フローズヴィトニル(廻る力の目覚めを待つ狼の意)

 それから行ったのは死んだエルフたちの弔いだ。

全員の死体を集めて燃やす。

「ごめんなさい、こんなことしか出来なくて……」

 ノアが悲しそうな声で呟く。


「ノア、人間に復讐はしたいか?」

「……ええ、もちろん。でも私はそれより、貴方に恩を返したいかな」

「私にか?」


「貴方が私たちにくれたものは生だけじゃない。これからの目的、生きる意味をくれた」

「だから私は貴方の為に戦うよ」


「……私が私の為にしたことだ、お前たちを、利用しようと」

 ノアは首を横に振る。そして彼女は微笑む。

 その笑顔を見て私は少し恥ずかしくなってノアからはなれた。



 さて、これからどうしようか。

そう思った時アリューが示してくれた。

「ねぇ、住処はどうする。まずはそこからじゃない?」

 確かにそれは必要だろう。


「アリュー、前みたいに作れないの」

「んー地下にねぇ、できない事は無いけど。君が僕に依存して欲しくは無いしな~」

「もう既に手遅れ、お願いアリュー」

 そう言うとアリューは諦めたようにため息をつくと。


「分かったよ、しょうがないな」

 アリューは魔法を展開し地面を隆起させていく。

「これで、いい?」

 そう言い終わると同時に目の前には地下へと続く階段が出来ていた。

「うん、ありがと」


 これで、ここを拠点とする事が出来る。

エルフたちの弔いが終わり次第ノア達を連れてこよう。


 ★


  拠点をノア達に案内すると皆驚いている様子だった。

「地、地下にこれを?さっきの時間で」

「びっくり、なのよ」


 アリューは魔法を使い地下に拠点を作った、それはただ穴倉を作っただけではない。

洞窟内は明るくなっているし。

壁も床もしっかりと石畳で舗装されており天井も高く広い。

それだけじゃなく部屋もかなりの数があり、風呂場や調理場など生活に必要なへやもしっかりある。


 アリの巣と例えるのは嫌だが形としては近いだろう。

この広さならかなりの人数が生活できるだろう。六人じゃかなり広いくらいだ。


「これ全部貴方が作ったの?」

「違う、これはアリューが作った」

「アリューって精霊の事?」

「そう、と言うかアリュー話してあげなよ、翻訳魔法を使えばできるでしょ」


「ああ、そうだね。こんにちは、僕はアリューよろしくね」

 そう言うアリューは恐らく魔法を使ったんだろう姿を変えて見せた。

その姿は小さな子供だった。

「……可愛い」

 サーシャが思わずと言った感じで声を上げる。

「ふふん、そうだろう。もっと褒めてくれても構わないんだよ」

 サーシャは可愛さにやられたのかアリューに抱き着き撫でている。

「ん~いい子だね。でもそろそろ離してくれると嬉しいな」

「……」


 サーシャは名残惜しそうにしながらも離れる。

「その姿、今日はそんな気分?」

 アリューと言うか精霊に決まった姿は無い、いつもコロコロと変わる。

 ちなみに今は10歳程の少年の姿になっている。


「まあね。たまには、だよ」

「あ、それと、僕の事は呼び捨てで良いからね」


「…いいのかしら精霊を呼び捨てなんて」

 そうエヴィリーナが疑問を口にする。

「別に気にしないよ。僕は自分が強いとは思っているけど。偉いとは思ってないんだよね」

「ふふ、分かったわアリュー」

「よろしい」

 そう言ってアリューは笑顔になる。

その後は一人一人の部屋割りなんかの話をして解散となった。


 ★


 そして私は私の部屋にいる。アリューも居る。

「ね、あの子達、僕が鍛えるよ」

「うん、もともとそのつもり」

「やっぱり、まあ僕じゃないとマナの使い方は教えられないしね」

「うん」


 適当な返事を返して、私はあの男、恐らく勇者の事を考える。

あの【聖なる光を放つ聖剣の意】触れたものを例外なく死に至らせるとか言う魔法。

まずこれを防ぐすべを手に入れる必要がある。


「ねぇ、アリュー」

「ん?何?」

「あの男を殺せる方法を教えて欲しい」

 そう私が言うとアリューは魔法を使い私の記憶を読む。


「なるほど、ずいぶん無茶したね。ここまで来た理由がわかったよ」

「あの技、あれは無理だね。多分防ぐすべは無い、事もないよ」

「どういうこと?」


「覚えるべきは二つかな。一つ、君の魔術の覚醒、二つ、マナの核を使う魔法。卍天の習得」

「魔術……」


 魔法とは違うマナを流すことで発動する力。

そしてそれは特別な者だけが一人一つ持つ


「私に魔術ってあるの?今まで使った事ないけど」

「使った事が無いんじゃなくて使えたことが無いんだと思うよ」

「どんな魔術?」


「君の魔術は■■■■■■■■■」


「それって強いの?そんなに強くなさそうだけど」

「まあそれは覚醒してからのお楽しみで」

「もう一つのほうは?」


「それはもっと難しいだろうね。マナの集合意識である僕ですら、この魔法を使うのは神経を削られるもの」


「でも、使えるようにならないとあいつは倒せないんでしょ」

「そうだよ、でもこればっかりは教えられるものじゃないからね」

「分かった、任せて」「うん、期待しているよ」

 決意を固め眠りにつく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る