英を持つ
その夜、
幼かった頃の
ちなみに凌弥はベッドでなく床で寝ている。実家でも敷布団も敷かず、畳の上にカーペットを敷いたまま寝ていた。そのせいか、ベッドで寝ると凌弥の背中が痛む。
アルは「成長期の夜ふかし」というものを気にしないようで、凌弥が眠れなければ延々と会話を振る。その時間が凌弥は好きだった。実家でも学校でも無口だと思われていたが、相手がいないだけだった。「何も話せばいいか」「話しかけてもいい時」が分からないだけだった。
だが今夜、アルは「凌弥は考え事をしている」と察したせいかベッドの横にある窓から、眠りにつこうとしている村々を静かに見守っていた。
凌弥は寝返りを打った。
体格だけ見ればカーリーは小1前後に見えた。お兄さんは亡くなっている。ご両親は多分いない。だから「可哀想な子」?確かに可哀想だけど、他にもありそうだけど、他にもあるんじゃ?
などなど考えては堂々巡りしており、寝付けなかった。まぶたと瞑れば自分(と、アル)に着いて廻っていたカーリーの活き活きしていた様子が蘇る。
カーリーが「おばさん」、アルが「お姉さん」と呼んでいた女性とカーリーの関係は?墓参りから帰ってきた「ピスティ」は胴のくびれと、澄んだ強い眼差し以外は特に印象に残らない黒髪黒目の20代前半くらいの女性だった。お姉さんだとしても何で「おばさん」呼ばわりなんだ?
アルの次に初めて自分に関心を示してくれた子だからなのか、凌弥は何度も「お姉さん」という言葉とあの外見から連想することを探していた。
兄嫁?いつ死んだかによるけど、どんだけ年が離れた兄さんなんだよ。だとしても献身的すぎるわ、死んだ旦那の妹の面倒を見続けるとか。
「なあアル。カーリーって何があったん?」
堂々巡りの末、凌弥は口を開いた。
アルの表情は妙な月明かりのせいで見えなかった。
「君の推理通りだよ」
アルの一言に、凌弥は背筋が凍る感覚に襲われたが、直後、成長期特有の強烈な眠気に負けた。
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