07.vs陽炎蜥蜴
【妖獣
(……こんなところにいやがったのか)
ミカゲの心臓がざわつく。
『名無し:はぐれか? やばそうなの来たー』
『名無し:危険度75? 逃げて―』
「どうします? ミカゲさん。急に結構強いの来ちゃいましたね。危険度75っていうと、一応、D級以上が推奨ですけど」
==========
【危険度:推奨等級】
70~: D級以上
80~: C級以上
90~: B級以上
Ⅰ~: A級以上
==========
佐正はこの蜥蜴がミカゲにとって深海の右腕を奪った因縁の相手であることを知らない。
「束砂は大丈夫?」
「えぇ、社長にダサいところ見せられませんしね。それに、元より、万年E級でいるつもりもないですので、少し順番が前後するだけです」
「そうだな……」
……という彼らの意思とは関係なく、陽炎蜥蜴は目の前の人間を狩る気満々のようで、早速、上体を逸らす。
「火炎来るぞ……!」
「ういっす、おにぎり頼む」
「にゃ!」
予想通り、陽炎蜥蜴は素早い動作で口から火炎の弾を発射する。
「
佐正がおにぎりの水のバリアでその進行を阻害する。
あの時、深海の右腕を奪った火炎弾は水のバリアの前に消滅する。
(深海には悪いが、単純な出力は束砂のおにぎりの方が
その間にもミカゲは迂回しながら、陽炎蜥蜴の左側面に接近し、腹部に一撃を加える。
グギャっ
「……」
斬ったところが切れている。
切断面の肉が痛々しく、めくれている。
当たり前のことのようであるが、血が染み出る程度の傷をつけるのがやっとであった前回とは明らかに結果が異なる。
グギャア!
陽炎蜥蜴は左側の前脚を持ちあげる。
(……
陽炎蜥蜴はミカゲを踏み潰そうと何度も地面に打ちつける。
(……)
しかし、当らない。
ミカゲは最小限の動きで、踏みつけを避けている。
しびれを切らした陽炎蜥蜴が身体を大きくひねり、尾による回転攻撃を試みる。
ミカゲは跳躍によりこれを回避する。
加えて、尾が自身の跳躍下を通過するタイミングに合わせ、刀の重量変化にて重量を最大とする。
(……俺がリベンジを果たしたとして……深海の無念は晴れることはない……)
その瞬間、複雑な思いがミカゲの胸中に去来する。
(それでも……)
「返せよ……深海の腕」
刀を振り抜く――
グギャアアアアアアア!!
陽炎蜥蜴は悶絶するように咆哮し、胴体から離れたその尾はびたびたと暴れている。
陽炎蜥蜴は怒り狂うように強く息を吸い込みながら、身体を大きく仰け反る。
「ミカゲさん、強いの来ます……!」
佐正が忠告する。
「……」
しかし、ミカゲは陽炎蜥蜴の目を見ていた。
(いや……これは……フェイントだ)
陽炎蜥蜴は強い火炎を吐くとみせかけて、くるりと背中を向けて、バタバタとその場を離れていく。
「あ……!」
佐正は陽炎蜥蜴の予想外の動きに反応が遅れる。
ミカゲは素早く反応し、発光する石のようなものを投げつける。
さらに追跡しようとするが、切断された尻尾が大暴れしている。
「束砂、崩落するかもしれない。一旦、離れよう」
「了解っす」
◇
「結局、逃げられちまいましたね……」
「にゃー」
「そうだね……」
(……けど、またいずれチャンスはある……かな)
『名無し:すごっ』
「……!」
『名無し:相手、危険度75やろ? こいつら本当にレベル6と3か? 今までのネタ連中とはちょっと違うぞ』
『名無し:いや、レベル6はともかく、あいつはどう見てもレベル3じゃないだろ。どういう原理なんだ?』
『ゆーなて:初見か? 相棒の覚醒師のおかげみたいよ』
『名無し:初見、なるほどわからん が、ありがと』
『捨て身:揺やランスが注目するのが少しわかった』
(ん……? ランス?)
「うお、ミカゲさん。パーティファボ、80行ってますね」
「え、マジ?」
『DB:ミカゲさん、おめでとうございます。そして、ありがとうございます』
(……! ……DB……さん……確か初日から来てくれてた……)
『DB:正直、少し羨ましく思う部分もありました……が、あなたなら納得できます』
(……)
『DB:次に、進みましょう。お互いに』
その時、パーティファボが81に増える。
(……深海)
「…………えぇ、有難うございます」
「……? いや、しかし、ミカゲさん、確かにパーティファボは有り難いんですが……本来の目的は全く果たせてなく……」
「あ、うん……」
(……そう言えば、あれ以来、揺さんのコメントはなく、不気味だ。もういなくなったのかな……)
「にゃー!」
「ん? どうしたおにぎり」
おにぎりは先程まで大暴れしていたが、流石に元気がなくなってきた陽炎蜥蜴の尻尾の方に目線を向ける。
と、尻尾がエフェクトと共に消滅する。
その消滅跡からトレジャーボックスが現れる。
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