだよ。

上から目線でムカつくな。

「口閉じろ、私は!私だ!」

(ああ、私ならそういうな)

その言葉で自分が自分であると再確認する。

何故か気分が良くなり笑みが零れる。



「お前もだぞ売女、そのくせえ口閉じて小物みてえに地面に這いつくばっとけ!」

「なになになになに!ワクワクさせてくれるわね貴方!」

そう言ってクエンは笑う。

私はその様子を見て高らかに叫んだ。

「ぶっ殺す!」

「あら奇遇!私もそのつもり」

クエンは私に肉薄する。

クエンの剣を躱し、反撃の魔法で攻撃する。

「【天鎖苦殺:黒】」

点と点が線を結ぶように、光線がクエンを襲う。

「逃げ場がないわね」

そう言ってそばにある球を引き寄せる。



今度は私が肉薄し、その球を手に取らせる前に割り込む。

「おいおい、つれねえなあ!一緒に逝こうぜ」

「あら大胆。そうねなら踊りましょうか!」

光線は、私とクエン両方の体を貫通する。

「がっ!」

「くっ!」

お互い苦悶の声を上げるが、クエンは笑みを崩さない。

(こいつおかしい)

そんな当たり前の事を考えるが、私も同様に笑みを浮かべていた。



するとクエンは剣を作り私に斬りかかる。私も咄嗟に剣を生み出し防ぐ。

そのまま鍔迫り合いになるが、私は力を入れるのを止め後ろに飛び下がる。

「【万天】」

クエンの周りに現れる光の蕾は、一斉に開花し爆発する。

クエンは光に飲まれるがその笑みは消えない。

「【現実改変】」

その声が聞こえると同時に、光が全て消える。

そこには無傷のクエンがいた。

「ああもう、【現実改変】まで使わされて。本当に興奮しちゃう」

クエンがそう言いながら剣を振るう。それを辛うじて躱すが頰に鋭い痛みが走る。

「私の魔術を教えてあげる」

突然動きを止めて言う。



「私の魔術はね、【有頂天】私の興奮を蓄積し、それを力に変える」

そう言ってクエンが微笑む。

「貴方は最高よ、私の興奮をこんなに引き出して……」

恍惚とした表情で私を見る。

「だから、しっかりイかせてね」

その言葉と共にクエンの姿が消える。

後ろに気配を感じ咄嗟に結界魔法で防ぐがそのまま破られる

再び剣を作り、防ごうとするが剣は斬られる。そのまま私の腹に蹴りを入れる。その勢いで後ろに後退する。



「【格天】」

格子状の光線で巨大な壁を作り押し出す。

剣で通れる隙間をあけ、クエンはそれを回避する。

クエンが肉薄し剣を振り上げる。私はそれを結界魔法を四重に纏わせた腕で受け止める。

その腕も深く切り込まれるがその剣を抜かせないように剣の上から囲むように結界魔法をはる。

そしてその手でクエンの胸倉を掴む。瞬時に私とクエンを結界魔法で囲む。

「これでイってろ」



五重詠唱


「【九天衝落:堕黒】」


もう片方の腕をクエンの目の前に差し出す。

手のひらから放たれるマナの衝撃波は、クエンの体を半分以上消し飛ばし吹き飛ばす。

そのまま地面に叩きつけられるかと思ったが、クエンは空中で止まる。

そしてゆっくりと地面に降り立つ。

「あぁ、良いわぁ。最高よ」

そう言ってクエンは私を見る。その目は爛々と輝いていた。

「ふぅ、この痛みをもっと味わっていたいのだけれど。死んじゃうのも嫌だからごめんなさいね」

「【現実改変】」

そう言った瞬間、何事も無かったかのように体が元に戻り、傷は無くなる。



「【極地の祝眼】か……」

そんな訳あるかと叫びたくなるが、まだ戦いは続く。

「さぁ、もっと踊りましょう!最高の時間を!」

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