今宵は艶話。

月猫

血判

 昔々の話だと。


 その年は、やませが吹いて米があまりとれなかった。 

 そこで、年貢米を減らしてもらおうと、村長の家に男衆が集まった。

 もちろん、そこにはお侍さんも来ておった。


「お侍さん、今年は米がこれ位しか取れなかったんじゃ。なんとか、年貢米を減らしてもらえんじゃろうか?」

 と、村長が頭を下げた。


「ふむ。それなら、明日まで村のもんの血判用意してくれ。わしはそれを持って、お殿様の所へお願いに行って参る」


「血判?」

「そうじゃ。明日まで用意できるであろう?」

「も、もちろんでございます」


 と話はまとまって、お侍さんは自宅へ帰って行った。


「村長どん、血判ってなんじゃ? 知っとるのか?」

「あぁ、もちろんじゃ。今、墨と半紙を用意するからの」


 こうして、男衆の血判は用意できた。次は女衆の分だと、村長の家に女衆が集まった。


「年貢米減らしてもらうのに、どうしても血判が必要なんじゃそうじゃ」

 そう言って、村長は血判のやり方を女衆に教えた。


 女衆は、着物をたくし上げケツを出すと、墨を塗り始めた。それから、半紙にバンバンとケツを押していく。


 翌朝、お侍さんが黒い血判を見て驚いた。

「これはなんだ?」

「へい。ケツばんでございます」

「棒のようなものが付いているのと、割れているのがあるが、これは?」


「あぁ、そりゃ、棒付きは男衆で割れてんのは女衆でさ」

「……」


 とっぴんぱらりのぷぅ。 

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