天使達:2

 私は拠点に戻りみんなの様子を確認する。

「皆、順調?」

「この状況を見て本気で言ってるなら気が確かか心配するわ」

エフレンが厳しい言葉で出迎えてくれる。

まあ、確かにみんなぐったりと倒れてる。



「もう……無理、お腹空いて動けない」

「うん、とりあえず休もうか。収穫もあったし」

「収穫?」

「うん、アリューはハイルデザートを目指してる」

「ハイルデザート?何それ。聞いた事も無いけど……」

「詳しくは分かってない、だから明日また話そう」

「うん、分かった」

「それじゃあ、今日はもう休もう」





次の日、目覚めたのは轟音と大きな衝撃がきっかけだった。

「ちったく、何だよ」

目を開き人の姿を確認する。

その姿は金色の羽と純白の衣装を身にまとった、まるで天使のような男だった。

「ラプラスの悪魔、貴様を早々に見つけれて私は幸運だな」

「いきなり、何だ」



「我は恐怖の天使、エルメス。貴様に引導を渡す者だ」

エルメス……前の天使とは別の天使か。

なるほど、追ってかそれにしてもこんなにもはやく見つかるとは。

「私は運が無いな」

「最初から貴様の運命など決まっている」



「セト、助けは要らないぞ」

「ほう、まだ一人いたのか。だがそいつも……いやいい」

エルメスはセトから目を離すと構えを取る。

「私に殺されるんだ、さっさと死ね」

「こっちの台詞だ」

エルメスが羽を広げこちらに突っ込んでくる。それを迎え打つように地面を蹴った瞬間、目の前に無数の炎の槍が現れる。

【淵焔】えんえん

その槍がこちらに飛んでくる、それらをすべてかわし迎撃する。



【微粒の琥珀】びりゅうのこはく

無数の小さな結晶がエルメスに向かい飛んでいく。

それらでエルメスに幾つかのかすり傷をつける。

「やはり厄介なものだな。未来視と言うのものは」

「そうだな、だが一つ。未来視ではない私がやっているのは未来予測にすぎない」

「なるほど、まあどちらにせよ。自分の死という未来を見て絶望すると良い」



【魏焔】みょうちょう

剣に炎が宿りこちらに斬りかかってくる。

確かに速いが未来を予測していれば避けられない程じゃない。


【無限方程式の籠手】インフィニティ・イクエーション・ガントレット

右手に籠手を装備し、剣を受ける。

その後すぐに脳に反撃のイメージが浮かぶ。

エルメスを蹴り飛ばし魔法を放つ。

「【微粒の琥珀】」


無数の小さな結晶がエルメスに襲い掛かる。

「【魏焔】」

炎の剣で結晶を叩き落しながらこちらに突っ込んでくる。

未来の予測と反撃のイメージが止まらない。

向かってくる所に肘打ち

「うっ」

怯んだ所に蹴りを入れ地面に叩きつける。



「貴様は、私が想定したより随分強いな」


「お前は、私が想定したより随分弱いな。あの天使とは大違いだ」


「クエンか、あれと比べてくれるな。同じ三大天使と言えどあれは格が違うのだ」

「まあ、だが私もそろそろ本気で行こう」

「【畏怖の調】」

そうエルメスが呟くと部屋全体に冷気が漂う。



「威圧か」

「さて、どうだろうな」

エルメスは地を蹴ると一気に距離を縮めて剣を振りかぶる。

未来を予測しそれに対応した行動をする。

振り下ろされる剣を躱そうとしたとき、一瞬体が硬直する。

(これは……なんだ、体が重い)

だが予知通りに行動したお陰で振り下ろされる剣を躱す事に成功した。

「怯えるものが無いか、羨ましいな」

未来を予知するが体が硬直する、その硬直はすぐに無くなるが何故か体が重く感じる。「これが、恐怖か」


「そうだ、それが恐怖だ。本来ならもう少し手心を加えて貴様を絶望させたかったがそれは諦める事にする」

エルメスは剣をこちらに構え直す。

「天は裁きに火を使う、何故だかわかるか?それは誰もが恐怖しているからだ。誰もが恐怖する、赤子ですらな」



召喚魔法


「【熱闘 超情 その身その姿 今一度見んと欲す 挑戦者 熱情の戦士乙女】」

エルメスの後ろに炎を纏い丸盾と騎槍を持つ少女が現れる。

戦士乙女は巨大な槍を回転させ構える。



戦士乙女とエルメスが同時に地面を蹴る。

二人による挟み撃ちの攻撃、未来を予測し何とか避けれる位置に飛ぶ。

だが、忘れていた硬直が来て戦士乙女の回転させた槍に吹き飛ばされる。

「くっ……」

地面に叩きつけられる瞬間、体をその場に留めてなんとかダメージを軽減する。

そして追撃に備えるために立ち上がろうとした時、目の前にエルメスが現れる。



「【魏焔】」

咄嗟に籠手を使いガードするが、その上から強い衝撃が叩き込まれる。

「ぐっ」

次の追撃が来る前に未来を予測し窮地を脱出する。

「【微粒の琥珀】」

無数の小さな結晶が戦士乙女に向かって飛んでいく。

「無駄だ」



炎の盾をによって結晶を防がれる、未来を予知して備えるとそこにエルメスが突っ込んでくる。

それに私は結界魔法を発動させる。

結界魔法でエルメスの剣技を防ぐが、結界に亀裂が入る。

「力だけは大したものだな!」

そして結界は破壊される。


「やはり、お前は異常だな。まさかあれをも防ぐとはな」

そう言いエルメスは一度距離を取ると剣を構え直す。

(戦士乙女は何処に?)


そう思いエルメスが辺りを見回すと巨大な黄金の球を一つ見つける。

「まさか……」

その黄金の球が割れ、そこから幾つもの黄金の槍に串刺しになった戦士乙女が現れる。



「あー、水差してすまねえが。結果は変わんねえし文句は言うなよ」

槍に突き刺された戦士乙女の体が炎に包まれる。

その炎が消えるとそこには何も残っていなかった。

「邪魔をするか!金狼セト」

そう言いエルメスがこちらを睨むと炎を纏い切りかかる。

激高したエルメスは単調な行動になる。



ラプラスは未来を予測しその剣撃を回避し、反撃を与える。

【不定理を悟った者】ラプラスの悪魔

ラプラスの放った双剣の一本がエルメスに突き刺さる。

もう一本は結界に弾かれる。

それを見えていたラプラスは弾かれた剣を掴み、エルメスの結界魔法ごと切り伏せた。


エルメスは胴から二つにされる。すると血を拭きだし最後は光になり散り散りになった。


「私は手を出すなと言ったぞ、セト」

「はいはい別にいいだろ、それより俺の森が燃えてんだ。さっさと消火すんぞ」

「全く、しょうがないな」

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