子どもは無邪気だなんて言えないよ
美桜は少しずつ日本の治安に適応して行った。
駅で並ぶ時、後ろに人がいると怖かった。襲われるのではないかと身構え、移動したことが何度もあった。だが今は慣れ、なるべく早く乗れるよう列の先端を目指している。
夕方に学校に帰るのが怖かった。これは今も変わらない。逢魔が時は異世界とつなぐ時間だって言うから。信じていないけど怖い。
ご飯の時、ついつい食べすぎてしまう。ちゃんと普通のご飯が出てくるから、いつ無くなるか分からないから。すると、花ケ迫さんの標的になった。
花ケ迫さんとは幼稚園の頃から小学3年まで光船女子学園に一緒に通った仲だった。当時家が近かったこともあるけど、おそらく親の思惑がある。
「財閥系企業の社長令嬢である花ケ迫さんと幼馴染であれば、私に箔がつく」「教育評論家を父に持つ私と幼馴染であれば、花ケ迫さんの教育にいい影響がある」
けれど親同士の目論見は外れた。「
元々、花ケ迫さんがどんな子だったかは忘れた。気がついたら周囲を巻き込んでのイジメが始まっていた。覚えている限りだとハーフの子や運動神経がずば抜けている子、モテる子、オシャレな子が標的だった。
先生に促されても部屋の隅で本を読むことが好きだった私は、標的にならずに済んだ。目立つか目立たないかが境だったのかな?
財閥系企業ほどじゃないけど、社長令息令嬢や政治家の子どもが多かった。だから花ケ迫さんの話は揉み消すことが出来ず、花ケ迫さんの両親に直談判した所、転校することになったそうだ。
*
美桜は過去問を広げた。光船女子学園高等部の過去問だ。科目は倫理。中等部への進学には失敗したが、高校受験で失敗するつもりはさらさらなかった。来月で2020年が幕を開ける、2020年になれば私は中学3年生になる。
カリカリと音を立てながら解いていると「バビロン捕囚に関わるエレミヤの預言を要約せよ」と言う記述問題に当たった。答えは覚えている。
頭がヒューという音を立てていた。私はタイマーを止め、スマホを取った。けれど相手の連絡先を知らなかった。
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