逃がさない
四重詠唱
「【天球の乙女:黒】」
シータを中心に光の幕で球体ができる。
その球体の中で黒い光線が乱反射する。
「そんなもんでこの俺を止められると思ってんのか!」
セトは光に臆することなく、空を走りシータに肉薄する。
「ああ、思ってるよ」
シータはそう答えると、黒い光線をセトに向けて撃った。
「思い上がるのもそこらへんにしとけよ、井の中の蛙」
その光線はセトに当たる前に金の盾によって防がれる。
セトは盾を死角にして次の行動を隠す。
だがそれはシータも利用する。次のシータの行動は転移魔法。
転移魔法を発動させシータは消える。
「転移魔法はマナの軌跡を読めばいい……だけ……は?」
(マナの軌跡が複数?どれがフェイク?いやそもそもフェイクなんて作れんのか?)
(俺の目の前は無い、俺の真後ろに一つそしてその他は不意打ちするには若干遠い)
「ここだろクソガキ」
セトの真後ろからシータが現れる。
それに反応していたセトは右前足を振り上げていた。
「大当たりで大外れだクソボケ」
セトが足を振り下ろした瞬間、シータは別の軌跡の場所に転移したそして少しの間をおいてまた別の軌跡の場所へと転移、それを繰り返す。
(転移魔法の複数詠唱?ちったぁ普通に囚われやがれ。まあ俺の娘なだけはある)
(何処に行く、どこが終点でいつ仕掛けてくる……待て、最初に俺が無いと切り捨てた場所。それはつまり俺の真後ろ!)
セトは即座に背後を向き爪でシータを狙う。
「一秒遅かったな」
シータは振り向くセトの顔に狙いをつけそしてそのままセトの顔を蹴り飛ばす。
セトは吹っ飛びながらも体制を立て直しシータを見る。
「俺は、俺は怪物、金狼セトだ!テメエみてえな小物が俺に立ち向かってんじゃねえ!」
そう言うとセトの瞳が六つに分かれていく。今まで使っていなかった【千物知覚】を発動した。
「そう言って自分に酔ってるのか?そうならそのまま驕って死ね」
「俺に一発入れた程度でイキってるテメエの方が驕ってんだよ」
セトは瞳をシータに向け、自分の周りに金の槍を六本出現させる。
セトは六つの金の槍をシータに向けて放つ。
(今、私は四重詠唱まで重複詠唱ができる。もう一段階上にいく!)
五重詠唱
「【九天衝落:黒天】」
光が槍を形作る、だがそれは今までの魔法とは何か違った。
(マナが不安定だ、形作れない。マナの密度が限界で……不味い弾ける!)
九天衝落が弾けた、だがその槍の残骸を金の槍が通過しシータへと飛んでいく。
「クソ!」
シータは急いで結界を張る。槍は結界によって防がれた、だが追撃の雷に結界のほとんどを破壊される。
「まさか、自滅してくれるなんてなあ!」
セトが肉薄する、シータは焦りで次の手を考えれていなかった。
(だが、焦れば焦るほど自滅する。落ち着け、冷静に)
セトの爪がシータを薙ぎ払う。それをまともにくらいシータの左腕が吹っ飛ぶ。
セトは追い打ちをかけるように雷を纏った金の剣を飛ばす。
(避けられ……ない)
シータがそれを回避しようとした瞬間、金の壁がそれを阻害した。
「【悪金御来光】」
「お前に俺は倒せねえんだよ!」
(確かに、今の私じゃ勝てない。でも絶対殺す)
シータは転移魔法を使い、拠点まで転移する。
「セト、お前は殺す!その日を楽しみにしろ」
そう言い残してシータは消えた。
★
「はあはあ……アリューに腕をくっ付けてもらわないと」
転移させた左腕をひろい、拠点の入り口まで歩く。
「おい、待てよ。逃がすと思うか」
声が聞こえた、振り向くとそこには同じく転移してきたセトが居た。
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